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クマ出没多発、エサ凶作原因か 半年で1万3000件超

クマに襲われる被害が相次ぐ新潟県の道路脇に掲げられた、注意を促す看板(新潟県五泉市)=共同

クマの出没や人的被害が止まらない。環境省によると、4~9月の出没は全国で1万3千件に上り、過去5年で最多となった。国は26日、クマ対策で初となる関係省庁の連絡会議を開いたが、山形県では同日、高齢女性が襲われた。背景にはエサ不足があるとみられるほか、人口減少などの問題を指摘する声もある。

環境省によると、4~9月のクマの出没件数は1万3670件で、直近5年間の同時期で最も多い。例年は7~8月ごろから減るが、今年は8月になっても増加が続いた。人的被害も9月までで86人に上った。

目立つのが、住宅地や商業地など「人の生活圏」での出没だ。山形県川西町では26日午前9時半ごろ、住宅の庭で落ち葉の掃除をしていた女性(70)がクマに襲われ、軽傷を負った。県警米沢署によると、クマは体長約1メートルで、女性を襲った後にやぶに逃げた。

JR加賀温泉駅前の商業施設「アビオシティ加賀」(石川県加賀市)に19日に侵入したクマは、約13時間後に射殺された。秋田県藤里町でも7日、80代の女性が襲われ、1週間後に死亡した。町役場から約200メートルの住宅地で、県によると住宅地でクマに襲われた死亡例は初めてという。

人里に姿を見せる原因の一つがエサの凶作だ。環境省の担当者は「エサの実の生育状況とクマの出没は連動している」と話す。クマが好んで食べるブナは今年、環境省に結実状況を報告した23都道府県のうち17道府県が凶作だった。

東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は「エサ不足だけでなく、複合的要因の可能性がある」と指摘し、人口減少の影響に注目する。農林業センサスによると、1990年に約14万だった農業集落数は2015年までの25年間で1800以上減った。山崎教授は「高齢化や過疎化で人里の人口が減り、クマの分布が広がってきた」と分析する。

実際にクマの生息域は広がっている。環境省によると、5キロメッシュ単位でクマの目撃情報があったメッシュ数は、03年度の6735から18年度は9358と39%増えた。生息していないとされてきた大阪府などでも近年、目撃情報が増えている。

一方、クマを駆除する狩猟者は減っている。環境省によると、16年の狩猟免許所持者数は約20万人で、1975年の半分以下に落ち込んだ。60歳以上が6割超を占め、高齢化も深刻だ。

国は26日の関係省庁連絡会議で、環境省、警察庁、農林水産省、林野庁の担当課が被害情報を共有し、自治体への注意喚起や出没時の連絡体制の整備などで連携することを確認。専門家の意見を踏まえ、自治体職員向けの「対応マニュアル」も修正する予定だ。

自治体も対応を急ぐ。ツキノワグマを絶滅寸前種に指定して狩猟を禁じてきた京都府は、保護政策を見直す方向で検討を始めた。秋田県はクマとの共生を探り、道路脇のやぶを刈って見通しを良くした「緩衝地帯」を20年度末までに計325ヘクタール設ける。県森林整備課の担当者は「人とクマがばったり出合うことなく、うまいことすみ分けられれば」と話す。

近畿大の沢畠拓夫准教授(動物生態学)は「人を恐れず、人里を採餌場とするクマが増えている」と、クマが人間社会に依存し始めていることを問題視する。「山の中に果樹を植えるなどして、クマに山に帰ってもらう方法も考えるべきだ」と話している。

遭遇時は冷静に対応を 秋は食欲旺盛、残飯に注意

国内には北海道に生息するヒグマと、本州で多く出没するツキノワグマがいる。冬眠に備える秋は食欲が増し、エサを求めて行動が活発になる。今秋は民家付近だけでなく、紅葉スポットや温泉地などでクマに襲われるケースも確認されている。

環境省によると、ヒグマは大きい個体で体長が2メートル以上、ツキノワグマは1メートル以上に達する。朝や夕暮れを中心に行動するとされ、基本的に臆病な性格ながら、ヒトの食べ物の味を覚えると執着するといった性質も持つ。

NPO法人、日本ツキノワグマ研究所(広島県)は、クマを生活圏に引き寄せない対策として、柿や栗などは実ったまま放置せず、残飯を入れたコンポスト容器も庭先に置かないことなどを挙げる。

遭遇時は冷静に行動するのが第一だ。クマと20メートル以上距離がある際は、背中を見せず後ずさりをして離れる方法などがあるという。米田一彦理事長は「攻撃された場合は、首などを守る防御姿勢を取るのが望ましい。目や鼻に吹きかける撃退スプレーがあれば有効な手段になる」と話す。

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