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テスラEV、稼ぐ力向上 「排出枠」依存脱却へ

(更新)
テスラが19年末に稼働させた中国・上海市の新工場=ロイター

米電気自動車(EV)メーカー、テスラの利益の質が改善している。21日に発表した2020年7~9月期決算は最終利益が3億3100万ドル(約345億円)と前年同期の2.3倍に伸びた。環境規制に伴う排出枠販売益という「副収入」に頼らなくても本業で稼ぐ力が高まっている。自動車大手が不採算のEV事業に苦しむなか、量産体制が軌道に乗り始めた。

「テスラの将来についてきょうほど楽観的になったことはない」。5四半期連続で最終黒字を保った7~9月期の決算発表で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の声はいつになく晴れやかだった。新型コロナウイルスの感染拡大局面からいちはやく抜け出した中国でEVの販売を伸ばし、売上高は87億7100万ドルと39%増えた。

これまで環境規制に助けられてきた利益の質も改善した。ガソリン車メーカーは一定割合のエコカー販売を義務づける米カリフォルニア州や欧州の規制に適合するため、EV専業のテスラから余った温暖化ガス排出枠(クレジット)を購入している。規制強化に伴い売買額は増加傾向にあり、テスラは20年4~6月期決算では4億2800万ドルのクレジット売却益を計上することで1億400万ドルの最終黒字を確保した。

7~9月期決算でも3億9700万ドルのクレジット売却益が出たが、それを差し引いても最終損益はほぼトントンとなる水準にまで収益体質は改善した。売上高営業利益率は9.2%と前年同期の2倍超に高まり、本業のEVの生産と販売によって稼ぐ力を蓄えつつある。

ザッカリー・カークホーン最高財務責任者(CFO)が「コスト削減戦略の中心的な要素だ」と位置づけるのが、生産のグローバル化だ。

19年末に米国外で初となる完成車工場が中国・上海市で稼働し、それまで50%未満だったテスラ車の現地生産比率は70%まで高まった。部品の輸入コストを抑え、同国での原価低減が一気に進んだとされる。

EV原価の3割を占めるとされるリチウムイオン電池では、同国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)と調達契約を結んだ。テスラは米ネバダ州でパナソニックと巨大電池工場を共同運営するが、中国では中国製の利用を増やしている。

電池の利益率改善は今後も進める。9月には、これまで外部から調達していた「セル」と呼ぶ基幹部品についても内製化すると発表した。22年にはEV140万台分に相当する年間100ギガ(ギガは10億)ワット時のセルを自社生産する。現在のパナソニックからの購入量の約3倍で、量産効果でコストダウンを狙う。

自社生産するセルについては設計を大幅に見直すほか、溶剤を使わずに電極を成型する技術などを確立し、製造コストを現在の半分以下に抑える。製造工程も簡略になり、投資額は従来の3分の1以下で済むという。

カリフォルニア州が35年までにガソリン車の新規販売を禁止する方針を打ち出すなど、自動車業界の中でのテスラへの追い風はさらに強まる。株価は過去1年で株式分割を考慮した実質ベースで8倍超に伸びた。20年の世界販売の目標は50万台と自動車大手の20分の1程度。だが、21日の終値ベースの時価総額(3938億ドル)はトヨタ自動車と独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の時価総額の合算値(約3500億ドル)を上回る。

懸念は徹底したイノベーションにこだわる経営トップ個人への行きすぎた依存だ。17年から18年にかけ、米カリフォルニア州の工場でロボットによる自動化を追求しすぎたためにモデル3の量産が難航し、週ごとに約1億ドルの資金流出が続く倒産危機に見舞われた。社内外の取締役は今もマスク氏に忠実とされ、非現実的な計画にブレーキをかけるガバナンス体制にはなっていない。

既存メーカー、採算確保に苦戦


 既存の自動車メーカーもEV投入を加速しているが、まだ利益を出せる会社は出ていない。トヨタ自動車の幹部は「現時点では電池価格の高さもあり売れば売るほど赤字になる」と語る。ホンダの幹部も「電池が高く全然もうからない。ブレークスルーがない限り、やせ我慢大会」と言う。
 赤字でも環境規制の罰金支払いを避ける利点はあるとして、EVを販売するのが現状だ。
 米ゴールドマン・サックス証券によれば、一般的なガソリンエンジン車の駆動系部品システムのコストは4700ドル(約49万円)であるのに対し、EVのコストは1万2000ドルと大幅に増える。このうち1万ドルは電池だ。このため平均単価が2.5万ドル前後の大衆車で多くのメーカーが黒字化できるようになるのは、電池コストが現在から3割強減る2027年までかかるとみる。
 多くの自動車メーカーは収益性を維持するため、多様な車を扱わざるを得ない。トヨタ自動車は中国や欧州の現行の環境規制には採算がとれるハイブリッド車(HV)を主軸に対応する。また、EVの赤字は利幅の大きい商用車や高級車で穴埋めすることで事業の継続をはかっている。
(シリコンバレー=白石武志、押切智義)

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