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40歳男性「家賃がもったいない、買った方がいい?」

Dr.マネーお悩み外来 Vol.13

お金の悩みは千差万別。でも、ご安心ください。解決策は必ずあります。あなたが悩みを解決し、上手にお金と付き合って、より豊かな人生が送れるようお手伝いいたします。

Case7: 本日は会社員のGさん(40歳)の住宅購入についてのご相談です。Gさんは「家賃を支払うなら、いっそ家を買った方がいいのではないか」と考えています。妻(37歳)は会社員、長女(7歳)、長男(5歳)の4人家族。現在の家賃は14万円です。

Gさん 在宅勤務が増えて手狭なので、思い切って家を買おうと思っています。先日、良い物件を見つけて内覧に行ってきました。物件価格4700万円の新築一戸建てです。頭金を200万円とし、4500万円を借り入れた場合のローン返済をシミュレーションしてもらいました。変動金利だと毎月返済額は約11万7000円。今の家賃よりも低いのに、持ち家が手に入ります。年間返済額は約140万円で世帯年収が820万円ですから、目安とされている2割弱ですし、無理な計画ではないように思っています。

白鳥 変動金利で35年ローンですか。シミュレーションした返済計画はこのままずっと金利が変わらなければ、ということですね。まず変動金利型の一般的な仕組みについてお伝えしますね。

(1)市場金利が上昇すると、返済額は大きくなる。

(2)年2回の金利の見直しがあるが、仮に金利が上がっても返済額は5年間変わらない。

(3)5年経過し、金利上昇を受けて返済額を再計算するとき、返済額は125%までしか上がらない。

つまり今後、金利上昇局面に転じれば、元本はなかなか減らないことになります。返済期間が終わっても元本が残っている場合、一括返済しなければなりません。これを避けるためには、金利が上がる前に機動的に、なるべく低い金利の固定型に借り換える必要があります。

それはちょっと難しいと考えるなら、いまは超低金利なので、今こそ全期間固定金利にする方が安心です。

さて、住宅ローンを長期で借りる人が増えています。問題は、退職後も住宅ローンが続くことです。「退職一時金で一括返済すればいい」と考えている人も多いですが、退職一時金は長く続く老後の生活費として大切な資金でもあります。住宅ローンを組むときには、長期的なライフプランをふまえた堅実な計画が必要です。

まず、考えるべきは、「ローン返済をしながら必要貯蓄額がためられるか」です。

Gさんの今後のライフプランを考えると、2人の子どもの教育費をつくりながら住宅ローンを支払い、さらに老後資金をつくっていく必要があります。「人生設計の基本公式」で計算してみましょう。必要な数字はこちらです。

    「人生設計の基本公式」についてはこちらをご覧ください。

子供は2人とも理系の大学に進学させたいと考えているため、教育費は合計1600万円とします。さらに、住宅購入の頭金と諸費用で200万円の予定ということですので、現在の貯蓄額800万円から引くと現在貯蓄額(A))は「-1000万円」です。

基本公式で計算したところ、必要貯蓄率は約16%になりました。これを守れば、教育費をまかない、老後も月額生活費約29万円を確保できます。退職一時金は現段階では考慮していませんので、もう少し余裕が生まれるかもしれません。

必要貯蓄額は、現在の手取り年収620万円で計算すると約99万円です。手取り年収から、必要貯蓄額と年間の臨時支出予算30万円を引くと、生活費として自由に使えるのは491万円、月額約41万円です。

さて、将来の返済額が変わるかもしれない変動金利型では計画が立てにくいので、全期間固定金利型で、借入期間を25年、30年、35年として返済額を試算してみました。金利は頭金がない、あるいは1割程度で9割超を借り入れる場合で最も多い1.56%(2020年10月)としました。

毎月の返済額は、表のように、借入期間によって変わります。仮に、毎月返済額が最も低い35年間とすると年間の返済額は約167万円になり、手取り額の27%を占めます。Gさんは子供の教育にも妥協したくないといいます。今後、塾代など必要になった場合、やっていけるでしょうか?

また、60歳時点の残高が1400万円というのも気になります。75歳まで毎月約14万円のローンを払い続けることができるでしょうか?

65歳以降の老後生活費は、今後、必要貯蓄率を守った場合、年金も入れて29万円の予定です。

60歳時の残高をゼロにしようと思うと、25年返済で月額約18万円の支払いになります。手取り年収に対する年間支払額の比率は35%、明らかに物件価格が高すぎることがわかります。老後の生活レベルを引き下げることでローン返済にお金を回すこともできますが、慎重に考えたいものです。

頭金が2割以上あれば、金利をさらに引き下げてくれる場合もありますので、購入時期をふくめ再検討してはどうでしょう。

「低金利だ」「住宅ローン減税がある」「ペアローンが組める」「頭金がなくてもOK」などに背中を押され、住宅購入を決める人も多いようです。しかし、新型コロナの影響による収入減でローン返済に窮するケースも出てきています。

ライフプランをふまえた上で、返済計画は堅実に立てましょう。きょうの処方箋です。

◇  ◇  ◇

・住宅ローンを支払いながら、必要貯蓄率を達成できる物件価格にしましょう。

・返済期間が長くなると、総支払額も大きくなります。借入期間はなるべく短くし、リタイア時には完済できるように計画を立てましょう。

ではまた2週間後に。

岩城みずほ(いわき・みずほ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など。https://www.officebenefit.com/

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