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EUが巨額ESG債 社会貢献・環境で30兆円超発行へ

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が「ESG(環境・社会・企業統治)」債発行に乗り出した。発行規模は合計で30兆円超になる見通し。これまでの世界の発行額と同等かそれを上回る規模の債券を発行し、一挙に主要な発行体に躍り出る。マネーがESG関連に向かう流れをつくり、EUの政策実現につなげる狙いもある。

EUの欧州委員会は21日、社会的な課題の解決につながる事業に使途を限ったソーシャルボンド(社会貢献債)を発行し、170億ユーロ(約2兆1千億円)を調達したと発表した。中銀や年金基金、ファンドなどから発行額の13倍以上の需要があったという。

償還期間が10年と20年の2種類で、とりわけ10年債の人気が高かった。「同じ償還期間でトリプルA格の起債が少ない上、ESG債への関心の強さが示された」(ABNアムロ)。欧州委が社会貢献債を発行するのは初めてという。

欧州委はこの債券で調達した資金を「SURE」と呼ぶ雇用支援制度の基金にあてる。これは新型コロナウイルスの感染拡大で失業者が大量に出るのを防ぐため、EUが6月から始めた各国へ融資する制度だ。欧州委によると、すでに17カ国に878億ユーロを融資することが決まっている。

EUはこの枠組みで最大1千億ユーロを調達する計画だ。2020年は合計300億ユーロ分を、21年はその残りを調達する。調査会社ブルームバーグNEF(BNEF)によると、19年の世界での社会貢献債の発行額は185億ドル(約1兆9400億円)で、EUの市場参入で規模が一気に膨れあがることになる。

社会貢献債に加え、EUは21年からグリーンボンド(環境債)を発行する計画だ。環境債は再生可能エネルギー事業や省エネ事業など環境分野に使途を限定して発行される債券。予定額は2250億ユーロ規模にのぼり、19年通年の世界全体の発行とほぼ同じ水準だ。

EUは新型コロナで傷ついた経済を再生するため、7500億ユーロの復興基金を設けることで合意した。7500億ユーロは市場から全額調達し、その3割を環境債でまかなう。復興基金の債券発行は21年から始まり、26年までに終える予定だ。

英非政府組織(NGO)の気候債券イニシアチブ(CBI)によると、19年の世界の環境債発行額は2589億ドルと前年から51%増えた。フランスやオランダ、ベルギーなど欧州が中心で、全体の4割を欧州が占める。域内最大の経済大国ドイツも9月に初めて環境債を発行し、年内に1兆円規模になる見通しだ。

21日記者会見したEUのハーン欧州委員(予算担当)は「社会貢献債と環境債の発行は、EUの持続可能な金融(サステナブルファイナンス)への積極的な関与を示すものだ」と力説した。EUには自らが債券市場の主要発行体となることで、市場規模を拡大し、流動性を高める狙いがある。ESG関連にマネーが一段と向かえば、気候変動などEUの政策実現にも貢献するとみている。

EUは持続可能な金融の基準づくりを進めている。先行するのが50年に域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる環境分野だ。環境債による調達資金の使途を明確にしたり、外部評価の取得を義務付けたりすることを検討しているほか、企業にも環境関連の情報開示を求める。この基準を世界に広げ、ESG市場で優位に立つ野心を抱く。

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