司法取引「安心感あった」 ゴーン事件巡り元秘書室長
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)の報酬過少記載事件の公判が28日、東京地裁であった。日産の大沼敏明・元秘書室長(61)は検察との司法取引について「罪が軽減される安心感があった」と証言した。同事件で司法取引に関する証言は初めて。検察側の証人尋問で明らかにした。
証言によると、大沼元室長は2018年10月9日、当時の役員2人から海外不動産などを巡るゴーン元会長の疑惑について指摘された。このときに「知っていることを検察に話してくれないか」と頼まれたという。
共に司法取引することになった外国人専務執行役員などを通じ、翌10日午前には検察出身の弁護士から司法取引制度の概要や事情聴取の注意点などのレクチャーを受けた。同日午後に東京地検特捜部の聴取が始まった。
特捜部の求めに応じ、ゴーン元会長の「未払い報酬」の裏付けとして社内資料を提出する一方で、10日26日に司法取引について協議を申し入れた。合意で起訴が見送られることになり「安心した」と振り返った。
「担当検事に逆らうと合意してもらえないと考え、迎合したことはないか」と問われ「それはないです」と言い切った。
ゴーン元会長の共犯として金融商品取引法違反罪で起訴され、無罪を主張する日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告(64)の弁護側は大沼元室長が司法取引に応じた背景には、元会長の責任追及を強める日産幹部らの意向があったとみている。反対尋問では証言の信用性を巡り、司法取引の経緯を詳しく質問するとみられる。
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