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過酷な日程乗り越え Jリーグ勢、アジア王座に挑戦

サッカージャーナリスト 大住良之

2月に行われたACLの水原戦で勝利し、サポーターの歓声に応える神戸・イニエスタ(手前右から2人目)ら=共同

3月上旬にストップしたままだったサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)東地区の試合が、11月にカタールのドーハで再開する。グループステージの残り37試合とともに、ノックアウトステージ(すべて1戦制)のラウンド16、準々決勝、そして準決勝、さらには、西地区を勝ち抜いたペルセポリス(イラン)との12月19日の決勝戦まで、約1カ月間のうちにほぼ「中2日」で最多8試合をこなす過酷な挑戦だ。

ことしのACLでは、鹿島アントラーズがプレーオフで敗退を喫し、1カ国最多4チームの出場になってから初めて3チームでグループステージに臨んだ日本勢。2月に行われた最初の2節は非常に好調で、F組のFC東京が1勝1分け、G組のヴィッセル神戸とH組の横浜F・マリノスはともに連勝スタートで、3チームとも各組の首位に立った。

横浜Mは「22連戦」の過密日程に

だが新型コロナウイルスの感染拡大で3月初旬の試合からすべて延期になり、7月に変更した日程を9月に再変更。Jリーグは2回にわたって日程を再調整し、なんとか全試合を実施する日程を組み上げた。最後まで決まらなかったFC東京vsサンフレッチェ広島も、10月26日になって12月12日の開催が発表された。

だがその結果、ACL出場3クラブだけでなく、彼らとホーム、あるいはアウェーで対戦することになっていた他のクラブにも、日程に大きな影響が出た。7月に再開した時点で3週に1回ほど水曜日に試合が入っていたのが、相次ぐ日程変更で水曜日の試合がさらに増えたのだ。もちろん、最も過密日程になったのは、ACL出場3クラブである。

神戸は8月16日から10月4日にかけての8回の週末の間の7つの水曜日がすべてJリーグ、あるいはルヴァンカップの準々決勝で埋まり、「15連戦」。ルヴァンカップの準々決勝を勝ち抜いて準決勝も戦ったFC東京は8月15日から10月18日まで「19連戦」、そして同じくルヴァンカップ準決勝が入った横浜Mに至っては、10月28日までなんと「22連戦」となった。

2月のACLのシドニーFC戦でゴールを決め、祝福される横浜M・仲川(右から2人目)=共同

当然、選手を「とっかえひっかえ」しなければならず、パフォーマンスが悪い試合もある。ケガ人も出ている。しかしこの過酷な日程のなか、泣き言を言わず、どの試合も最後まで投げずに走り、戦う姿は、心を打たれるものがある。

実は、9月にACLの「再延期」が決まったとき、Jリーグは「これ以上の日程調整は無理」と、出場3クラブのACL辞退も考えた。しかし3クラブが口をそろえて「プロとして、目の前にあるすべての試合、すべての大会で全力を尽くしたい」という強い意志を示したため、再度の日程大改変に踏み切ったのだ。

グループ突破ならJ最終節に影響

さて、ドーハで再開されるACL。日本の3クラブは2試合を終わって首位だが、実は新型コロナウイルスの「震源地」とされる中国のクラブはほとんど試合が消化できていない。日本のクラブが入っていないE組の北京国安が1試合を消化しただけで、FC東京と同じF組の上海申花、神戸が入るG組の広州恒大、そして横浜FMがいるH組の上海上港は、まだ1試合もしていない。

そのため、日本の3クラブは、中国のクラブがそれぞれ2試合を消化した後に試合をスタートする。その初戦の相手が、すべて「中2日」で「3連戦目」の中国クラブなのだ。日程的には大きな不公平があるが、この状況では仕方がない。日本の3クラブは、それぞれ初戦、11月24日のFC東京vs上海申花、25日の広州恒大vs神戸、そして上海上港vs横浜Mで勝つことに全力を注ぐことになる。この段階で勝ち点が9あるいは7になれば、グループ突破のめどが立つ。

2月のACL・蔚山戦で指示を出すFC東京・長谷川監督=共同

日本の3クラブにとって複雑なのは、グループを突破すると、ACLに連れてきた選手たちは、日本を出る前に1試合(FC東京は2試合)を残して消化してきたJリーグの最終節、12月19日の試合に出場することができないことだ。ラウンド16は12月6日と7日。仮にここで敗れて翌日に帰国したとしても、日本政府が定める「帰国翌日から2週間の自主待機期間」が変更されない限り、19日の試合に出場することはできない。そのときには、日本に残った選手たちで編成されたチームでJリーグの最終節に臨むことになる。

失格や棄権、西地区は凄惨な戦いに

すでに終了している西地区の準決勝までもドーハでの集中開催で行われたが、「凄惨」と言っていい戦いとなった。アラブ首長国連邦(UAE)のアルワハダは複数のウイルス感染者が出てドーハに移動することができずに失格。昨年浦和レッズを相手にした決勝戦で圧倒的な力を見せて初優勝を飾った「ディフェンディングチャンピオン」のアルヒラル(サウジアラビア)は、ウイルス感染者をかかえながらもドーハにきて3試合を戦い、すでにラウンド16進出の権利を得ていたのだが、グループ最終戦に11人(うち3人はGK)しかエントリーできず、「最少13人」という大会ルールを満たすことができずに棄権となった。

ただ、試合自体は快適な環境のなかで行われたようだ。9月から10月にかけての試合。ドーハはまだ酷暑の時期だったが、2022年ワールドカップのために開発された「スタジアム・クーリング・テクノロジー」により、ピッチ上の気温は22度程度に保たれ、スピーディーな試合が可能となった。

このシステムは、「ドーム」ではないにもかかわらず、効果的な冷房によりピッチも観客席も快適な気温が保たれるというもので、しかもそれほど化石燃料を必要としていないという画期的なもの。11月下旬のドーハは日没後には快適な気温になるはずだが、キックオフが現地時間午後1時(日本時間午後7時)や午後4時(同10時)に設定されているのは、このシステムがあるためだ。

プロとしての誇りをかけ、過酷な日程に立ち向かう日本の3クラブ。アジアの王座を目指し、奮闘を期待したい。

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