中高年の自殺原因、経済原因多く 20年自殺対策白書
政府は27日の閣議で2020年版自殺対策白書を決定した。09~19年に自殺した中高年・高齢者約20万8千人の状況を分析。白書は、中高年の原因・動機で多かった「経済・生活問題」に触れた上で、統計には反映されていない20年は新型コロナウイルス禍の経済的影響が懸念されるとして、対策の必要性を指摘した。厚生労働省によると、中高年・高齢者の詳細な分析は初めて。
分析したのは中高年(40~64歳)、前期高齢者(65~74歳)、後期高齢者(75歳以上)の3グループ。複数選択で原因・動機を調べると、全体を通じて最多は「健康問題」で5割程度。中高年で2番目に多かったのは「経済・生活問題」で3割弱程度。前期高齢者の2番目も同様だったが、後期高齢者では「家庭問題」が2番目だった。
厚労省は自殺には複数の原因が重なることが多く、健康問題にも経済事情などが複雑に絡んでいるとみている。
中高年を男女別にみると、男性で「生活苦」など経済・生活問題、女性で「夫婦関係の不和」など家庭問題が多かった。
白書によると、19年の自殺者数は2万169人で前年より671人減。10年連続減少し、統計を始めた1978年以降で最少となった。15~39歳の各年代の死因で最も多いのは自殺だった。15~34歳で同様の状況なのは先進国では日本のみとし「国際的にも深刻」としている。
また東日本大震災に関連する19年の自殺の状況では、総数は16人(前年比7人増)。岩手県が1人増え、宮城県は2人減り、福島県は8人増えた。14~17年は総数20人台で推移し、18年には9人と大きく減っていた。
20年の状況を厚労省公表の月別の自殺者数(速報値)でみると、1~6月は前年同月比減だが、7~9月は増加に転じた。同省はコロナ禍の影響の有無を分析している。
政府は17年に自殺総合対策大綱をまとめ、職場でのメンタルヘルス対策の推進や長時間労働の解消などを盛り込んだ。
〔共同〕