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参天製薬、ブラサカと10年契約の理由 谷内社長に聞く

Tokyoオリパラ
2020/10/28 3:00
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参天製薬はブラインドサッカー日本代表のスポンサーを務めている

参天製薬はブラインドサッカー日本代表のスポンサーを務めている

参天製薬は日本ブラインドサッカー協会(JBFA)と2030年まで10年間にわたるパートナーシップ契約を結んだ。国内のスポーツ界で、これほど契約期間が長いスポンサー契約は珍しい。参天製薬の谷内樹生社長兼最高経営責任者(CEO)は「ブラインドサッカーを通じ、世の中の価値観を変えていきたい」と話す。

――10年という期間はスポーツ界では異例だ。単年度ではなく長期にわたって契約を結んだのはなぜか。

「参天製薬は今年創業130周年を迎え、30年までの長期ビジョンを発表した。その柱の一つにインクルージョン(多様性を積極的に評価し、企業活動に取り込むこと)を据えた。ブラサカはこの良い事例だと考えている。これまでもブラサカ日本代表のスポンサーとして資金面での支援をしてきたが、もう一歩踏み込み、ブラサカを通じて世の中の価値観を変えるような取り組みをしていきたい。それを世界に広げるためには、数年がかりで腰を据えてやっていかなければならない」

参天製薬社長兼CEOの谷内樹生氏

参天製薬社長兼CEOの谷内樹生氏

――参天製薬は17年からブラサカ日本代表のスポンサーを務めてきた。ブラサカという競技の魅力をどのように捉えているか。

「ブラサカはまず競技として面白い。(プレー中の声援や音出しは禁止のため)静寂と歓喜のメリハリが利いていて、サッカーの良い部分がそのまま生きている。サッカーは世界で最も普及しているスポーツで、そのコンテンツをそのまま生かせる。ブラサカではゴールキーパーは健常者が務め、視覚障がい者に混ざってプレーする。私たちは目薬を中心とした医薬品を販売し、視覚障がい者とも多く関わってきた。障がい者が健常者と普通に溶け込む社会が理想だが、ブラサカはそれを具現化している」

■ブラサカ体験で得られる気付き

――JBFAとのパートナーシップ契約では、ブラサカの普及促進に加え、視覚に関わる社会課題の解決に向け協力する。具体的にどのようなことに取り組むのか。

「ブラサカを広める機会をさらに増やしていく。私たちは視覚障がいを抱えた子どもがブラサカを体験するキャンプなどを数年前から支援している。ヨーロッパやアジアでも事業展開しているので、現地の拠点を活用し、海外での普及活動にも取り組む」

「ブラサカを体験する機会もまだまだ少ない。体験イベントには私たちの社員も参加しているが、実際に視覚障がいの方と触れあうことでいろいろと気づく事が多かったようだ。こうした気付きは多くの人に与えられる。見えることがいかに大事かということをパートナーシップを通じていろいろな人に訴え、目の健康に対する意識を高めることにもつなげていきたい。眼科医や教育関係者とも連携していく」

「視覚障がい者の社会参加に向けた支援にも力を入れていきたい。様々な分野で活躍されている方も多いが、国内外を含め、障がい者が経済的に自立できない状況は続いている。そこに対して何かできないかということは考えていく」

参天製薬では視覚障がいの子どもがスポーツを体験する活動を支援している

参天製薬では視覚障がいの子どもがスポーツを体験する活動を支援している

――視覚に関わる新たな製品やサービスの創出を目指す「イノベーションハブ」構想も立ち上げた。

「パラアスリートはエリートであり、様々なアセット(資源)を持つ。私たちも目に対する深い専門性や海外におけるネットワークを持っている。インクルージョンやウエルネス(健康)をテーマに取り組むスタートアップ企業も増えている。3者で連携し、新たな価値を作りたい」

――スポンサー企業が他企業や団体を主体的に巻き込んで社会課題の解決に取り組む例は、国内ではまだ珍しい。

「ネットワークや資源など、スタートアップに不足している部分は私たちがサポートできる。JBFAやパラアスリートに対しては、テクノロジーの面でサポートできる。大学や研究機関との取り組みも考えている。例えば京都大学のiPS細胞研究所では、患者の声や専門家の知見、情報が集まって新たな技術が生まれている。私たちもそういった輪を作りたい。自社のネットワークを生かして国内外の企業と輪をつなぎ、新たな価値を提供できればと思っている」

■目にまつわる機会損失を減らす

――JBFAとの契約は参天製薬のビジネス面にどのようなメリットを生むと考えているか。

「30年までの長期ビジョンは、私としての反省から出発している。これまでは製薬会社として『病気を治す』ということに意識が行き過ぎていた。最終的には、それを通じて人々が幸せになることがゴールだ。病気にならないような啓発活動も重要になる。JBFAとのパートナーシップをうまく活用していきたい」

「売り上げや利益を増やすことが目的ではない。目にまつわる機会損失を減らすのを目標としている。ドライアイやアレルギーの症状が軽くなれば仕事や勉強に集中できる。インクルージョンも視覚障がい者にとっては機会損失の削減になる。売り上げや利益のその先にあるゴールを目指して取り組んでいく」

「人材も重要だ。優秀な人材は社会的な意義のある仕事に対するニーズが強い。世界の約4千人の社員に対して、社会にとって必要不可欠な会社だと堂々と言える取り組みをしていきたい」

(聞き手は木村祐太)

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