自己資本比率、大手行で最大4.6ポイント低下 日銀試算

2020/10/22 21:24
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日銀は22日公表した金融システムリポートで、新型コロナウイルスの感染拡大が銀行経営に与える影響の分析結果をまとめた。景気の回復が滞ると、貸し倒れに備えた与信費用の増加などで大手銀行の自己資本比率が2022年度に最大4.6ポイント下がると試算した。銀行が融資へ慎重になれば、経済再生の足かせになると警鐘を鳴らした。

日銀は金融システムの安定性を評価・検証するため、同リポートを半年に1度公表している。今回は前回4月よりコロナ禍の影響を詳しく盛り込んだ。

まず挙げたのが企業の資金繰り支援策などの効果だ。政府が利子を補給する実質無利子・無担保融資や給付金などの制度を踏まえ、「円滑な金融仲介機能が維持されている」と評価した。日銀はこうした企業向けの支援策が無かった場合、赤字企業の割合が中小で40ポイント以上上昇し、およそ4分の3が赤字になると試算した。

先行きはコロナ禍の収束が見通せず不透明感が強まっている。日銀は今後の実体経済の回復速度などを4つのシナリオに分けて分析。景気の持ち直しが順調に進んだり、感染の再拡大で経済活動が厳しく制限されて停滞したりするシナリオを示した。

今後、景気の回復が遅れれば貸し倒れに備えた与信費用が一段と膨らむ。最も厳しい見通しである経済活動が停滞するリスクシナリオでは、22年度までに貸出残高に占める信用コストが国際的に展開する大手銀行で2%超、地方銀行などの国内基準行で3%超増える。大手企業に比べて中小企業の手元資金は少なく、特にコロナ禍の影響が大きい飲食や宿泊業で大幅な減収が続く見通し。先行きの収益回復が見込めなければ「廃業を選択する企業も少なくない」と指摘した。

信用コストが膨らめば、銀行の財務にも響く。リスクシナリオでは、大手銀行の自己資本比率が22年度に7.6%と19年度と比べて4.6ポイント低下すると試算。地方銀行などでは7.1%と同2.8ポイント下がるとした。いずれも健全性の基準を上回るものの、大手行ではあらかじめ自己資本を規制より厚く積む際の目安となる8.5%を下回る。

日銀は自己資本比率が低下すると、銀行が貸し出しに慎重になるリスクを警戒する。一般的に同比率が8%を下回ると、銀行は貸し出しを減らす傾向がある。日銀は景気回復が停滞するシナリオの場合、22年度に大手行の国内向け融資や地銀の貸出残高が前年を下回るとの試算も示した。

収益を支えてきた有価証券運用にも懸念が高まる。低金利で本業の融資から得る収益が低下するなか、債券や株式など有価証券を決算前に売却する「益出し」の余力が乏しくなっている。

日銀が算出した益出しの余力を示す値がマイナスになっている地銀は6月末時点で約10%と、18年度末(約3%)から大きく上昇した。信用金庫は15%がマイナスだ。世界の中央銀行による金融緩和で国債の利回りが急低下しており、リターンを求めて高リスク投資を増やせば金融システムの安定を損なう懸念もある。

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