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欧州経済に迫る二番底 景況感指数、4カ月ぶり不況圏

【ベルリン=石川潤】新型コロナウイルスの感染が再び広がる欧州で、景気の二番底への懸念が高まっている。IHSマークイットが23日公表したユーロ圏の10月の購買担当者景気指数(PMI)は、4カ月ぶりに好不況の境目の50を割り込んだ。危機が長期化すれば若者の失業の増加などによって国の成長力を損ない、財政にも重い負担となる。

コロナ禍で飲食店は大きな打撃を受けた(5日、パリ)=ロイター

PMIは企業の原材料の調達などを担う人の景況感をまとめた指数で、景気動向を敏感に映すとされる。ユーロ圏は総合が前月より1.0ポイント低い49.4となり、景気判断の分かれ目となる50を下回った。製造業は0.7ポイント改善の54.4だったが、サービス業が1.8ポイント悪化の46.2まで落ち込んで全体を引き下げた。

「ユーロ圏が二番底に落ち込むリスクが高まっている」(IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン氏)。2008年の金融危機では製造業の落ち込みをサービス業が下支えした。今回は製造業は堅調だが、サービス業が大きく悪化するという新しい傾向が鮮明になっている。

サービス業が追い詰められているのは、街角から人影が消え、人と人との接触が厳しく制限されたためだ。パリなどで夜間外出禁止が広がり、チェコやアイルランドのように全土での都市封鎖(ロックダウン)に再び踏み切る国も出てきた。

米グーグルが集計するスマートフォンの位置情報データによると、欧州で飲食店や小売店などへの人出は再び減り始めている。足元は危機前と比べてイタリアで2割、スペインで4割も少ない水準にある。「生き残れるかという不安と不満」(独ホテル・飲食業連盟)が膨らんでいる。

22日公表のユーロ圏の10月の消費者信頼感指数も前月より1.6ポイント低いマイナス15.5で、市場予想を上回る悪化となった。先行きの不透明感が消費者心理を冷やし始めた可能性が高い。

一方で、製造業は底割れを回避している。春には前年比で約3割低い水準に落ち込んでいたユーロ圏の生産は8月、7%減の水準まで戻した。輸出はまだ1割以上少ないが、米国向けなどが落ち込む一方で、堅調な中国向けが全体を下支えしている。

欧州経済のけん引役であるドイツの乗用車生産は4月に前年比97%減まで落ち込んだが、9月は11%減の約37万台にまで盛り返した。危機前の水準はまだ遠いが、人手不足となったフォルクスワーゲンが期間工の採用に動くなど、前向きな動きも見え始めた。

サービス業を直撃した今回の危機は、より深い傷痕を欧州経済に残す恐れがある。ユーロ圏の雇用の75%をサービス業が支えているためだ。

欧州の多くの国では、休業などで目減りした給与の大半を政府が補償する政策を導入し、失業の増加に歯止めを掛けている。それでも失業率は3月の7.2%から8月の8.1%までじりじりと上昇してきた。

危機のしわ寄せはとりわけ25歳未満の若者に向かっている。若年失業率は8月にスペインで43%、イタリアで32%、ユーロ圏全体でも18%まで高まった。若者が習熟の機会を失えば生産性の低下は避けられず、格差拡大によって政治を不安定にするリスクがある。

コロナ対策も無限に続けられるわけではない。欧州連合(EU)統計局によると、ユーロ圏では4~6月に過去最大の国内総生産(GDP)比11.6%の財政赤字が生じた。政府債務のGDP比も3月末に86.3%だったのが6月末には95.1%に跳ね上がった。

ドイツのメルケル首相は14日、春のような状況には「経済的にも対処する余裕はない」と語った。各国とも経済的な打撃の大きい大規模なロックダウンは避けたい考えだが、対策を小出しにすれば、かえって危機が長引く恐れもある。

「もっと必要ならもっとやる」。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は追加緩和も辞さない姿勢をちらつかせる。金融政策にできることは残されているのか、29日に開くECB理事会への注目も高まりつつある。

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