米財政、選挙後も悪化 両大統領候補とも巨額追加出動

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2020/10/17 22:00
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政府債務は21年度以降も一段と悪化しかねない(ワシントンの米財務省)=ロイター

政府債務は21年度以降も一段と悪化しかねない(ワシントンの米財務省)=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米財務省は16日、2020年度の財政赤字が過去最悪の3.1兆ドル(約330兆円)になったと発表した。大統領選では共和党のトランプ氏、民主党のバイデン氏がともに巨額の追加財政出動を公約に掲げる。政府債務は21年度以降も一段と悪化しかねない。

財政赤字は国内総生産(GDP)比で15%程度となり、金融危機時の09年度(9.8%)を上回って、第2次世界大戦時の20%台に迫る水準だ。新型コロナウイルス禍で巨額の財政出動に踏み切る一方、景気後退で税収も伸びなかった。

基軸通貨ドルを抱える米国の深刻な財政悪化は国際金融の波乱要素となる。しかし、11月の大統領選・連邦議会選は新型コロナに伴う経済制限で悪化した雇用の立て直しなどが争点だ。財政再建は先送りとなる。

トランプ氏は2期目の公約として、労使が社会保障財源として負担する「給与税」の引き下げを主張する。1期目には実現しなかった巨額のインフラ投資も検討する。

超党派の調査機関「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」は、トランプ氏が再選した場合、10年で1.7兆ドルの追加減税と同2.7兆ドルのインフラ投資などで、基本シナリオより財政が同4兆9500億ドルも悪化すると試算する。

バイデン氏は格差是正へ歳出積み増しを求める同党左派を取り込むため、さらに大胆な財政支出案を提示する。医療保険の支出増に10年間で2兆ドル強、インフラ投資などに4兆4500億ドル、育児・教育にも2.7兆ドルを投じる。

歳出増は過去例のない10兆ドル規模に達する。4.3兆ドルの増税で財政の悪化幅は同5.6兆ドルとなるが、トランプ氏を上回る規模だ。

CRFBによると、米連邦政府債務は民間保有分に限ればGDPの98%。現行制度のままでも高齢化による社会保障費の増大で、10年後の30年には同109%に膨らむ。トランプ氏の主張通りならばさらに同125%へ、バイデン氏ならば127%へそれぞれ大幅に増加するという。

米連邦準備理事会(FRB)によるゼロ金利政策で、連邦政府の目先の利払い負担は抑えられる。米議会予算局(CBO)の試算では、21年度の利払い費は2900億ドルと、コロナ危機前の予測(3950億ドル)よりむしろ減る。

パウエルFRB議長は「政府債務は持続可能ではないが、今は財政悪化を懸念するより、追加対策で景気を早期に立て直すべきだ」と主張する。

政府歳出が大規模になれば、想定以上に雇用や物価が回復し、FRBのゼロ金利解除が早まる可能性がある。

米ゴールドマン・サックスはゼロ金利解除の時期を25年と予測するが「大規模な財政刺激策が成立すれば、利上げ開始は23年に早まる」とみる。連邦政府も前倒しで利払い負担増を迫られ、政府債務が雪だるま式に膨らみかねない。

米次期政権に問われるのは、成長力そのものを底上げする質の高い財政出動と、際限のない歳出増に歯止めをかける社会保障改革だ。

足元の米経済の潜在成長率は1.9%と、戦後平均の3.2%から大きく低下した。住宅投資などで成長をけん引した「中間層」が衰退したことが一因で、低所得層の底上げへ格差是正策は不可欠だ。

高齢化で膨張する社会保障費を抑えるには、1人当たりで日本の3倍もかかる医療費の引き下げも必要だ。悪化し続ける米財政の将来を見定めるには、その「使い方」に注視する必要がある。

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