東南アジア、フードテック勃興 エビ培養肉や豚風植物肉

アジアBiz
2020/10/26 0:00
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東南アジアでフードテックスタートアップが相次ぎ生まれている。多様な食文化を背景にエビの培養肉や豚肉風の植物肉など様々な嗜好に対応する。既に人工肉が流通する米国と比べて創業間もない企業が多いが、域内の人口は6億人と米国の約2倍の巨大市場であり、東南アジア発スタートアップは大きく成長する可能性を秘めている。

マレーシアのフューチャー・フーズの植物肉を使ったハンバーガー(17日、バンコク)

マレーシアのフューチャー・フーズの植物肉を使ったハンバーガー(17日、バンコク)

エビの培養肉開発を手掛けるショーク・ミーツ(シンガポール)はこのほど、1260万ドル(約13億円)を調達した。資金をパイロットプラントの建設に充て、2022年のエビ培養肉の商品化を目指す。培養肉をエビの形に整えた「3Dエビ」や、ロブスターやカニの培養肉の研究も進め、シンガポール国内の飲茶(ヤムチャ)店などに展開する計画だ。

ショーク・ミーツは幹細胞研究者のサンディヤ・シュリラム氏らが18年に立ち上げた。甲殻類の培養肉はめずらしく、すでにエビ培養肉を使ったシューマイを開発した。出資した東洋製缶グループホールディングス(HD)は「他社にはない技術力が魅力」と話す。

世界のエビ市場は500億ドルにのぼる。エビの養殖は環境に悪影響を与えると指摘されており、培養肉で代替する。

マレーシアのフューチャー・フーズは17日、タイで植物肉の販売を始めた。バンコクで開いた植物性食品をテーマにしたアジア最大級のイベントを皮切りに、コメやヒヨコ豆、シイタケなどを使った植物肉ミンチをオンラインなどで扱う。

人工肉で先行するビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズなど米大手と異なるのは牛肉ではなく、豚肉を模した商品を主力とした点。食品科学者が研究開発し、肉の味と食感を追求した。リム・ジン・イン最高執行責任者(COO)は「味が良ければ消費者に受け入れられる」と話す。

フューチャー・フーズは18年の設立。ビーガン(完全菜食主義者)対応の人工肉としてシンガポールの飲食店などに供給している。

タイのエデンアグリテックは食品を劣化から守る可食フィルムを開発する

タイのエデンアグリテックは食品を劣化から守る可食フィルムを開発する

「世界の台所」を国策の一つに掲げるタイでもフードテックが芽吹く。エデンアグリテックは野菜や果物の鮮度を保つ食べられるフィルムを開発する。液体を食品に吹きかけると、表面で薄いフィルムが形成され、傷みの原因となる微生物やエチレンガスの発生を抑える仕組み。消費期限を最大3倍に延ばす。

フィルムの元となる液体は薄い黄色だが、食品の味や香りをほとんど損なわないという。果物の抽出物などから作るため、そのまま食べられるのが売りだ。すでにタイの食品輸出会社などで使われており、「今後、東南アジアで販売を拡大していく」と話す。

同社によると、タイ国内で生産される農作物の17%が廃棄されている。消費期限を延ばして食品ロスの減少につなげる。

米投資会社アグファンダーによると、19年の東南アジアの食品や農業分野のスタートアップ投資額は4億2300万ドルと5年で5倍に増えた。新型コロナウイルス禍で世界経済が停滞する中でも勢いは衰えず、20年1~6月期の投資額は約3億5000万ドルに達したと推測する。

同社アジア太平洋地域リサーチャー、ジャック・エリス氏は「新型コロナによる都市封鎖の期間中、東南アジアでは健康的な植物性食品への関心が高まった」と話す。米国に比べると創業間もない企業が多く、投資規模はまだ20分の1程度にとどまるが「19年には米国のフードテックへの投資が前の年をわずかに下回ったのに対し、東南アは33%増えた」と今後も高成長が続くと予想する。

フードテックを育む環境も整う。30年までに食料自給率を3割まで引き上げる目標を掲げるシンガポールは6月、約5500万シンガポールドル(約42億7千万円)を食の技術革新に投じる方針を打ち出した。タイでは19年からツナ缶世界最大手のタイ・ユニオン・グループが国家イノベーション庁(NIA)などと組み、資金や技術面でフードテック企業を支援する。

国連の推計によると、世界の人口は50年に約100億人に達する見通し。増えた人口をまかなうためには食料生産を10年比で5割以上増やさなければならないとされる。食品ロスの低減や次世代タンパク質の開発は世界の急務となっている。

(バンコク=岸本まりみ、永森拓馬)

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