携帯料金、負担軽減なお途上 総務省が競争促進計画

総務省は27日、携帯料金引き下げに向けた政策集をまとめた。番号持ち運びの無料化などで競争を促すのが柱で、大手各社は近く値下げの新プランを発表する見通しだ。対象は国際的に割高とされる大容量プランが主になるとみられ、中低容量が多い利用者のニーズとのずれも指摘される。菅義偉首相が官房長官時代から掲げてきた家計負担の軽減はなお途上だ。
政策集は武田良太総務相が「アクション・プラン」として公表し、検討や実施のスケジュールも明記した。同じ番号のまま携帯会社を乗り換える手数料の無料化は2021年4月に指針を施行する。複雑で不透明との指摘が絶えない料金体系をわかりやすく解説するサイトを年内に構築し、消費者が自分にあったプランを選べるようにする。
公正な競争促進策としては、大手が格安スマートフォン会社に回線を貸し出すデータ接続料の一段の引き下げも掲げた。「3年間で5割減」と目安を定めて年度内に検討に着手する。一連の施策への対応状況を今後の携帯電波の割り当ての際の審査で考慮する方針も示した。
問題は実効性だ。携帯値下げは菅氏が安倍前政権時代から政策課題として繰り返し業界に迫りながら、料金は高止まりして利用者の負担軽減が進んでいない現実がある。

19年に施行した改正電気通信事業法は通信料の高止まりの要因とされた端末と通信契約のセット販売を禁じ、大手各社が値下げに動いた。それでも世界6都市で最大手の大容量プランを20年3月時点で比べると、東京は最も高いままだ。
こうしたデータを根拠に大容量プランは「諸外国と比較して特に高い」(武田氏)と象徴的に言及されることが多い。大手各社も20ギガ~30ギガなどのプランで値下げを検討するが、現実のニーズとのミスマッチも指摘されている。
調査会社MM総研(東京・港)によると、2月のスマホのデータ利用量の月平均は約7ギガ。しかも利用者の5割は3ギガしか使っていない。中低容量の値下げが実現しなければ「実質的な料金値下げにつながらない恐れもある」(横田英明研究部長)。
値下げが広がる大容量プランでは今春に国内で商用サービスが始まった高速通信規格「5G」の料金水準が注目される。大手3社は現在はキャンペーン価格で4Gと同水準に据え置く。本来は月500~1千円の上乗せ料金がかかるため、キャンペーン後は負担感が強まる可能性もある。
東京・銀座のアップルストアで5G対応の「iPhone12 Pro」を購入した都内在住の男性(38)は「気にせず使うためにも値下げに期待している」と話した。