ソーセージとウインナーはどう違う なぜ2袋セット?

11月1日は「ソーセージの日」だそうである。ソーセージといえば、朝ごはんや弁当のおかず、ビールのつまみの定番。そのまま食べてもアレンジしてもおいしい、朝昼晩と大活躍する万能食材だ。「ウインナー」と呼ばれることもある。この両者の違いって? また、スーパーではなぜか2袋がテープで留められセットになって売っている。1袋単体で売っているのは見たことがない。これってなぜ? 今回は大人も子どもも大好きなソーセージの謎に迫ってみる。
まずは、ソーセージとウインナーの違いから。肉加工品業界最大手で、日本で最も高シェアを誇る「シャウエッセン」ほか、さまざまなソーセージの製造販売を手がける日本ハムに聞いてみた。
「ソーセージはひき肉に食塩、香辛料、発色剤などを混ぜ合わせて、ケーシングなどに詰めて加熱または乾燥するなどして仕上げたものの総称です。ウインナーというのは正しくは『ウインナーソーセージ』といい、ソーセージの種類の一つです」(広報IR部の森脇鈴香さん)
ケーシングとは食べられる薄い膜状の袋のこと。つまり、ソーセージという大きなくくりの中にウインナーソーセージが含まれるということである。日本農林規格(JAS)において、ソーセージにはケーシングにより次のような種類に分けられている。
(1)ウインナーソーセージ:羊腸または製品の太さが20ミリメートル未満の人工ケーシングに詰めて加工したもの。羊腸であれば20ミリメートル以上でもウインナーソーセージという。
(2)フランクフルトソーセージ:豚腸または製品の太さが20ミリメートル以上36ミリメートル未満の人工ケーシングに詰めて加工したもの。豚腸であれば20ミリメートル未満でも36ミリメートル以上でもフランクフルトソーセージという。
(3)ボロニアソーセージ:牛腸または製品の太さが36ミリメートル以上の人工ケーシングに詰めて加工したもの。牛腸であれば36ミリメートル未満でもボロニアソーセージという。

ウインナーとは「オーストリアの首都ウィーンの」という意味の形容詞。フランクフルトはドイツ中部に位置する都市、ボロニアはイタリア北部にある都市、ボローニャのことである。
これら都市の名前を冠した分類は日本特有のもので、現地では必ずしもそう呼ばれていない。「本場のウインナーソーセージを食べようと店で注文したら通じなかった」というのはオーストリアに旅した人からよく耳にする笑い話である。
では、本場ウィーンでは、日本でいうところのウインナーソーセージのことを何と呼んでいるかというと「フランクフルター」とか「フランクフルターヴルスト」だそうな。ヴルストはソーセージという意味。これはフランクフルトで修業した職人がウィーンで広めたことからそう呼ばれているとか。
フランクフルトというと日本では太めのソーセージに串を指したものを思い浮かべるが、本場フランクフルトであれを見かけることはほとんどない。フランクフルト名物のソーセージはむしろ細めで長いのが一般的だそう。そして、この種のソーセージはドイツでは「ヴィーナー(Wiener)」、つまりウインナーと呼ばれているというから、話はややこしい。これはウィーンで広まったソーセージがドイツに逆輸入される形になったからとか。
同じものをオーストリアではフランクフルトと呼び、ドイツではウインナーと呼ぶ。この手のものは「我が国が発祥!」「うちが元祖!」と争うものだが、ソーセージに関してはお互い相手国の都市の名前を冠してリスペクトしあっているところがおもしろい。
そして、ヴィーナー(ウインナー)の中でも、フランクフルト産のものが原産地名称保護制度の関係で「フランクフルターヴルスト」、すなわちフランクフルトソーセージを正式に名乗れるそうだ。
つまり、ドイツでは「フランクフルトという土地のソーセージ」という意味の食べ物は存在するが、それは日本人がイメージするフランクフルトとはまるで違う。なんとも複雑な話である。

ところで、ウインナーソーセージといえばスーパーでは、なぜか2袋がセットになって売られている。あれはいったいなぜ?
「シャウエッセンを発売した1985年当初は1パックで売られることが多かったと聞いております。これを2個テープで巻いて販売したところ、お買い得感もあり、非常に良く売れたということで、徐々に2個セットでの販売方法が主流になりました。ハムやソーセージはもともと保存食であり、冷蔵庫に入れておくと便利な食材です。お客さまもまとめ買いをして冷蔵庫にストックしておくのが便利で買いやすかったのだと思います」(森脇さん)
しかし、2個セットにするのだったら1袋に2袋分入れて売ればよさそうなものだが……。
「ウインナーの袋の中には窒素ガスが入っており、これによりおいしさと鮮度を保っています。お客さまができるだけ開封したてのおいしさを楽しんでいただけるよう使いやすい量に小分けをしています」(森脇さん)
そういえばソーセージの袋って中身に対して袋がやたらと大きく膨れている印象があったが、これはそういう意味があったのか。

さて、冒頭に11月1日はソーセージの日と紹介した。これはソーセージが3本並んでいる様子から来ていると思ったら、さにあらず。この日は「日本のソーセージの父」と呼ばれる大木市蔵が1917年、「第1回神奈川県畜産共進会」に日本で初めてソーセージを出品した日であることから記念日に制定されたという。
大木は15歳のときに横浜中華街の食肉加工店に見習いとして就職。ドイツ人コックに弟子入りし、ソーセージの製法を習い、外国人向けにソーセージを製造・販売していた。当時からすでに日本でソーセージは存在していたが、日本人の手によるソーセージが日本人に向けて初めてお披露目されたのが11月1日だったというわけだ。
彼はその後独立し、大木ハム製造商会や高崎ハムなどを設立。多くの後進を育成し、ハムやソーセージ、ベーコンのJASの制定にも携わるなど、日本の食肉加工業界に多大な功績を残した。
この日がなければ私たちはおいしいソーセージをつまみに生ビールを飲む幸せを味わえなかったかもしれない!? 秋の夜、しみじみ幸せをかみしめながらソーセージを食べようではないか。
(ライター 柏木珠希)
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