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「共助と公助」 社会保障の果たす役割を考える

年金と社会保障の役割(1)

写真はイメージ=PIXTA

先月は10月4日「投資の日」にちなんで投資をテーマにしました。今月は国が年金広報月間としていることもあり(ちなみに11月30日は"いい未来"にこじつけて年金の日です)、年金や社会保障制度と私たちの「Life」「Money」との関係を考えてみます。

~「自助・共助・公助」と社会保障のつながり~

10月26日、菅義偉首相は新首相として国会での所信表明演説に臨みました。演説の結びに登場したのはすでに皆さんも何度か耳にしている「自助・共助・公助」のフレーズです。

衆院本会議で所信表明演説をする菅首相(10月26日)

"私が目指す社会像は、「自助・共助・公助」そして「絆」です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します。"(菅首相の演説より)

今月取り上げる年金制度、健康保険、介護保険や雇用保険制度といった社会保障制度、そして生活保護や様々な助成や補助金などは、国が実施する、私たちを支える制度です。

そしてそうした制度が社会を支え安心をもたらしているという高い価値はあまり知られていません。今月はあなたの人生を支える、社会保障制度の役割を考えてみたいと思っています。

~私たちはいろんなリスクと向き合いながら生きている~

私たちの生活で「今日」と「明日」はほぼ同じです。明日、職場の同僚や友人といきなり会えなくなることはほとんどありません。

しかし、そうした可能性はゼロではありません。病気やケガ、事故などのリスクは常にあります。自然災害などもいつ、どのくらいの被害がやってくるかは予見が困難なリスクのひとつです。

そして大きな経済的ダメージを私たちに与えることがあります。働けなくなれば収入が途絶えますし、ケガの治療費や被害の復旧にかかるお金も必要になります。

私たちは任意でこうしたリスクに備えています。民間の生命保険に加入しガンの闘病費用や若くして亡くなったときの死亡保障を備えます。車を運転する人や自転車に乗る人は損害保険に加入し、大きなケガに自ら備えるだけでなく、相手に与えた損害を補償できるようにします。

実はこうした「備え」の基盤となっているのは公的な制度です。私たちは働いて一定の所得を得ると、社会保険制度に加入し保険料を納めます。そのお金は社会全体で疾病や失職などのリスクをカバーする原資となります。そこで不足する額を民間の保険などでカバーしているわけです。

そしてもうひとつ、ほぼ確実にやってくるリスクもあります。「老い」です。

~ほとんどの日本人が向き合う「老い」~

人生100年時代という言葉が普及したように、私たちは長生きをするようになりました。

厚生労働省の「令和元年簡易生命表」によれば、65歳まで元気であった場合の平均余命は男性が19.8年、女性が24.6年です。ざっくり男性は85歳まで、女性は90歳までは「普通にありうる老後」ということです。この数字はおおむね「2人に1人」がまだ元気な年齢にあたります。

4人に1人がまだ元気な年齢をみると、男性は90歳、女性は95歳になります。さらに日本人の平均寿命の伸びは見込まれていますから、人生100年というのはありうる未来というわけです。しかし私たちには老後の不安がたくさんあります。「健康で過ごせるか」「経済的に不安なく過ごせるか」という不安は誰でも抱いていることです。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2019年)」では、単身世帯でも2人以上の世帯でも、金融資産を増やす目的の第1位は「老後の生活資金」となっています。

誰にもいつかは働けなくなる時期がやってきます。そうすれば給与収入は期待できなくなります。

また、老後の長さはリタイア時に予見することは不可能です。10年で終わるのか、30年で終わるのか最初に分かっていれば予算の計画も立てようがありますが、スタート時点でゴールが見えないのが「老後の長さ」なのです。

実はこうした不確定リスクに備えるのが「公的年金」です。

~公的年金制度は国民を支える「共助」の仕組み~

最初の「自助・共助・公助」の考え方に戻ってみます。自ら選択的に保険に加入したり、積み立てをしたりして老後に備えることは「自助」です。個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)は自助努力の老後資産形成といえます。また親子、兄弟姉妹で経済的に支え合うようなこともあるでしょう。

国が実施する社会保障制度はそうすると「共助」か「公助」ということになります。公的年金制度はどちらに該当するでしょうか。

答えをいってしまえば、公的年金は共助の性格と公序の性格を併せ持っているといえます。

まず保険料制度に基づいていることは「共助」の性格があります。私たちは何十年にもわたって保険料を納付し、いつかは年金給付を受ける側となります。今の自分の負担は世代間の支え合いに用いられますし、自分もその社会的なつながりの中にあります。

また、障害年金や遺族年金は保険料納付以上の給付を受けることがままありますし、100歳近い長生きをすると保険料納付額を確実に上回る給付を受けることになります。これは不確定のリスクに備える仕組みであり、共助の果たす大きな役割です(損得論を持ち出すべきではない)。

ただし、公的年金には税金も含まれています。基礎年金の2分の1相当がこれにあたります。これは国民年金制度が国民の生存権を守る性格も兼ね備えているためで、「公助」の性格を部分的に有しているともいえます。

年金制度は、現役時代にはほとんど制度の恩恵を感じられないため(負担も大きいですし)、とかく批判をしたくなります。しかし、制度の理解を深めていくと、社会が抱えるリスクを支える、欠かせない基盤であることが明らかになっていきます。

来週は「もしも公的年金制度がなかったら」というシミュレーションをして、年金制度の意義や価値を考えてみたいと思います。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。

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