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タイ首相、改憲論議を支持 デモ沈静化狙う

(更新)

【バンコク=村松洋兵】タイで26日、国会が臨時に招集されて反体制デモを巡る議論が始まった。プラユット首相はデモ隊が要求する憲法改正の手続きを進める考えを示した。デモ隊の要求を一部受け入れ、抗議活動の沈静化を図る狙いだ。

休会中の国会は11月1日の再開を予定していたが、10月中旬以降の反体制デモの拡大を受けて臨時招集が決まった。26、27の両日に計23時間を費やし、政府と与野党がデモの対応策を討議する。

プラユット首相は討議で憲法改正について「改憲を政府が支持している姿勢を示すため、国民投票を提案する準備がある」と述べた。親軍の最大与党「国民国家の力党」と政府の間で、改憲手続きを進めることに合意したと明らかにした。

改憲には国会の審議だけでなく、国民投票の実施が必要になる。政府はこれまでも11月に改憲論議を再開する意向を示していたが、国民投票について具体的に言及するのは初めてだ。

タクシン元首相派の最大野党「タイ貢献党」のソムポン党首は「反体制派の意見に真剣に耳を傾けるべきだ」として、首相の辞任と改憲論議の加速を訴えた。

反体制デモが10月に拡大したのは、国会が9月に改憲論議の先送りを決めたのがきっかけだ。9月に与野党がそれぞれ出した改憲手続きに関する提案を採決する予定だったが、与党の働きかけで見送られた。これに反体制派が「時間稼ぎ」と反発を強めた。

反体制派は憲法改正を「軍政の流れをくむ政権の退陣」「国王の権限縮小を含む王室改革」と並ぶ主要な要求項目に掲げる。軍政下の2017年に制定された憲法が、政権と王室の権力維持を可能にしているためだ。

反体制派が特に問題視するのが議会制度だ。タイ国会は総選挙で選ばれる下院(定数500)と、国軍が事実上指名する上院(同250)から成る。両院に首相指名選挙の投票権があり、総選挙で政権交代が実現しにくい仕組みとなっている。

改憲手続きのハードルも高い。上院の3分の1以上の賛成を必要としており、国軍が改憲を認めなければ実現できない。また、憲法は王室について「国王は立憲君主制の元首であり崇拝の対象」と規定する。与党は王室に関する条文の変更は認められないとして、王室改革を求める反体制派をけん制する。

反体制派のデモ隊は26日、バンコクのドイツ大使館に向かって行進した。ワチラロンコン国王はドイツで滞在することが多く、国王がドイツからタイの国事行為をすることが問題視されている。ドイツ大使館をデモに巻き込み、王室の問題を国際社会に訴える狙いもありそうだ。

王室を支持する保守派も同日、反体制派に先回りしてドイツ大使館の前で集会を開いた。保守派は25日には国会議事堂前に泊まり込んだ。反体制派が国会を取り囲むとの臆測を受けて動員された。王室改革を巡って反体制派と保守派がいずれもデモを活発化させており、国民の分断が激しくなりかねない。

タイの歴史は政治対立による混乱を繰り返してきた。14年には当時、政権を握っていたタクシン元首相派と保守派が激しく対立し、陸軍司令官だったプラユット氏が軍事クーデターを起こす引き金となった。今回は既得権益を持つ保守派と、社会の閉塞感に不満を持つ若者が対立する構図が鮮明になっている。

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