中国、医薬企業の営業をITが代替 新興が開発

医薬関連マーケティングのデジタル化を手がける中国の「悦米科技(YUEMIA)」がプレシリーズAで1000万元(約1億6000万円)規模の資金を調達した。出資者は「開域集団(CUE Group)」だ。

悦米科技は主にバイオテクノロジー分野に照準を当て、マーケティング業務をデジタル化させる製品やサービスを通じて製薬・医療機器メーカーの学術広報業務を効率化し、マーケティングコストを下げる支援を行う。
製薬・医療機器業界ではマーケティング業務のデジタル化が大きな潮流となっている。これまではMR(医薬情報担当者)が一手に担ってきた領域だが、従来の方法では大きな人的リソースを割く必要があり、多くの企業ではマーケティング費用が総売上高の30%以上を占めてきた。「MRは医者と同じ数だけ存在する」とまで言われてきたのだ。
近年になって医薬品業界改革が徐々に進み、とくに診断群分類別包括評価方式(DPC)の採用や集中購買促進政策などが次々と打ち出されたことによって、企業ではマーケティングコストの削減やコンプライアンスといった課題に真剣に向き合うこととなった。

悦米科技は早期に同分野に参入しており、心臓ペースメーカーを主力とする「メドトロニック」、米製薬大手「アボット・ラボラトリーズ」、中国製薬大手「ハンルイ医薬(恒瑞医薬)」など60以上の大手企業を顧客としている。年間100以上のプロジェクトを手がけ、年平均50%超えの成長率を維持する。
創業者の喬明輝氏は「医薬関連マーケティングの特徴は、購入を判断する者と、実際に製品を使う者が分かれていることだ。つまり、意思決定者は医師で使用者は患者だ。さらに国が深く管理に関わっていることもあり、コンプライアンスが強く求められる。マーケティングでも学術的情報を伝える必要がある」と述べている。
そこで同社が打ち出したソリューションは「システム+サービス」のかけ合わせだ。システムはマーケティング業務デジタル化プラットフォームや学術会議管理システム、データ管理システムなどがSaaS、PaaS形式で提供される。サービスはオンライン学術会議、手術のライブ中継、カルテ管理などを手がける。顧客とシステムの接触機会を増やし、製品と顧客企業の結びつきを強め、事業規模の拡大につなげるのが目的だ。
市場全体を見渡せば、業界のリーディングカンパニーとして挙げられるのが米国企業の「ヴィーバ・システムズ」だ。すでにニューヨーク市場へ上場し、時価総額も400億ドル(約4兆2300億円)となっている。同社も中国事業を展開しており、主にクラウドベースのCRM(顧客関係管理)システムを提供している。これに対して悦米科技はシステムだけではなく、サービスも重視している。喬氏はサービスに重点を置く理由として、こうしたビジネスモデルがより中国市場に適している点を挙げ、将来的に5GやAIが成長してきたときには国内企業が外資企業を逆転できる可能性も見据えている。
同社の収益源はシステムの年間使用料、カスタマイズ料、運用・メンテナンス料だ。サービスは内容、リソースと人材の投入具合によって利用料を設定しており、1年後にはサービスからの収益がシステムからの収益を越えると予想している。
今回の資金調達後、同社は製品やサービスの最適化を続けるとともに、販売体制も拡大していく計画で、すでにシリーズAでの資金調達も準備中だ。
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