「勝者不在」なら…下院が米大統領選出 議長が代行も

米大統領選
2020/10/20 23:00
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【ワシントン=鳳山太成】混乱が続く米大統領選で、勝者が決まらず議会下院が大統領を選ぶ2世紀ぶりのシナリオが検討され始めた。トランプ大統領が選挙結果を受け入れない可能性まで示唆するなか、関係者は不測の事態に身構える。

民主党のペロシ下院議長は下院選候補者にハッパをかけている=ロイター

民主党のペロシ下院議長は下院選候補者にハッパをかけている=ロイター

「大統領選の勝者が決まらない事態に備えるように」。米メディアによると、野党・民主党のペロシ下院議長は最近、党内の会合で下院選候補者にハッパをかけている。

選挙のやり方などを巡って訴訟が各州で頻発し、1月6日の集計期限までに結果が確定しない可能性が取り沙汰される。下院が大統領を選ぶ2世紀ぶりのシナリオも絵空事ではなくなってきた。

共和党のトランプ氏と民主党のバイデン前副大統領のいずれも選挙人538人のうち過半数を取れなかったり、引き分けたりしたら――。合衆国憲法修正12条によると、大統領の選出は2021年1月3日に招集される新議会に委ねられる。下院が「速やかに」選挙を実施する決まりだ。副大統領は上院が選ぶ。

前例は1800年。下院が約1週間かけて、36回目の投票で第3代のジェファーソン大統領を選んだ。禍根を残した教訓から憲法を修正し、その後に下院にもつれ込んだのは1824年の1回だけ。このときは大統領選の本戦で選挙人を最も獲得した首位が下院で敗れ、2位が勝つ波乱が起きた。

下院の選挙は50州の代表が1票ずつ投じ、過半の26票を取った候補が勝つ。現有議席のままなら共和党が26票でトランプ氏を選べる可能性があるが、票を投じるのは11月3日の大統領選と同時に投開票する改選後の下院だ。ペロシ氏は下院の議席積み増しを狙う。

節目は21年1月20日正午。憲法修正20条によりトランプ氏の任期は終わる。これまでに下院が大統領を選べなければ、上院が選んだ次期副大統領が大統領を代行する。

大統領選に参加しなかった「第3の人物」がホワイトハウスに入るシナリオもありうる。上院が副大統領も選べなければ、下院議長が大統領代行を務めると1947年の大統領継承法は規定する。現状では野党のペロシ氏が議長を務める。

テキサス大のサンフォード・レビンソン教授は「両党の支持者が対立するなか、妥協点を見いだせるとは考えにくい」と指摘する。

議会が投票せずに「密室」で決まった大混乱の大統領選挙も1876年にあった。

4州で開票結果に疑義が生じたため過半の選挙人を取った候補が生まれず、与野党が議会で協議した。民主党は共和党候補の大統領就任を認める代わりに、共和党が南北戦争後に南部に駐留していた兵士を引き揚げる「取引」が成立。未確定だった選挙人が共和党に割り当てられ、最終的に1人差で過半数を得た。

勝者が議会で決まる可能性は低いが、今年の選挙戦が現行制度の欠陥を浮き彫りにしたのは確かだ。ニューヨーク大のリチャード・ピルデス教授は「大統領選の争いを解決する組織的な仕組みがない」と問題視する。ケンタッキー大のジョシュア・ダグラス教授は選挙人ではなく「得票差で直接決める方がはるかに優れている」と話す。11月3日は超大国の民主主義のあり方も問い直す選挙になりそうだ。

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