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投手の故障 不足ないか「投げ込み」と「走り込み」
スポーツライター 浜田昭八

2020/10/18 3:00
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プロ野球の開幕延期、コロナ禍による騒動などで選手は調整に苦労してきた。投手、打者ともに今季は例年より故障者が多いような気がする。打者はなんとか故障者を穴埋めしているが、主力投手の故障はチームの浮沈に影響することが多い。

右肘を痛めて戦線離脱した広島・大瀬良=共同

右肘を痛めて戦線離脱した広島・大瀬良=共同

典型的な例は広島。エース大瀬良大地が右肘を痛めて9月に戦列から離脱したため、チームは出遅れを取り戻す機会をつかみ損ねたままで低迷している。

オリックスがスタートから大きく出遅れたのも、開幕投手の山岡泰輔が登板2試合目の6月26日に左わき腹を痛めてしばらく戦列を離れたのが響いた。

このほか、DeNAは上茶谷大河が右肘、今永昇太が左肩を痛めたため、投手陣のやり繰りが苦しくなった。これに、ストッパー山崎康晃の不振が重なり、巨人に大きく引き離されて、ペナント争いから脱落した状態だ。

セ・リーグは今季、クライマックスシリーズ(CS)を実施しないが、パ・リーグは過密日程をモノともとせず強行の構えだ。ただ、レギュラーシーズン3位までのチームが参加する例年の方式と違い、1、2位の対戦だけで日本シリーズ出場権を争う。ソフトバンクとロッテが首位を争っているが、首位チームに与えられる1勝のアドバンテージを巡って激戦は続く。主力、中堅を問わず一人でも投手が離脱すると苦しい。

乏しかった開幕前の実戦

故障者が多いのは、開幕が遅れた時期に練習を怠ったからとは言えないだろう。どの球団も二軍の公式戦を行える立派な練習場を持っている。室内練習場も併設しており、練習不足が故障の原因と断定はできない。

ただ、調整方法には例年と大きな違いがあっただろう。開幕前のオープン戦、紅白戦、練習試合で補ったが、実戦をこなす機会が少なかった。打者にも同じハンディはあっただろうが、分業制が常識になった昨今は投手が「投げ込み」で調整するのが、あまり見られなくなった。投げる筋力を十分に鍛えないまま、激しい実戦の投球をして変調したケースが多かったのではないか。

「投げ込み」を実りの乏しい練習と批判したバレンタイン(元ロッテ監督)に対し、22シーズン投げた実績がある米田哲也(阪急など)が反論したことがあった。「日本ではしっかり投げ込んだ投手ほど長持ちをして、好成績を残している」

確かに1950年代から70年代あたりにかけては、投手は投げ込み、走り込みで鍛え、調整してきた。野球のスタイルが変わり、「肩、肘は消耗品」という考えが浸透した今では通用しない方法かもしれない。

好調を維持する巨人・菅野。その秘訣は…=共同

好調を維持する巨人・菅野。その秘訣は…=共同

それでも、合同練習がままならなかったコロナ休止の間に、投手がクラシックな方法で調整していたら、少しは故障が防げたのではないかと思う。

米田時代の阪急投手陣には、22年投げた石井茂雄、21年の足立光宏、今井雄太郎、佐藤義則、20年の梶本隆夫、山田久志ら、投げ込んで鍛えた長寿投手が多い。

投げ込みは投球術の習得に直接結びつくことが多いが、単調な走り込みは肩、肘を消耗しない代わりに面白みが乏しい。コロナ休止の間に各球団の投手たちはどれだけ走っただろうか。その走行距離と故障との相関関係などと言うとマニアック過ぎる。だが、絶好調の巨人・菅野智之、中日・大野雄大やオリックス・山本由伸は、この期間にどれだけ走っただろうかというのには興味をそそられる。

経験則が支えてきたプロ野球

ずっと以前、アマ競技にも関係した経験がある某プロ野球チームのトレーナーのぼやきを聞いたことがあった。「肩、肘壊れやすく、投手大成し難し……、ですわ」。投手の分業制が言われる前には、過密登板で壊れる投手が多かった。アマ競技の指導者はトレーナーのアドバイスに耳を傾けてくれるが、プロ野球の監督、コーチには、自らの経験を振りかざして聞き入れてくれない人が多いと嘆いていた。

そのことと、コロナ休止期間の投げ込み、走り込みがどうつながるかは難しい問題だ。それにしても、あの期間にきっちりと練習を積んでいたら、故障で悩む投手もチームも少なくて済んだのではないかと思うと残念でならない。混乱のシーズンもいよいよ大詰めに向かう。これ以上、故障者が出ることなく、ドラマチックな閉幕を迎えるのを祈るばかりだ。

(敬称略)

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