「デジタルドル」選挙が左右 バイデン陣営に推進論
共和党は慎重論

米大統領選
2020/10/20 15:06
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パウエルFRB議長はIMFとの討論会で、中央銀行が発行するデジタル通貨の研究を進める考えを表明した=ロイター

パウエルFRB議長はIMFとの討論会で、中央銀行が発行するデジタル通貨の研究を進める考えを表明した=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日、中銀デジタル通貨(CBDC)を「最先端で研究していく」と表明した。中国を意識し、消極的だった米当局の姿勢に変化がある。民主党にCBDCの推進論がある一方、共和党は民間主体の電子決済を後押しする。デジタルドルの行方は選挙結果が大きく左右しそうだ。

パウエル議長は討論会で「CBDCには決済システムを改善する利点がある」などと述べた。サイバー攻撃などのリスクを強く懸念しつつも、研究開発で「最先端にいることが責務」と強調した。同議長は19年時点では「利点よりもリスクの方が大きい」とCBDCに距離を置いていた。

背景にあるのは「デジタル人民元」だ。中国は既に実証実験を開始するなど大きく先行する。広域経済圏構想「一帯一路」の海外融資に活用し、人民元を国際化する思惑がある、と指摘される。パウエル氏も「中国のデジタル通貨が広く受け入れられれば何が起こるのか」と対中脅威論を口にしたことがある。

「デジタルドル」構想は、11月の大統領選・連邦議会選が左右しそうだ。共和党はCBDCではなく民間主体の電子決済を後押ししており、上院銀行委員会のクラポ委員長(共和)は「民間のイノベーションを阻害しない道筋が必要」と主張する。ウォール街出身のムニューシン財務長官も「パウエル議長とは、少なくとも今後5年間はCBDCの発行は不要との考えで一致している」などと強調している。

民主党は大手金融機関のデジタル通貨の発行を禁じる法案を検討するなど、姿勢は大きく異なる。バイデン陣営も7月の政策提言で「低中所得層に対して、FRBが銀行口座と即時決済システムを提供するよう働きかける」と表明した。

米国は低所得層など世帯の5.4%(約710万世帯)が民間銀行の口座を持てない。家計がFRBに決済口座を持ち、FRBがCBDCを供給すれば、口座のない低所得層も低コストで決済や送金できる。民主党が検討するのは弱者対策としてのCBDCといえる。

FRBでデジタル通貨を統括するのも、民主党に近いブレイナード理事だ。バイデン政権が誕生すれば、財務長官の筆頭候補とされる。同氏は8月の講演で「新型コロナウイルスで米国民全員が利用できる決済インフラが必要なことがはっきりした」と主張した。

もっともパウエル氏は19日の討論会で「CBDCのリスクを考慮する必要がある」とも指摘した。ドルは世界各国の外貨準備の6割を占め、サイバー攻撃などで「デジタルドル」が消滅したり取引不能になったりすれば、世界は経済危機に陥りかねない。新興・途上国で経済不安が起きれば、その国の資金はデジタルドルに一気に逃避し、通貨危機の発生を早めるリスクもある。

米国の金融システムにも影響しかねない。民間銀行と中央銀行が家計や企業にそれぞれ口座を持てば、破綻リスクのない中銀の口座に資金は集まりやすくなる。民間銀行がリスクをとって融資する「信用創造」を損ない、資本主義の活力が失われる懸念すらある。

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