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ゴールドマン罰金3000億円 リーマン後も続く米欧銀不正

(更新)

【ニューヨーク=宮本岳則】米欧大手銀行による不祥事が続いている。米司法省など各国当局は22日、マレーシア政府系ファンド「1MDB」の汚職で資金調達に関与した米ゴールドマン・サックスに対し、総額29億ドル(約3040億円)超の制裁金を科すと発表した。リーマン危機から10年が経過しても収益優先の文化が残る。米大統領選の結果次第では風当たりが強まりそうだ。

ゴールドマンは2012~13年、1MDBの債券を引き受け、総額6億ドル以上の手数料を得た。マレーシアのナジブ元首相に近い華人実業家ジョー・ロー氏が主導し、調達した資金を不正に流用した。ゴールドマンで東南アジア事業の責任者を務めたティム・ライスナー氏は、ロー氏の不正を認識しながらも資金調達に関与。案件獲得のためにマレーシアやアラブ首長国連邦(UAE)アブダビの政府関係者に賄賂を渡していた。

「レッドフラグ(危険信号)を見過ごしたり、無視したりすることで、汚職スキームの実行を許した」。ブライアン・ラビット司法次官補代理は22日の声明でゴールドマンの内部管理体制を批判した。同社はアジア子会社が海外腐敗行為防止法に違反したことを認め、米国や英国、中国・香港、シンガポール当局と罰金の支払いで合意した。マレーシア政府とは7月に総額39億ドル相当の支払いで和解している。

1MDB事件では米欧金融機関の企業文化を巡る「古くて新しい問題」が浮き彫りになった。収益の高いビジネスを優先し、そうした案件を獲得した社員が高額のボーナスで報われる。案件を審査する内部管理部門の意見は軽視されがちだ。ゴールドマン元幹部のライスナー氏は当局の調べに対して、「法務部門に事実を隠すことは企業文化だ」と答弁した。1MDB案件は社内表彰の対象になったとされる。

2008年のリーマン・ショック後に米欧金融機関の「金もうけ主義」に社会的な批判が集まったが、その後も不祥事が後を絶たない。

JPモルガン・チェースは13年、デリバティブ(金融派生商品)取引の巨額損失が発生した問題で管理体制の強化を表明した。ところが20年に貴金属先物の価格操作で再び処分を受けた。当局から不審な取引があると照会を受けていたが、同社の動きは鈍かったという。「多額の制裁金が不祥事抑止に効果を発揮していないことは明らかだ」。金融不正に詳しい英バーミンガム大のヒュー・マッカートニー准教授はこう指摘する。

実際、当局から多額の制裁金を科されても、事業面の影響は小さい。米国では、入札への参加禁止などにつながる親会社レベルの「有罪答弁」は回避されることが多い。1MDB汚職事件でも、ゴールドマンはアジア子会社のみで有罪を認め、米親会社は3年間の「起訴猶予」で合意した。規制当局側も金融システム上、重要な銀行に厳しい制裁を加えることで経済活動に悪影響が及ぶのを警戒する。

各国の当局は実効性のある再発防止策を模索している。規制・監督当局の関係者や金融機関幹部らが非公開で集まるグループ・オブ・サーティー(G30)は18年、リーマン危機後も続く金融不祥事について報告書をまとめた。成果型ボーナスに偏った報酬体系が、社員に一線を越えさせてしまうと指摘、是正を訴えた。ニューヨーク連銀は金融機関の関係者と企業文化改革をテーマにした会合を定期的に開く。

ゴールドマンも企業風土の改革に踏み出している。デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)ら現役経営幹部の報酬カットに加え、ロイド・ブランクファイン前CEOをはじめ、1MDB問題を見過ごした歴代幹部の報酬のうち、支払いが凍結中のものを没収する。別の元幹部にも報酬の一部返納を求める。過去に遡って監督責任を厳しく問うことで、現役社員や幹部にも法令順守の徹底を迫る。

ソロモンCEOは社員に宛てた手紙で「我々は過ちから学ばなければならない」と訴えた。

11月の米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利すれば、大手金融機関への風当たりが強まりそうだ。民主党が採択した政策綱領では、違法行為に手を染めたウォール街の幹部には刑事罰を科すと明記した。議員の中には銀行不祥事について「規模が大きすぎて管理できていない」と批判する向きもある。銀行が自浄作用を働かせなければ、監督強化や規模拡大の制限などにつながる可能性がある。

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