血液の「にごり」10秒で分かる 採血なし小型の脂質計

食事や体重管理に役立つ、独自の計測機能を持つ製品を実際に試して紹介するシリーズ。前回の摂取カロリーを自動的に測る腕時計型活動量計に続いて、第2回は血液中に含まれる脂質を採血することなく計測できる機器を紹介する。
メタボ予備軍やダイエットしたい人に
この機器の名称は「にごりチェッカー CaLighD(キャライド)」。北海道大学発のスタートアップ、メディカルフォトニクス(札幌市)が開発した、世界初の検査技術を用いた測定機器だ。メタボ予備軍やダイエットをしたい人などに向けて、8月から一般販売が始まった。大手電子商取引(EC)サイトでの販売価格は2万1780円(税込み)だ。

キャライドが計測する血液の「にごり」とは、どういうものなのか。簡単に言うと、食事に含まれる脂質のこと。食事の脂成分が身体に吸収されると、脂質粒子として血液中に入り込む。同社ではこの状態を「血液のにごり」と呼び、キャライドはにごり具合を独自のセンサーで計測するという。
血液のにごりは、通常、食後3時間ほどでピークに達し、食後5~6時間で空腹時と同じ状態に戻る。だが、いつも脂質の多い食事をしていたり、脂質の代謝が遅い体質だったりすると、にごりが長時間続いて正常の状態に戻らないことがあるという。「にごりがある状態で、さらに脂質の多い食事を続けていると、当然ながら肥満になりやすくなり、さらには動脈硬化のリスクを高めるなど、危険な病気へ発展しかねない」とメディカルフォトニクスは説明する。
キャライドは、こうしたリスクを自宅で把握できるのが利点だ。食事前に血液のにごりを計測し、もしにごりが多ければ油っぽい食事を控えるといった対応ができる。計測を続ければ、食事内容によってにごりの状態が続きやすかったり、にごりがなくなりやすかったりするという体質も把握できる。結果として、最適な食事内容を自分でコントロールできるようになるわけだ。
空腹時と毎食前に「にごり」をチェック
キャライドを借りて、実際に自分の食生活を確かめてみた。計測機器は、幅45×高さ60ミリで重さ40グラムという、携帯しても苦にならないサイズ。この計測機器とスマートフォンをBluetoothで接続し、専用アプリを介して計測データをやり取りする。

計測方法は実に簡単。前腕部の静脈に機器背面のセンサーを当てて、計測ボタンを押すだけ。センサーが静脈を検知すると計測が始まり、約10秒間、機器を動かさないように軽く押しつけていれば計測完了だ。ほどなく接続したスマホへデータが転送される。にごりのレベルは10段階で表示され、筆者が食前に計測した限りではレベル2~4くらいで「正常」か「少なめ」という結果が多かった。



逆に食後3時間ほど経過したタイミングや、揚げ物をたくさん食べた後の食前などでは、レベルが6前後と高めになったことも。このように高めの数値だったときは、次の食事を肉ではなく魚をメインにしたり、ラーメンではなくそばにしたりするように心がけると、次回の計測時には正常値に戻った。毎食前に検査すれば、適切な食事内容を考える指針になる。アプリには食事内容を写真で記録できる機能もあるので、毎回、撮影しておくと食事とにごりの相関関係も把握しやすくなるはずだ。


にごりを測定する基準として、空腹時(起床後)に計測する必要があるほか、計測する静脈を変えないようにするといった注意点はあるが、慣れれば計測は1分もかからない。こうした手軽な使い勝手と、健康管理の仕組みが評価され、キャライドは地方自治体が手がける生活習慣病予防(改善)の保健指導にも活用されているという。食生活の改善に「にごり」という目安を取り入れたい人にはお薦めの一品だ。
(ライター 原如宏)
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