西山女流王座vs.里見四冠 女流王座戦、28日開幕
初防衛かクイーン王座か 全七冠占める2人が五番勝負

囲碁・将棋
2020/10/26 2:00
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西山朋佳女流王座(25)に里見香奈女流四冠(28)が挑む将棋の第10期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)五番勝負が28日に開幕する。昨年は西山挑戦者が里見女流王座からタイトルを奪っており、立場を入れ替えての再戦となる。奨励会の三段リーグで女性初の「棋士」を目指す西山女流王座が初防衛を果たすか、里見挑戦者が通算5期で「クイーン王座」の資格を得るか。女流七大タイトルを分け合う2人による頂上決戦だ。

■西山朋佳女流王座、試行錯誤で復調目指す

にしやま・ともか 1995年生まれ。大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年奨励会入会(6級)、15年三段、20年三段リーグで次点。現在は女流王座、女王、女流王将を併せ持つ女流三冠。女流タイトル5期。

にしやま・ともか 1995年生まれ。大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年奨励会入会(6級)、15年三段、20年三段リーグで次点。現在は女流王座、女王、女流王将を併せ持つ女流三冠。女流タイトル5期。

コロナ禍で勉強に支障が出たということはありません。研究会が増えた時期がありましたが、それが減って一人で勉強する時間が増えました。

(7勝11敗で終わった)前期の三段リーグは、分かりやすく不調でした。7勝3敗の時点で変な感覚で、7勝もなんで勝ったか分からない内容が多かった。(そこからの)8連敗は人生で初めてかも。終盤になった将棋がないんです。中盤で終わってしまって。形勢判断がおかしい。考え方の問題なんでしょう。

(通常なら昇段圏の14勝4敗で次点となった)前の期で半分終わったみたいな感覚で、それからは毎日「14勝したのに」と。将棋はメンタルだなと、改めて思いました。羽生先生(善治九段)が言われてますが、不調があまり続くとそれが実力になってしまうので、生活リズムに気をつけたり練習将棋を指す機会を増やしたり、試行錯誤します。

里見さんとは、今年も必ずどこかで戦うことになると思っていました。自分の中で課題を持って、毎回指されている。最近も充実した内容で勝たれていて、改めて強敵だなと感じます。予想はしていましたが、改めて実現すると緊張感がありますね。またこの時期が始まるんだなと。

女流王将戦と並行しての番勝負ですが、去年もそんな状況をいい感じで乗り切れた。心配はしていません。10月中にいい状態に戻して五番勝負を迎えられたらと思います。

コロナ禍の下でのタイトル戦はもう2回経験しています。解説会はありませんが、ファンの方は中継などで見てくれる。安心して挑めます。

■里見香奈女流四冠、ギリギリの勝負に幸せ

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森ケイ二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段、18年退会。女流タイトル41期。現在は清麗、女流名人、女流王位、倉敷藤花を併せ持つ女流四冠。女流六段。

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森ケイ二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段、18年退会。女流タイトル41期。現在は清麗、女流名人、女流王位、倉敷藤花を併せ持つ女流四冠。女流六段。

本戦トーナメントでは中沢沙耶女流初段との1回戦が危なかった。中盤まではよかったが、玉頭周りの対応を誤って一時は負けを覚悟。1分将棋になってから中沢さんにミスが出て命拾いしました。

その頃からやや調子を崩し感覚がずれていたところがありましたが、ここへ来て普通の状態に戻ってきた。伊藤沙恵女流三段との挑戦者決定戦は力戦型で難しい戦いでしたが、何とか自分の力を出し、押し切れた感じがします。

昨年の番勝負は中終盤に私が間違えることが多く、力の差を感じた。他棋戦も含め西山さんと色々な将棋を指し、自分の弱点が具体的に見えてきた。弱点克服の勉強を始める、いいきっかけになった。

生活面では大きな変化はありません。コロナで外出する機会は減りましたが、むしろ健康管理により気を使うようになったせいか体調はいい。勉強は基本、自宅。ネット対局はあまりせず、AI(人工知能)の力も借りつつ盤に駒を並べて勉強しています。

力戦も、ゆっくりした将棋も指しこなす西山さんは大変な強敵。厳しい戦いになるのは間違いありませんが、大きな舞台でギリギリの勝負ができるのは幸せなこと。事前の準備も対局中も気持ちを切らさず、自分の持っている力を出し切りたい。勝ち負けや周りの評価より、自分なりの手ごたえをつかんで、終わった後の充実感を味わいたい。

