南田裕介も感心 JR九州「36ぷらす3」の畳敷き車両
南田裕介の変わる「鉄」を見にいく

会社員なのに「鉄道好き」としてなぜか有名になってしまったホリプロの南田裕介マネジャー。彼が日々変わり続ける鉄道の現場をたずねる連載。今回は10月16日から運行を開始したJR九州の新しい観光列車「36ぷらす3」の試乗会リポートの後編。(前編はこちらから)
再び車内探索へ出かけます。
3、4号車のフリースペースも驚きの発見がいっぱい


6両編成の中央の3、4号車にはフリースペースも。3号車には17年ぶりに「ビュッフェ」が復活しました。何これ!と思わず驚いてしまうのは床から壁まで銅板で豪華なこと。
客室乗務員さんに聞いてみると「ウイルスにも強いということで銅板を採用しています。ビュッフェにはその場で温めてお出しする、うどん、カレーなどアラカルトメニューもあります」。
4号車はイベントなどを行う「マルチカー」です(ページ最初の画像)。ここは従来の座席などを全て取り払い、ラウンジとしての役割もあります。
和の空間になった5~6号車座席車




改造前の787系の雰囲気を残す5~6号車は3列シートの座席タイプ。全国のみどりの窓口で取り扱うのはこのタイプのみです。その中でも6号車と個室の1号車の2両のみ、これまでの列車の概念を打ち破る「畳敷き」なのです。
これが快適。上品さと豪華さが両方合わさっています。昔のお座敷車両といえば座布団に座椅子でしたが、ちゃんとした座席に足元が畳っていうのはこれまでなかった発想。豪華リゾート旅館みたいで、シートの座り心地もしっくりきます。ちなみに5号車は様々なパターンの木の床の車内になっています。
レトロな街並みの門司港で約30分の観光停車

昼食を終えると列車は福岡県へ入り、国の重要文化財に指定されている門司港駅へ到着。ここではレトロな街並みや関門海峡の散策も楽しめます。何度も訪れている街ですが、この列車で訪問すると新たな気持ちになれるのは不思議です。
4号車マルチカーで車内イベント

門司港駅を発車後、マルチカーでは客室乗務員による車内イベントが開催されます。この日は「シュガーロード」ゆかりの「金平糖(こんぺいとう)」の紹介。金平糖の歴史などをモニターで解説。試食した味当てクイズ、名前の由来などのクイズもあります。この車内イベント・体験は各コース予約制(有料・無料があり)で行われています。
その後は、日曜コース「青の路」の旅を振り返る5つのエピソード紹介。5日間乗ると35のエピソードに触れることができます。
プロジェクトリーダーが語る思い

5時間に及ぶ旅も、間もなくゴールが迫ってきました。試乗会に乗り合わせていたJR九州のプロジェクトリーダー、鉄道事業本部営業部営業課(新D&S列車プロジェクト)担当課長の堀篤史さんに、この列車のポイントを改めて聞いてみました。
――今回のプロジェクトのポイントを教えてください。
「水戸岡(鋭治)先生の素晴らしい車両、地域のおもてなし、客室乗務員が30年あまり積み重ねてきた車内サービスの3つです」
――僕はこの車両、運行スタイル、元からある九州の観光資源の3つの柱だと思っています。
「さすがですね!」
――今回あえて787系をリニューアルされた点、かえって足かせになっているかと思いますが、そのあたりはいかがですか。
「787系という車両は当社の看板列車で、これを使いたいという思いがプロジェクトの立ち上がる前からあり、それがようやく結実しました。私も初任地が鹿児島でしたので思い入れがある車両で、九州の皆様にもなじみがある車両だと思っています。この車両をPRすることによって九州へ来ていただき、来ていただいた際は九州を存分に周遊していただきたいなぁと思っています」
旅の終わりは「粋な計らい」の豪華共演


ゴールの博多駅に到着。この日と翌週の2回限定で7周年を迎えた先輩クルーズトレイン「ななつ星in九州」と並ぶサプライズ。到着番線や時刻をやりくりして実現させたそうです。
両方とも輝きがあって荘厳ですね。ななつ星から見たら、おっ若者きたな~って感じでしょうか。
今回、めちゃくちゃ楽しい旅でした。ぜひ、5日間通しで乗って九州一周してみたいし、四季折々の変化も体験してみたいです。
人と触れ合い、車内で知識を深めるなど、自分で体験したことは思い出になり、絶対忘れないと思います。以前、水戸岡先生にインタビューした時に「気づきが大事です」と言われたのですが、今回の旅でたくさんの発見があったことは良かったと思います。
九州が手をとりあって、この列車を盛り上げていこうというパワーが感じられました。そして地元で列車が走ることに対して「おもてなし」の心で接してくれるみなさんの気持ちが伝わってきて、鉄道と地域の間には切れない縁があるのだと感じました。地元のみなさん、特に子供たちが旗を振ってくれたのが泣けました。
曜日で運行区間を変えて5日間で九州一周するという、これまでなかったコンセプト。2020年に九州でまた一つ、列車の旅のスタイルに「革命」が起きました。私はその瞬間をしかと見届けることができました。今後の九州の旅に、さらに厚みが出ると思います。
この運行スタイルがスタンダードになって全国的に色々な展開が生まれていってほしい。「36ぷらす3」も車両編成が増えて、ますます利用しやすくなっていくことを祈ります。
(写真 崎戸秀樹)
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