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目前に迫る米大統領選 スゴ腕個人は相場にこう臨む

相場が急落すればリバウンド狙いで買い出動も

トランプ氏(写真左)とバイデン氏=ロイター

現政権の継続か、それとも政権交代か──。週明けの11月3日に実施される米大統領選挙の投開票。票の集計でトラブルが生じなければ、結果は日本時間で4日午後(現地時間で4日未明)に判明する見込みだ。その時に日本の株式市場はどのような反応を示すのだろうか。

16年11月8日に行われた前回の大統領選では、ドナルド・トランプ現大統領が予想外の勝利。この結果に日本株市場は大きく動揺し、同月9日の日経平均株価は前日比919円(5.4%)安の1万6251円で引けた。この急落はアジアなど他の国・地域の株式市場に波及。選挙翌日の米株式市場も急落必至と思いきや、意外な展開を見せた。

時間外取引でダウ平均先物が一時800ドル超下落するなどの混乱があったものの、すぐに収束。大幅減税や規制緩和への期待が膨らみ、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数はそろって上昇した。この流れを受けて、同月10日には日本株市場も反発。日経平均は前日比1092円高で引け、前日の下げを1日で取り戻した。その後は日米ともにトランプ相場と呼ばれる上昇相場が到来した。

1日で収まったものの、日本株市場はトランプ大統領の当選で日経平均が一時1000円超も急落するほど大きく揺れた。株式投資で1億円を超す資産を築いたスゴ腕の個人投資家の中には、そのような事態を想定し、様々な手を打って大きくもうけた猛者がいた。

例えば事前に現金を増やして投資余力を高めておき、相場急落で割安になった有望株を買い向かった賢者、デリバティブ(金融派生商品)の先物やオプションを使って相場下落で利益が出る売買を仕掛けた勝負師などだ。彼らは今回の大統領選をどう迎えようとしているのだろうか。複数のスゴ腕に対応を聞いた。

前回に2日で800万円もうけたスゴ腕の対応は?

株主優待の権利確定やTOB(株式公開買い付け)といった特定のイベントに着目した投資を手掛ける専業投資家の夕凪さん(ハンドルネーム)。前回の大統領選の際には、結果が伝わった16年11月9日と翌10日の2日間に、日経平均のプットオプションの買い建てと先物の売買を実行。合計で800万円を超える利益を上げた。

プットオプションの買い建ては、相場の下落で利益が出る取引だ。夕凪さんは次の2つのパターンでプットオプションを買い建てるという。一つは、売買高の少ない銘柄を多く保有していて、全体相場の急落が懸念される時。実際に急落が起きても、売買高が少ないために保有株をなかなか売れない。そこで、プットオプションの買い建てで利益を出し、保有株の含み損をカバーする。いわば保険としての用途だ。

もう一つのパターンは、相場急落時に利益を上げる攻めの投資だ。「16年の大統領選では、ヒラリー・クリントン候補の勝利を予想する声が圧倒的に多く、実際にそうなっても相場が上昇する可能性は少なかった。その一方で、逆の結果になれば相場が大きく崩れることが予想された。攻めの投資でプットオプションの買い建てを行うのに適した状況だった」(夕凪さん)

では、今回の大統領選にはどう対応するのか。「今回はオプション取引を実行することはないだろう」と夕凪さんは話す。「どちらの候補とも大統領になり得るので、結果がサプライズにならない。従って、どちらが当選しても相場は急落しない」と考えているからだ。

夕凪さんと同様にイベントに着目した投資を得意とする会社員投資家の羽根英樹さんも、前回の大統領選後の急落を受けて先物を購入。反発局面で利益を上げた。今回も大統領選の後に急落することがあれば、先物買いでリバウンドを狙うという。

「何らかのショックによる急落は必ず反発する。急落が起きても、それで慌てて売ることは避けなければならない」と羽根さんは指摘する。

緩和マネーが相場を下支えするとの見方

年初来高値や昨年来高値といった「新高値」を付けた銘柄など、株価の上昇にモメンタム(勢い)がある株を買って、短期間で大幅な売却益を上げることを目指す「モメンタム投資」。この投資法を展開する専業投資家のペンタさん(同)は、強気の姿勢を崩さない。

「どちらの候補が勝っても相場が大きく崩れることはない。新興企業向け市場の東証マザーズに上場している銘柄の上昇が続く」という見立てを持ち、信用取引で購入した株を持ち続ける構えだ。

