マンション購入、気になる修繕積立金 増加額の目安は
20代からのマイホーム考(11)

マンション購入の際、気になることの一つに「将来、修繕積立金がどの程度まで増加するか」ということがあります。長期的な家計の収支を踏まえて住まいを購入しようと考えている方は多いと思います。そんな中、修繕積立金の増加はチェックポイントになります。今回は、簡単に修繕積立金の増加額を見積もる方法をご紹介しましょう。
段階増額積立方式と均等積立方式
多くのマンションは、新築当時の修繕積立金が低く抑えられており、徐々に金額がアップするという「段階増額積立方式」となっています。最近では、家計の収支計画を立てやすくするために、新築当時からずっと金額の変わらない「均等積立方式」を採用しているマンションも出てきていますが、まだまだ少数派です。中古マンションもほとんどが「段階増額積立方式」になっており、いつ頃どの程度、修繕積立金が増えるのかわからないという状態になっています。
国交省のガイドラインが参考に
こうした中で参考になるのが、国土交通省が策定した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」です。
このガイドラインは、新築マンションの購入予定者や検討者が修繕積立金の水準を判断する際の参考になるよう「修繕積立金の額の目安」を示したものです。修繕積立金の額は、個々のマンションごとに様々な要因によって異なりますし、ばらつきも大きいことから、実際に作成された長期修繕計画を幅広く収集し、その事例の平均値と事例の大部分(3分の2)が収まるような幅として示しています。

マンションに機械式駐車場がある場合は、その修繕工事に多額の費用を要することから、機械式駐車場に関する修繕積立金を特殊要因として上記の修繕積立金の目安に加算することとしていますので、機械式駐車場があるマンションを検討する場合には、このガイドラインを確認してみるとよいでしょう。
修繕積立金増加額を見積もる
ガイドラインに示されたこの表は、新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額を当該期間で「均等に積み立てる方式(均等積立方式)」による修繕積立金(月額)を目安として示していますので、修繕積立金が徐々にアップする仕組みを採用している一般的な中古マンションの修繕積立金を予想するには少し工夫がいります。
以下の例で考えてみましょう。

先ほどの前述の表を調べてみると、上記のお部屋は修繕積立金の平均値が1平方メートルあたり218円(月額)ですから、このお部屋を分譲当時から所有し、30年間で負担すべき修繕積立金総額の目安は、218円×60平方メートル×12カ月×30年=約470万円となります。
次に購入希望のお部屋の修繕積立金額の推移を確認します。不動産会社の方に聞けば大抵はわかるはずです。例えば、当初8年は月額5千円、9年目以降から現在までは月額1万円だったとすると、これまでこのお部屋が負担してきた修繕積立金総額は、5千円×12カ月×8年+1万円×12カ月×2年=72万円となります。
ということは、向こう20年間で398万円(470万円-72万円)の支出が発生する可能性があることになります。仮に、11年目以降、30年目まで毎月均等額で積み立てるとすれば、398万円÷20年÷12カ月=16,583円/月となるということが分かります。この場合、現在の修繕積立金は月額1万円ですが、今後20年間は1.6倍以上を支払うつもりで家計の収支を組む必要があるということになります。
個別性には留意を
適切に修繕を行っているマンションと劣化を放置しているマンションでは修繕にかかるコストも変わってきます。築20年以上経過しているマンションの場合はなおさらです。また、シンプルな形状かそうでないかによっても修繕コストは大きく変わります。
マンションの個別性によって修繕コストは変わるので、このガイドラインを使った将来の増額見積もりは、あくまで参考数値にすぎないという点に留意が必要です。とはいえ、家計の収支計画に関する見通しを立てるには利用可能な方法ではないでしょうか。将来、どの程度増額する可能性があるのかを知っているのと知らないのとでは大違いだと思います。

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