「中断」地籍調査に43億円 登記未反映、検査院調べ
土地の所有者や境界を画定させるために行う「地籍調査」の事業を会計検査院が調べたところ、調査結果をまとめたのに、その後に必要な認証請求に進まず中断しているケースが相次いでいたことが分かった。調査結果が登記簿に反映されないことになり、こうした事例に国が交付した負担金は総額約43億3千万円に上る。検査院は事業を所管する国土交通省に改善を求めた。
地籍調査は、土地取引の円滑化を目的に1951年に開始。主に市町村が、区画ごとに所有者を特定し、原則立ち会いの下で境界を確認する。測量後に土地の情報をまとめた地籍簿と地籍図を作り、都道府県に認証請求して認められれば登記簿などが更新される。
未実施の場合、再開発や災害復旧の支障になるが、境界確認に時間や手間がかかるほか、立ち会いに住民の協力を得にくいこともあり、全国の進捗率は2019年度末時点で52%にとどまる。
検査院は、18年度までの5年間に実施された地籍調査のうち、地籍図などの作製が終わっているのに都道府県への認証請求が行われていない16県の約150市町村の522事業を調べた。
その結果、調査地区の全てで境界確認ができているのに認証を受けないまま放置しているのが271事業あった。調査地区の大部分で境界確認ができているのに、一部で住民の意見の食い違いがあることなどを理由に手続きを進めていない事例も233事業あった。認証請求しないまま3年以上経過していた事例もあった。
検査院は、国交省に対し、地籍図の作製から認証請求までの期間を定めることや、一部で地権者から境界の確認が得られない場合でも認証請求することなどを求めた。
国交省は「地籍図と地籍簿を作製した時点で調査は完了しているが、より成果を高めるために認証請求は3カ月をめどに行うよう都道府県に通知した」とコメントした。