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コロナ乗り越え世界と交流図る 五輪前に東京の学生

池上彰と考える東京の未来 立教大・昭和女子大の学生と語る

立教大で開かれたシンポジウム「池上彰と考える東京の未来~世界をトモダチに」(10日、東京都豊島区)

2021年夏の東京五輪・パラリンピックに向け、シンポジウム「池上彰と考える東京の未来~世界をトモダチに」(日本経済新聞社オリンピック・パラリンピック推進室主催)が10月10日、東京・豊島の立教大で開かれた。ジャーナリストの池上彰氏が立教大と昭和女子大の学生と、異文化と触れあう楽しさや、新型コロナ禍の影響などについて意見を交わし、オンラインで800人が参加した。(文中敬称略)

パネル登壇者
〇ジャーナリストで立教大客員教授、池上彰氏
〇タレント、パトリック・ハーラン氏
〇ジャーナリスト、増田ユリヤ氏
<立教大>〇富永僚真さん(2年) 〇石川奈実さん(4年) 〇リョウ・ヘイエイさん(3年、台湾) 〇ロン・マーティン准教授
<昭和女子大>〇荒川真穂さん(4年) 〇倉田幸奈さん(4年) 〇ロス・ロムオンさん(交換留学生、カンボジアからリモートで参加) 〇蔵方充洋主任

オンラインで800人が参加

富永 立教大では「English Camp」という子供たちと大学生、留学生が一緒になって作るプログラムを開催している。歌を歌ったり、ダンスをしたり、一緒に楽しみながら英語で活動する。最初はなかなかコミュニケーション取れないところを、ジェスチャーをしたり、写真や絵を使ったり。試行錯誤により面白いプログラムになっていると思う。

倉田 昭和女子大では「CHAWA(茶輪)」という、学内の日本人学生と留学生が交流する場やイベントを企画・運営している。昨年度は月1回を目安にイベントを開催した。クッキングパーティーやお泊まりイベント、運動会などを行い、留学生と日本人学生が交流する初めの一歩になれたらいいと思う。

池上 今年上半期で苦しかった、困ったことは。

<立教大>左から富永さん、石川さん、リョウさん、マーティン准教授

富永 全授業がオンラインで友達と会えず、教授に気軽に質問できず、寂しい気持ちになった学生は多かったと思う。

リョウ 台湾でリモートの授業を受けたが全部のやり取りがメールで、敬語も気を使うから緊張してつらかった。

石川 オンライン授業は目と腰に負担がかかってしまった。

マーティン ビデオ会議ツール「Zoom」を使った授業は対面と準備も違うし、顔もあまり見えない。質問も来ないし、やり方が難しい。

蔵方 入学したばかりの留学生が異国の地で学校にも行けない、友達もつくれない状況でかなり大変だったと思う。一人ひとりに寄り添ったケアはしたいが、若者同士のつながりが一番のメンタルケアだと思う。

ハーラン 日本に来てショックだったことは。

ロス 日本人はあいさつに厳しい。アルバイトをしていたとき、人がいない洗い場に向かって「お願いします」と言っていたが、何でかなと思った。

リョウ あいさつが重要なのは教えられていたが、長いのがちょっと慣れなくて。「おはようございます」も長い。

池上 コロナ禍で活動することの課題は。

<昭和女子大>左から荒川さん、倉田さん、ロスさん、蔵方主任

荒川 オンラインイベントは対面よりも雰囲気のつかみ方が難しかったり、タイムラグがあったり。顔を見て話すことに安心感があるので、そういうところが寂しく、課題と感じた。

倉田 今学期は少しずつ学校に入れるようになっているので、CHAWAの対面のイベントも再開してオンラインと並行して行っていく形になると思う。初対面からオンラインの人と、対面で1回会ったことがある人では全然違う。

石川 直接子供たちと関わるというのがあるので、オンラインは難しいと考えている。後輩と話すときにEnglish Campを推して、今後も参加者や、企画をする学生が途絶えないようにがんばる。

ロス 対面ができた方がいいが、コロナの状況のなか、CHAWAでイベントをつくってくれて、オンラインで友達と話ができるのはありがたい。

参加者から質問 自分の文化を大事にしつつ、他の人たちの文化を敬うには何が大切か。

荒川 相手のことを理解したり、相手の国のことを思い合ったり、そういうことが必要じゃないか。

参加者から質問 東京五輪後、若者の活躍の場も変化していくのか。

池上彰氏

池上在宅勤務ができるようになり、東京にいなくてもいい、というのがちょっと出ている。一極集中にブレーキがかかり、働き方や生き方を考えるきっかけになると思う。

参加者から質問 若者が文化や宗教の壁を越えるためには。

増田 失敗も多かったが、その蓄積によって理解につなげることが大事。どんな形でもいいから接触し、好奇心をもって付き合っていくのが大事だ。

池上 大きく飛躍するためには、一度沈み込まないとだめ。この半年は深く姿勢を低くして次にジャンプしようとするタイミングだったのでは。不自由でできないことがいっぱいあるときに、何ができるかを考えるきっかけを与えてくれたのだと思う。

