一番人気はiPhone8、20年第3四半期の中古取引市場

中古品ネット販売のマーケットエンタープライズ(東京・中央)は22日、2020年第3四半期(7~9月)における中古iPhoneの取引数ランキングを発表した。同ランキングは、中古スマホ端末取引の大手4市場(ヤフオク!、メルカリ、ムスビー、ラクマ)の動向を分析した結果である。また今回は、最新の「iPhone 12」シリーズと通信料金値下げ議論の影響についても言及している。
iPhone 8とiPhone 7が依然人気
今回の中古iPhone市場ランキングのトップ10は前四半期と同様に、9位までを「iPhone 8」と「iPhone 7」が占めた。動きがあったのはランク外。「iPhone SE」(第2世代)の取引数が前四半期と比べて最も増加した。特にiPhone SE 64GBは前四半期比で1517%という驚異的な伸びを示した。マーケットエンタープライズは、iPhone SEはiPhone 8とほぼ同じ見た目にもかかわらず、「iPhone 11」シリーズに搭載されたA13 Bionic(バイオニック)チップを備え、新品でも価格は4万円台という条件が相まって、新品・未使用品のiPhone SEと中古のiPhone 8を比較検討するユーザーが増加しているとみている。
iPhone 12 mini乗り換えでiPhone 11離れが進む
マーケットエンタープライズは今回、第12世代以降のiPhoneについて、その取引数などを前四半期と比較した。ほとんどのモデルで減少あるいは横ばいとなった一方、ハイエンドモデルのiPhone 11 Pro/Pro Maxは取引数が増加したという。この傾向は20年11月発売のiPhone 12 miniの後押しにより続くとみている。「iPhone 12 miniの価格は税別7万4800円から。iPhone 11 Pro/Pro Maxは元値からの下落率が低く、再販価値が高い機種である。機種変更を考えているiPhone 11 Pro/Pro Maxユーザーが端末を売却し、それを資金に新品のiPhone 12 miniを購入したとしても十分にお釣りがくる。ハイエンドモデルを手放し、それと引き換えに新品のiPhone 12 miniを手に入れるという新たな消費行動が生まれるかもしれない」(同社)
今後の見通しとして同社の菅野辰則アナリストは、「iPhone 12シリーズは5G対応機種として注目を集めているものの、残念ながら日本では5Gの恩恵を受けられる環境がまだ整っていない。これを理由に新シリーズへの買い替えを踏みとどまるユーザーが一定数出てくることから、iPhone 12シリーズ発売によるiPhone中古市場への影響は大きくないだろう」とみる。
また、菅内閣の目玉政策「携帯電話の通信料値下げ」が実現した場合については、「分離プランの影響も相まって、端末購入の負担がより一層顕在化するだろう。キャリア各社の買い替えプログラムの利用増加が考えられる。買い替えプログラムでは2年ごとにユーザー端末の回収を行うため、回収端末が増加していく。KDDI(au)とソフトバンクではサブブランド(UQモバイルとワイモバイル)がリファービッシュ品(修理・整備して再販売するもの)として販売している。現在サブブランドを持っていないNTTドコモはNTT持ち株会社の完全子会社となるとその方針が変わる可能性がある。各社のリファービッシュ品の販売活発化が進むと、中古での購入が一般化されるようになり、中古端末の適正価格を調べる動きがユーザーの間で広がり、中古スマホ相場のデータがより重要になりそう」(菅野アナリスト)という。
(日経クロステック 加藤雅浩)
[日経クロステック 2020年10月23日掲載]
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