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バイデン・リフレを告げる円高進行

21日のNY市場では、2つの興味深い現象が見られた。

まず、債券市場で米10年債利回りが0.82%に上昇したのに、外為市場では1ドル=104円台半ばまで円が急伸したこと。

次に、商品市場では、LME(ロンドン金属取引所)で銅価格(3か月先物)が1トン6964ドルと2018年6月以来の高値をつけたこと。金も1オンス1920ドルまで上がったが、銅の上昇スピードのほうが速い。

銅は産業用メタルの代表格で純粋なコモディティーだが、金はコモディティーとマネーの二面性を持つ。それゆえ、先行き景況感が不透明な市場環境では、金銅比価が注目され、銅のほうが割高になると、実体経済好転の兆しと見られる。

この2つの現象の背景は、議会でもめている2兆ドル規模の米国追加財政支援策に今なおいちるの望みが残ること。さらに、バイデン政権誕生の確率が高まり、1兆ドル規模のグリーンエネルギー関連主体のインフラ投資が期待できることだ。

商品市場の視点では、風力発電から電気自動車まで銅の用途は多いので、バイデン政権となれば、需要急増が見込まれる。さらに、中国が最大消費国だが、習近平氏の「2060年に二酸化炭素(CO2)排出ゼロ」目標のもとで、国家的備蓄を増やしているとされる。

いっぽう、債券市場では、バイデン政権の大型インフラ投資を先取りして、ドル金利が上昇している(債券が売られている)。

外為市場では、特にNY市場で、米ドルが「低リスク通貨」とされているので、財政主導でリスクオンの兆しが出ると、売られやすい。ちなみに昨日の場合は、ブレグジット交渉の進展が見られ、ポンドとユーロが買われたこともドル売りを誘発した。

かくして、バイデン氏当選を前提とした「リフレ・トレード」にヘッジファンドの一部が動き始めた。

前回の大統領選挙では事前予測を外している人が多いなかで「大声では言えないが、じわり、バイデン・モードに運用配分を切り替え」との声が聞こえてくる。

なお、市場の注目は、米10年債利回りが心理的節目とされる1%の大台を突破する可能性だ。現在の0.8%台から1%への上昇は、ゼロ金利時代ゆえ、債券市場ではかなりの「イールド急騰」と見なされる。

それが1%までなら、健全な経済回復を映す金利上昇と解釈されよう。しかし1%を超え続騰となると、大型財政出動に伴う米国債の大増発懸念が市場内で頭をもたげる展開も視野に入り、株式市場も警戒モードに入るだろう。米連邦準備理事会(FRB)も金利上昇を抑え込む方向に動くシナリオが考えられる。その場合には、残る金融政策ツールは限られているが、量的緩和で相対的に長期国債の購入割合を増やすことが選択肢として浮上しよう。

かくして、大統領選前にすでにマーケット内では潮目の変化が見られる。

そのなかで、円がトバッチリで買われていることが、日本の株式市場では警戒視されよう。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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