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大統領候補の命運を左右、テレビ討論会 唯一の直接対決

ビジュアル解説 米大統領選(6)

米大統領選において、勝敗を分ける重要なイベントの一つがテレビ討論会です。候補者が直接対決する唯一の機会で、政策を主張して有権者に訴える大切な場です。各候補の一挙手一投足に注目が集まり、言葉だけでなく見た目や表情、しぐさまでもが好感度を左右するため、過去にテレビ討論会をきっかけに支持率が一変する例もありました。2020年の大統領選の最後のテレビ討論会は22日、開かれます。1960年のケネディ・ニクソン対決に始まったテレビ討論会を振り返ります。

第1回テレビ討論会 ドナルド・トランプVSジョー・バイデン(2020年)

9月29日に開かれた第1回のテレビ討論会は「史上最悪」と酷評されるものでした。非難合戦に終始し、討論というよりも口論となりました。トランプ大統領はルールや司会者を無視し、バイデン氏の発言を妨害してヤジを入れるなど、ひたすら攻撃。互いに非難の応酬が激しくなり、司会者が「両候補ともやめてください」と制する場面が何度もありました。政策などの主張よりも、相手をおとしめる発言が目立った混沌の討論会は、米国の分断を象徴するものとなってしまいました。このテレビ討論会を受けて、支持率ではバイデン氏がリードを広げています。

副大統領候補テレビ討論会 ペンスVSハリス(同)

一方、米共和党のマイク・ペンス副大統領と民主党のカマラ・ハリス副大統領候補によるテレビ討論会は、終始冷静な議論が見られ、トランプ氏とバイデン氏の討論会と対照的な内容になりました。

過去に行われたテレビ討論会を振り返ってみましょう。

ジョン・F・ケネディVSリチャード・ニクソン(1960年)

ケネディ氏(写真左)とニクソン氏(1960年)=AP

米国の大統領選の歴史上初めてのテレビ討論会となったのが、ジョン・F・ケネディ氏とリチャード・ニクソン氏による討論会です。生中継のテレビ討論会によって、討論の仕方や服装、容姿、カメラに向かって話す姿勢といったこれまであまり重視されていなかった要素が大統領選の勝敗を決するようになりました。

副大統領だったニクソン氏はホワイトハウスですでに経験を積んでいたため、支援者のほとんどが、ニクソン氏の優勢を確信していました。ところがテレビ画面に登場したケネディ氏の滑らかな弁舌とハンサムさに有権者がくぎ付けとなったのです。メーキャップした明るい表情のケネディ氏は、テレビカメラを真っすぐに見つめて有権者に支持を訴えました。

大統領選で初のテレビ討論会を開催し、議論を交わすケネディ氏(左)とニクソン氏(右)=1960年・AP

一方、メーキャップしなかったニクソン氏は冷や汗をハンカチで拭いながら討論会に臨みました。テレビカメラがとらえたニクソン氏の顔の深いしわは、有権者にケネディ氏の若さを印象づけました。政策論争では、ニクソン氏が勝っていたといわれていますが、堂々と持論を展開するケネディ氏はこの討論会で一気に大統領の椅子に近づきました。

ロナルド・レーガンVSジミー・カーター(1980年)

レーガン氏(写真左)とカーター氏(1980年)=AP

現職の大統領だったカーター氏に挑んだのがカリフォルニア州知事だったレーガン氏です。カーター氏は中東を中心に外交政策に失敗し、経済政策でも問題を多く抱えていました。劣勢を挽回すべくカーター氏は討論会で、レーガン氏を「核兵器を重視するタカ派の危険人物」という印象を有権者に与え、討論会を優勢に進めていました。ところが討論会の最後にレーガン氏が発したコメントがカーター氏に大きな打撃を与えました。

「皆さん、今よりも4年前の方が景気も国の安全も良かったと思うなら、(カーター氏ではなく)別の選択をしましょう」。そして最後に「米国を再び偉大なものにしよう」と締めくくりました。このフレーズは2016年にトランプ大統領が採用し、今ではすっかりトランプ氏支援者にはおなじみのスローガンとなっています。

ビル・クリントンVSジョージ・ブッシュ(父)(1992年)

クリントン氏(写真左)とブッシュ(父)氏(1992年)=AP

1992年のテレビ討論会は、現職のブッシュ大統領が2度も腕時計に目を落としたことが勝敗を決めました。ブッシュ氏が「早くこの場を切り上げたい」と思ったかどうかは定かではありませんが、時間に気を取られていたブッシュ氏は「国の債務が急拡大していることをどう感じていますか」との質問に満足に答えられませんでした。一方、アーカンソー州知事として工場閉鎖や労働者の失業問題に直面していたクリントン氏は、「労働者の技能向上や輸出拡大の必要性」を訴え、聴衆の多くがクリントン氏に軍配を上げました。

ジョージ・W・ブッシュVSアル・ゴア(2000年)

ブッシュ(子)氏(写真左)とゴア氏(2000年)=ロイター

ゴア氏の陣営は、副大統領を務めてきた同氏の手腕から討論会での優勢を楽観視していました。しかし、討論会では、ブッシュ氏が発言するたびに、ゴア氏がため息をついたり、あきれ顔を見せたりしました。この姿勢が有権者には傲慢とうつり、支持率で逆転されたといわれています。

ドナルド・トランプVSヒラリー・クリントン(2016年)

トランプ氏(写真左)とヒラリー氏(2016年)=ロイター

2016年の討論会は、米大統領選の歴史上、最も険悪で激しい論争になったと評価されています。ヒラリー氏は、トランプ氏の女性蔑視的な発言を糾弾。一方、トランプ氏は、夫のクリントン元大統領の女性スキャンダルに言及し、「政治史上最悪の女性蔑視」と応酬しました。

ただお互いを尊重する場面もありました。出席した有権者による「お互いの良い部分を1つあげてください」との質問に対し、ヒラリー氏は「有能で忠誠心の強い(トランプ氏の)子どもたちは素晴らしい」とだけ答えましたが、トランプ氏は「ヒラリー氏の闘争心、どんなことがあってもくじけない姿勢を尊重する」と評価しました。

討論会で握手を交わす共和党のトランプ氏(左)と民主党のヒラリー氏(2016年)=AP

記事・伴百江、野村優子(ニューヨーク) 編集・土居倫之(国際部)、鈴木輝良、樋口慧、湯沢華織、小高顕、染川祐佳里(写真映像部)、福島朗子、藤沢愛(デザイン部)

米大統領選

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