「年金など海外の機関投資家の資金がマザーズの人気銘柄に流入している。割高感を警戒する声もあるが、人気銘柄の上昇はまだ止まらない」と続ける。

見立てに反して相場が下落した場合には、保有株を売って持ち高を減らす方針だ。「コロナショックで相場が暴落した局面では、時価総額の小さい銘柄ばかりを保有していた。売買高が少なく、一気に売ることができなかった。そこでコロナ禍で大きな打撃を受けそうだと思った日本航空ANAホールディングスなどを空売りして、含み損の拡大を食い止めた」

ペンタさんはこう振り返り、次のように続ける。「その反省もあって、今は時価総額が500億~1000億円のマザーズ銘柄を保有している。時価総額が大きく売買高も多いので、売りたくても売れずに困ることはない」

米国株投資ブロガーのたぱぞうさん(同)も、「前回の大統領選の前は積極的に株を持たずに様子を見た。今回はどっちが勝っても、コロナ対策で大規模な財政支出と金融緩和が続く。だから、長期にわたって相場が低迷する可能性は低い」と話し、米国の株価指数に連動するETF(上場投資信託)を持ち続ける方針だ。

「米国株については過熱感を警戒する向きも多い。しかし、一部の小型株は異常に高くなっているが、相場をリードしているGAFAMなどのハイテク株も指数も異常に割高という状態ではない。金融緩和で供給されたマネーが他に行き場がなく、株式市場に流入していることを考えると、当面は米国株を買い続けられる」

来年の相場調整を警戒する声も

同様に米大統領選の結果で相場が急落する可能性は低いと見ているものの、「株の持ち高を減らした方がいい」と話すスゴ腕投資家もいる。Bコミのハンドルネームでも知られ、株式評論家としてメディアにも出演するこころトレード研究所所長の坂本慎太郎さんだ。

持ち高を減らすことをアドバイスするのは、コロナショック後にかなり上昇して過熱感が強まっているマザーズが大きく崩れる可能性があるからだ。「これから年末にかけてIPO(新規株式公開)が多く出るので、マザーズへの資金流入が続きそうだが、現在の株価水準を考えるといつ崩れてもおかしくない。今はポジションを軽くして、上昇が続くようなら買い増していけばいい。自分自身もそうしている」

さらに坂本さんは次のように警告する。「来年の春から秋にかけて発表される企業の四半期決算で業績回復の遅れが鮮明になれば、全体相場が大きく崩れる可能性がある。この点は警戒した方がいい」

次は10月公開の記事(冬のコロナ再流行を予想 逆風銘柄の下落を待ち受け)の取材で、11月以降の冬季に新型コロナウイルスの感染が再拡大すると予想し、株の持ち高を減らして現金を増やし、買い付け余力を高める考えを示した兼業投資家のたーちゃんさん(同)。

大化け株を複数ものにして運用資産を数億円に増やしたこのスゴ腕投資家は、前回の大統領選や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票の際に、夕凪さんと同様にプットオプションの買い建てを手掛けて、大きな利益を上げた。

「今回の大統領選ではどちらの候補が勝つとどう動くという明確なイメージがわかないので、特別なポジションは取っていない」。たーちゃんさんはこう明かした上で次のように語る。

「新型コロナの再流行でフランスが部分的なロックダウン(都市封鎖)に再び踏み切るなど、欧州の状況が深刻度を増している。警戒を強め、現金を厚めに持つ姿勢を維持している」

さらに取材した中で唯一の女性投資家である某OL(emi)さん(同)は、大統領選後に相場が急変動することを警戒して、ポジションを減らす考えを示す。オプションの取引で1億円を超す資産をつくった異色の投資家は次のように話す。

「足元ではオプションと先物の取引を組み合わせて、相場が狭いレンジで推移して大きく動かない場合に利益が出るポジションを組んでいる。大統領選後に相場が大きく動く事態に備えて、直前にこのポジションを縮小する」

折しも坂本さんに取材した直後の10月22日から26日にかけてマザーズは大きく調整。急落した東証マザーズ指数先物の売買を一時中断する措置(サーキット・ブレーカー)も発動された。株の持ち高を減らすという選択肢を取らない場合でも、坂本さんが指摘するように、マザーズの売買動向や企業の四半期決算をしっかりとチェックしていくことが重要だ。

取材したスゴ腕たちの間では、今回の米大統領選を引き金に相場が急落する可能性は低いという見方が多い。しかし、だからといって彼らは警戒を解いてはいない。相場が調整する場合も視野に入れて、事前に打つ手を用意している。彼らの見立てとともに、その姿勢の柔軟性としたたかさも参考にすべきだろう。

(中野目純一)

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著者 : 日経マネー
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