今年は恒例の大盤解説会などを開けないようで、ファンの方々との接点が得られないのは残念です。その分いい棋譜を残すべく、自分の将棋に集中したいと考えています。

■展望を聞く 西山、男性圧倒のすごみ 里見、戦術の幅が広がる

五番勝負の展望を、斎藤慎太郎八段(27)と加藤桃子女流三段(25)に聞いた。

――里見が挑戦者に名乗りを上げました。

斎藤慎太郎八段

斎藤慎太郎八段

斎藤 印象に残ったのは挑戦者決定戦。自玉が危険な終盤を、時間が切迫する中でも乗り切れる「受け」の正確さを感じた。

加藤 駒組みではリードされたかに見えたが、さばき合ってからは危なげなかった。強い勝ち方に見えた。

――最近の里見の将棋をどう見ますか。

斎藤 振り飛車党を相手に相振り飛車で対抗することが増え、その中で序盤に工夫も見せている。男性棋士にも勝っており、かなり自信を持っているのでは。

加藤 相振り飛車は力戦と見られがちだが、里見の経験値は高く研究も進んでいて、「里見流」と呼べるような形もいくつかできている。これまで対抗型中心だったが、戦型選択の幅はだいぶ広がっている。

――一方の西山の調子をどう見ますか。

斎藤 新人王戦で青嶋未来六段得意の穴熊を攻略した指し回しにはすごみさえ感じた。他の男性棋戦でも相変わらずいい将棋を指していて勝率も高い。三段リーグでは後半、失速してしまったが、前の期で次点になりマークされた結果だろう。気持ちを切り替えられれば成績も上がっていくと思う。心配はしていない。

加藤桃子女流三段

加藤桃子女流三段

加藤 出られる女流棋戦のタイトルを全て保持しているため調子を見極められるのは男性棋戦だけだが、男性棋士を相手にのびのび指し、「殴り合い」のような将棋でよく勝っている。調子が悪いとは思えない。

――戦型予想は。

斎藤 間違いなく飛車を振るのが西山。得意の三間飛車が中心だろう。昨年は里見が居飛車に構え全て対抗型になったが、今期はガラリと変わって相振り飛車のシリーズになりそう。

加藤 西山後手なら三間飛車だろうが、先手なら極めて勝率の高い中飛車もあるのでは。里見がどう対応するか。相振りの研究成果も見てみたいが、熟知する対抗型にもっていくことも十分に考えられる。

――どんな将棋になりそうですか。

加藤 西山は厚みのある振り飛車党。自玉周りの読みの速さに定評があり、詰まないと見れば相手の玉頭に殺到する。一方の里見は最近、受け重視になっているようだ。相手の攻めを切らすか、速度計算しやすい形に持っていって攻める形。どちらが自分の勝ちパターンに持っていけるか。

斎藤 両者とも優勢になったらそのまま押し切る強さがある。そこに至るまでの序中盤がポイント。お互いに指し慣れた構えや攻めの形を作れるか、持ち時間に余裕が持てるかどうか。

――勝敗予想を。

斎藤 里見は昨年の女流王座戦で敗れ、西山との対戦成績で差をつけられてしまった。タイトル奪回への強い思いは容易に想像できるし、序盤戦術の幅を広げていることもプラス。里見の3勝2敗とみる。

加藤 西山は棋聖戦で男性棋士を破り2次予選に進出。コロナ禍で日程がタイトになっている中で、これだけ勝てるのはすごい。トップクラスの先生と練習将棋を指しているという話も聞く。ハイレベルな戦いを3勝2敗で西山が制すると予想する。=文中敬称略

◇ ◇ ◇

■上位勢の高い安定感

19歳の水町女流初段をはじめとして、若手が多く名を連ねた本戦トーナメント。中でも、22歳の山根女流二段はタイトル経験者の上田女流四段、元奨励会員の岩根女流三段を相次ぎ破ってベスト4に進出。準決勝で里見女流四冠に敗れはしたが、来期の本戦シード権を手に入れた。

一方で、上位勢の安定感も高かった。残りのベスト4進出者は、伊藤・加藤の両女流三段に前女流王座の里見女流四冠と女流王座戦でおなじみの奨励会経験者たち。伊藤女流三段は昨年、一昨年に続き3年連続で挑戦者決定戦に進出したが、またしても涙をのんだ。いまだタイトルに手は届いていないが、毎年の好成績は特筆に値する。

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