中国、国防法を改正へ 宇宙やネット「重大な領域」
【北京=羽田野主】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は21日、国防法改正案の草案を発表した。宇宙や電磁波分野、ネット空間を「重大な安全領域」と明記した。同様の取り組みを続ける米国を念頭に、関連部隊の予算増や組織の強化に進む見通しだ。
改正案は宇宙やネット空間などの安全を守るため「国家は必要な措置をとる」と明記。中国の主権や領土だけでなく「発展の利益」が脅威にさらされた場合にも国家を総動員して事態に対処する方針を記した。米中対立の激化を意識したとみられる。
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中国軍人の「中国共産党への忠誠」も義務づけた。国家の軍隊ではなく「共産党の軍隊」としての位置づけを再確認した。改正案は早ければ年内にも可決されそうだ。
習近平(シー・ジンピン)指導部は宇宙やネット空間を米軍との競争上重要な分野と位置づけてきた。2015年には宇宙やサイバー、電子戦に関する任務を担当するとみられる「戦略支援部隊」を設立した。
法的な位置づけが整うことで、人工衛星の開発や打ち上げの加速、レーザーなどを用いた対衛星兵器の開発などが進む可能性がある。
サイバー部門のさらなる強化も進む懸念がある。日本の防衛白書によると、中国は17万5000人規模のサイバー戦部隊を擁し、そのうちサイバー攻撃部隊は3万人に上ると指摘している。米国は6千人強で、日本の自衛隊のサイバー部隊を大幅に上回る。
国防法改正案には海外での活動に積極的に関与する方針を盛り込んだ。「地球規模での安全保障に参加する」とし、海外で起きたテロ活動の鎮圧や海上での護衛活動、外国との合同訓練などに関わる方針を明記した。
海外にいる中国人や組織の安全を重視する姿勢を打ち出し「国家の海外における利益を守る」と強調した。「海外利益」を名目に人民解放軍の活動範囲が膨張する可能性がある。
米国防総省が9月に公表した「中国の軍事力に関する年次報告書(2020年版)」によると、中国は海外の軍事拠点の建設を検討したり、計画したりしているようだと分析した。
現在構えているアフリカ東部ジブチの基地に加え、ミャンマーやタイ、ケニア、タンザニアなどアジアからアフリカにかけて複数の候補国を列挙している。いずれも習氏の掲げる広域経済圏「一帯一路」構想と密接な国々で「海外利益」にからむ可能性が大きい。
習指導部は21世紀半ばをめどに米国と並ぶ世界一流の軍隊をつくるとする目標を掲げている。

3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
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