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生物の精密さ、不思議さに絶句 幻想的なミクロの世界

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

46回目となる2020年の「スモールワールド顕微鏡写真コンテスト」には、世界各国から数千点の応募作品が寄せられた。これらのなかから、科学者や写真家、ジャーナリストの審査員たちが20作品を選び、最終的にダニエル・カストラノバ氏の写真が最優秀賞に輝いた。

研究者であるカストラノバ氏がこの1枚を撮影したのは、順番を待つ同僚に顕微鏡を明け渡す直前のことだった。米メリーランド州にある国立衛生研究所ブライアント・ワインスタイン研究室の顕微鏡撮影装置は、何百枚ものフレームを撮影し、後でそれらをつなぎ合わせる。これまで見たことのない細かい部分まで明らかにしようと、カストラノバ氏はミクロの世界にフォーカスを合わせた。

レンズの下にあるのは、生きた状態でゼリーの中に入れられたゼブラフィッシュの稚魚だ。最後の一枚として、頭部からズームアウトし、全身の写真を撮影すると、すぐにそのことは忘れてしまった。2週間後、画像を貼り合わせていたカストラノバ氏は、出来上がった写真に息をのんだ。「すごくきれいに撮れているぞ、と思いました」

現実のものとは思えないその美しい写真が、後に、カストラノバ氏の研究チームに画期的な発見をもたらすことになる。ゼブラフィッシュの頭骨の中に、哺乳類のものとよく似たリンパ管があることがわかったのだ。

リンパ管は免疫系にとって重要なリンパ液を運び、アルツハイマー病を含む数多くの神経疾患に関係している。ゼブラフィッシュは繁殖サイクルが早く、稚魚は半透明の体をしているので、研究に向いている。この魚を使ってリンパ系の研究ができるなら、人間のリンパ系に関する理解が深まるだろう。

「研究や創造性、画像技術、そして専門知識が融合し、科学的発見につながることを示す作品を紹介できるのは、光栄です。今年の最優秀作品は、その最も良い例だと言えます」(コンテストを主催したニコン)

次ページ以降でも、顕微鏡写真が教えてくれるミクロの世界をご紹介しよう。普段は見えないディテールに触れると、どこかワクワクしてしまう。

(文 OLIVER WHANG、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年10月15日付の記事を再構成]

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