イスラム諸国、仏に一斉反発 マクロン氏の過激派対策で

中東・アフリカ
2020/10/28 17:00
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【ドバイ=岐部秀光、パリ=白石透冴】マクロン大統領がイスラム過激派への徹底的な取り締まりを打ち出したフランスに対し、イスラム諸国が一斉に反発している。湾岸アラブ諸国の一部やトルコでフランス製品のボイコットを呼びかける声が広がる。テロ対策や言論の自由を重視する欧州と、イスラム教の教義を重んじるイスラム諸国の溝が浮き彫りになった。

26日、仏製品が棚から撤去されたクウェートのスーパーで買い物をする男性=ロイター

「フランス製のラベルがついた製品は買うな」。トルコのエルドアン大統領は26日のテレビ演説で国民に呼びかけた。フランスはトルコに航空宇宙産業製品や機械、医薬品など計約60億ユーロ(2018年)を輸出している。エルドアン氏はマクロン大統領がイスラム教徒への偏見をあおっていると厳しく批判した。

マクロン氏はイスラムの過激思想が仏法制より優先するとの考え方を「分離主義」と呼び、取り締まりを強めている。12月に閣議決定を予定している法案では「人の尊厳を侵し」たり「身体的、精神的な重圧」を周囲に加えたりしている宗教団体を当局が解散しやすくする方針だ。

モスクの資金源についての監督を強化することや、現在は外国から来ていることが多い宗教指導者「イマーム」を国内で養成することも盛り込む。イマームについてはフランスの価値観に合わない指導をする人物がいるとの批判が出ていた。

マクロン氏は2日の演説で、子どもが学校の代わりに自宅で義務教育を受けることを原則認めず、家庭で過激な思想を子供に教えることを防ぐとも表明していた。フランスの義務教育は3歳からで、これまでは手続きを踏めば自宅で義務教育相当の教育を施すことを認めている。だが一部の過激思想を持った保護者が男女平等を軽視する教育を施しているなどとの指摘があった。

こうしたフランスの動きに対し、イランやペルシャ湾岸アラブ諸国でも商店などで、チーズなどフランス製品を撤去する動きが広がっている。各地でSNS(交流サイト)で不買を呼びかけるハッシュタグ付きの投稿が増えている。

パキスタンのカーン首相は25日、マクロン氏の対応は「イスラムへの攻撃だ」と批判した。イランのザリフ外相は26日、フランスの行動が「過激主義に油を注いでいる」と指摘した。サウジアラビア外務省当局者は27日、国営メディアで「イスラムをテロと結びつけるような試みは受け入れられない」と述べた。

フランスでは16日、パリ郊外でイスラム過激派の男が男性教員の首を切断するテロ事件が起こった。男性教員が授業でイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を見せたことに犯人は反発したとみられる。マクロン氏は宗教団体の活動への制限を強めるなど過激派対策の強化を表明した。

マクロン氏は25日、ツイッターで「互いの違いは尊重するが、憎しみをあおる発言は認めない」と述べた。アラビア語、フランス語、英語の3カ国語で発信し、過激思想と戦う姿勢は揺るがないことを強調した。

マクロン氏は右派を中心に「過激派対策が手ぬるい」と批判されており、弱腰をみせられない事情もある。国内ではさらに強力な取り締まりを求める意見が盛り上がる。

仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、フランスとの主要貿易相手国上位10位に中東の国は1国もない。地政学的には重要な地域だが、経済的な依存が少ないこともマクロン氏を強気にさせているとみられる。

欧州では2015年ごろイスラム過激派によるテロの嵐が吹き荒れた。フランスでは同年、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載した週刊紙の本社が襲撃され、編集長や記者らが死亡した。イスラム過激派のテロ対策では中東や欧州が協力して対策を進める必要があるが、両者の溝は広がるばかりだ。

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