◇   ◇   ◇

講演するタレントのパトリック・ハーラン氏(右)

先輩が語る、国際理解の心得

タレントのパトリック・ハーラン氏は「先輩に聞く 私とニッポン」と題して講演し、27年にわたる日本の生活で感じたことや、異文化交流の魅力について語った。(聞き手はジャーナリストの増田ユリヤ氏)

増田 来日して何年に。

パトリック・ハーラン氏

ハーラン ハーバード大を卒業し、グリークラブと一緒に来日し公演した。その後、日本にいた友達の下で就職活動して、福井県の英会話学校に就職したのが1993年秋だった。

増田 米国に帰らずに東京に出てきたのは。

ハーラン 夢だった役者を目指そうと。米国に自分のような顔は山ほどいるが日本にはなかなかいない。東京に出て行けばチャンスがあるんじゃないかと思った。

増田 東京ではどんなことを。

ハーラン 知り合いが、お笑い芸人をやればきっと話題になると(相方の)吉田真という群馬人を紹介してくれた。パックンマックンが生まれた。

増田 「お笑い」は理解できたか。

ハーラン 自分が面白いと思ったものは米国で面白いもの。日本のお客さんに受けるものは全く違う。お笑いの文化のハードルを越えるのに結構苦労した。

増田ユリヤ氏

増田 国際理解をしたい若者にアドバイスは。

ハーラン 情報収集だけでも国際的な目線を持つといい。翻訳ソフトは前に比べてはるかに良くなっている。日本と全く違うニュースが流れ、違うファッションや音楽がはやっている。

増田 大学時代は世界に目を向けることは。

ハーラン ルームメートはユダヤ教徒と黒人。グリークラブで台湾、中国、韓国、ドイツ、イスラエル、南アフリカなどのメンバーがいた。世界はこうなっているんだという発見とともに、自分の育った環境に新しい目を向けるきっかけになった。

増田 パスポートを取ったのは37歳のとき。米同時多発テロの跡をみるのが初の海外だった。若かったらもっといろんなことができたのにと思った。

ハーラン 大学時代の友は永遠の友。それが異文化の人であれば、国際交流を一生楽しめる。早いうちに友達をつくるのがポイントかもしれない。

パトリック・ハーラン 米国出身。1993年に来日し、97年にお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。テレビなどで活躍するほか、東京工業大非常勤講師も務める。

◇   ◇   ◇

<シンポジウムを終えて>

「自分と異なる考え方や価値観があることを知ってほしい」。これはパトリック・ハーラン氏と増田ユリヤ氏が自らの体験でつかんだ異文化交流への助言である。

この助言から思い出すことがあった。10カ月ほど前、昭和女子大の国際交流グループ「CHAWA(茶輪)」、立教大異文化コミュニケーション学部の英語体験教室「English Camp」の活動をそれぞれ取材し、留学生の体験を聞いたことだ。

ロス・ロムオンさんはCHAWAが開いた料理教室に参加し、ふるさとの料理や菓子のつくり方を教え合った。学生は様々な国や地域から集っていた。同世代どうしの会話に緊張感が和らぎ、打ち解けたという。シンポジウムでは、新しい友人とその母国に親近感を覚えたことをうれしそうに語っていた。

リョウ・へイエイさんは岩手県陸前高田市で開いた英語体験教室が心に刻まれている。東日本大震災の被災地への貢献という気持ちで参加していたが、現地の子供たちから震災を乗り越えてきた体験を聞き「そのたくましさに自分が勇気づけられた」という。

両大学の学生たちは今年、新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができなかった。それでも今回のシンポジウムに備えるためにオンラインでアイデアを出し合い、資料づくりをした。直接会えない仲間をつないできたのはチームの絆である。

池上彰氏はシンポジウムの最後で「いまは次の飛躍に備えて力を蓄えてほしい」と全国の若者に呼びかけていた。人生の先輩や学生たちの体験談はキャンパスから世界にトモダチをつくる貴重なヒントになるだろう。

(編集委員 倉品武文)

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