関西はアイデア豊か 商売の強み 若松孝彦さん
関西のミカタ タナベ経営社長

関西タイムライン
2020/10/28 2:01
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わかまつ・たかひこ 1965年兵庫県生まれ。関西学院大学大学院修了。1989年にタナベ経営に入社し、2014年より同社代表取締役社長。経営コンサルタントとして1000社以上の企業に助言をしてきた。

わかまつ・たかひこ 1965年兵庫県生まれ。関西学院大学大学院修了。1989年にタナベ経営に入社し、2014年より同社代表取締役社長。経営コンサルタントとして1000社以上の企業に助言をしてきた。

タナベ経営は主に中堅・中小企業を対象とする京都発祥の経営コンサルティング会社だ。国内10カ所に拠点を持ち、1957年の創業以来の顧客数は約7000社に上る。同社社長で現役のコンサルタントとしても活動する若松孝彦さん(55)は、関西には多様なビジネスを生む土壌があると話す。

関西経済圏はそれぞれの府県・地域に個性がある。京都は国内随一の観光地だし、神戸は港町、大阪は商業の町だ。それらが「関西」として凝縮されている。そんな地域は他にない。この多様性を支えているのが、中堅・中小企業だ。固有技術と業種にばらつきがあるのが特徴で、その存在なくして関西圏の多様性は実現しない。

事実、関西からはアイデアに富んだビジネスが多く生まれている。銀行や食品など、各業種を代表する企業で関西発祥のものは少なくない。大阪を拠点に活躍した江戸時代の作家・井原西鶴も「始末(節約)、才覚(アイデア)、算用(そろばん勘定)の3つを持っているのが関西の商売の強さ」と述べており、特に才覚の部分は傑出していると言える。

以前、京都の財界の人からこんなことを言われた。「京都には同じ業種の会社が2つとない。まねが生じ、マーケットの食い争いが起きて共倒れするのを防ぐ。同じことはやらずに業種を変えるのが京都の商法なのだ」――中小企業が勝ち残っていこうと思ったら、何らかの固有技術やサービスが必要だ。もともと地域への愛情が強く、自分たちのブランドに対するロイヤルティーが高いことも関西企業の強みとみている。

タナベ経営社長の若松さんは現役のコンサルタントでもある

タナベ経営社長の若松さんは現役のコンサルタントでもある

■一方で、関西といえば「たこ焼き」や「お笑い」など、固定観念に終始してしまっている感もある。

本当はもっといろんな魅力があり、多様な価値を内包する文化を持っているのに、それを関西の人たち自身がうまくブランディングできていないように思える。組織論ではブランディングはアウターではなく、まずはインナーとよく言われる。自分たちの価値を外に発信することより、組織の中の人たちが自身の価値をどこまで正しく認識できているかの方が大事だ。

中小企業は後継者不足も深刻な問題だ。関西は老舗企業が多いが、その多くには後継者がいない。優秀な子なら大企業に行ってしまうこともあるだろう。中小企業の後継ぎ候補に、自社の価値に対する認識を深めてもらうような勉強会がもっとあっていい。

■同社が育成の目標に掲げるのが「100年先も一番に選ばれる会社」。IT(情報技術)を積極的に活用するデジタルトランスフォーメーション(DX)は、中小企業にも必要となる。

私たちは100年続く会社の定義を「変化を経営する会社」と表現している。関西にはBtoB(企業向け)が多いが、これまで企業間でデジタルを扱う感覚があまりなかった。実際、会社の営業職にデジタルを取り入れることを助言しても、反対されることが多い。デジタル技術を使えばウェブ上で多くの新規顧客と効率的に接点を持てるはずだが、リアルでの営業を行ってきた人たちからすれば、デジタルは自分たちが長年培ってきたノウハウを奪いかねないものとして映るのだ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で移動しにくくなり、デジタルを取り入れざるを得なくなった。

この流れは企業の規模にかかわらず一斉に起きたため、大企業と取引していた中小もデジタルの条件がそろわないと取引できなくなる。時代に適合した事業の創造が企業の命運を握る。関西企業は今こそ才覚をもっと発揮していく必要があるのではないか。

(聞き手は山下宗一郎)

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