米国、選挙後も株価上昇続く(石金淳)
三菱UFJ国際投信チーフファンドマネジャー

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2020/10/30 2:00
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まもなく、11月3日、米国では大統領・連邦議会選挙が実施されます。本稿執筆時点(10月中旬~下旬)の世論調査では、大統領選挙では民主党のバイデン候補、連邦議会選挙でも上下院ともに民主党が優勢で、いわゆるトリプルブルー(大統領、上下院とも民主党が制覇する状態)という観測が出ています。とはいえ、潜在的な現職のトランプ大統領支持者も少なくないとの見方もあります。また選挙は水物といわれるように結果は終わるまでわからないのですが、私は、大統領がバイデン氏、トランプ氏のどちらが当選しても、また上下院で民主党、共和党のどちらが勝利しても、現在米国が推進している国策は根本的に変わらないと考えています。そして、部分的に変化しても国策の根本が変わらないのであれば、一時的な波乱はあっても米国の株価は上昇トレンドを持続するとみています。

根本的変化がないと思われる国策の第一は、財政による経済支援の強化です。雇用回復はなお道半ばであり、選挙の結果いかんにかかわらず選出された政権・議会は、景気の本格的な回復のため経済支援を強化せざるを得ないでしょう。トランプ政権は2017年12月に10年で1.5兆米ドル規模の減税法案を成立させましたが、バイデン政権となった場合、富裕層や企業に対してほぼ同額の増税が見込まれ、米国景気に打撃を与えるとの懸念がある模様です。しかしながら、元来民主党のほうが共和党よりも財政支出には積極的であり、バイデン候補も増税規模を上回るインフラ投資や先端技術等の産業政策などに向けた財政支出を打ち出す方針です。また、回復途上に入ってまもない景気の状況を考慮すると、増税を優先的に進めることは考えにくいと思われます。

第二は、強力な金融緩和の継続であり、それが長期化する見込みであることです。FRB(米連邦準備理事会)は既に膨大な量的緩和を実施するとともに、2023年末までの事実上のゼロ金利政策の継続を示唆しています。ただ、パウエルFRB議長はじめ金融当局者でさえ財政による支援拡大が景気の本格回復には不可欠であると述べていることなどもあり、金融政策の効果を疑問視する見方がある模様です。しかし、FRBの金融緩和によって資金繰りのひっ迫や信用リスクの高まりなどがかなり回避されたことはまちがいないでしょう。さらに重要な点は、金融緩和による住宅ローン金利の顕著な低下が、在宅勤務の普及による需要増加等とともに住宅部門の急速な回復に大いに効いており、それが米国景気の持ち直しに相当寄与したと推察されることであると考えます。

第三は、対中国政策です。米中間では近年、貿易関税の掛け合いや香港問題、新型コロナウィルスのまん延等を巡り対立が深まってきましたが、昨今では相互にビジネス取引や投資についての規制を強めつつあります。ここで注意すべきと思われることは、米国内では連邦議会が超党派で中国に対して厳しい姿勢を示しており、必ずしもトランプ大統領が対中国政策を主導しているとはいえないことです。このため、政権や議会勢力図が変わったとしても、米国の対中国政策は基本的に変更されないとみています。

以上のように、米国の主要な国策は根本的に変化しないと推察します。このうち第一と第二の国策、即ち財政政策と金融政策は経済支援という面から増強、もしくは堅持されると見込まれます。米国景気、中でも雇用の回復が遅れているためです。また、第三の米中対立に深く結びつく厳しい対中国政策は、米国の実体経済への影響は限定的であるとみています。米国景気にプラスとはいえませんが、米国の貿易依存度が世界の主要国・地域の中では最低水準であり、かつ中国からの輸入品は他の国・地域からほぼ代替可能であると推察されることなどからです。

米国の大統領・連邦議会選挙の結果を予想することはまことに困難ですが、選挙後の政権・議会は財政面、金融面から景気を本格回復させるために政策努力を継続することは恐らくまちがいないでしょう。そして、住宅や自動車等から他のセクターにも明るさが広がって景気回復が着実に進み、米国株は一時的に反落しても上昇基調を維持すると考えます。

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石金淳(いしがね・きよし)


1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJ国際投信)転籍。16年12月より現職。

[日経ヴェリタス2020年11月1日付]

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