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45歳・ハンド田中、情熱冷めず 前人未到の1600得点

2020/10/19 3:00
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日本リーグ史上初の通算1600得点をマークし撮影に応じる田中(前列左)。同右は藤井(11日)

日本リーグ史上初の通算1600得点をマークし撮影に応じる田中(前列左)。同右は藤井(11日)

日本女子ハンドボール界を長年けん引してきた第一人者が大記録を樹立した。日本リーグ・大阪ラヴィッツの田中美音子が10月11日の北国銀行戦で史上初の通算1600得点をマーク。1993年に日本リーグでデビューして28年目の45歳は、今も若手に劣らぬパフォーマンスでチームの屋台骨を担っている。

11日に大阪・金岡公園体育館で行われた一戦。通算1598得点で臨んだ田中は前半5分にシュートを決めて王手をかけると、同10分21秒、160センチの自身より身長が20センチ高い北国銀行・永田美香らの防御をかいくぐってゴール。前人未到の偉業達成に場内は大きな歓声に包まれた。

その後も得点を重ね、最終的にチームトップの7得点をマーク。チームは24-39とリーグ6連覇中の相手に大差での敗戦を喫したが、田中自身はこの日放った7本のシュートを全て得点につなげる完璧さだった。

■パスを回してくれた同僚らに感謝

上背がない分、「何かで隙を突かないと」と俊敏さやフェイントの巧みさで相手の厳しいマークを切り裂いてきた。ただ、非凡な能力を前面に出して高みに到達したとの思いはない。「チームがつないでくれたのを決める。一人では取れていない。1600回決めたということは、すごい人数が関わったんだなと思う」と同僚に感謝する。

司令塔のセンターバック(CB)を主戦場に確固たる地位を築いた。93年、大阪・四天王寺高から日本リーグ2部の大和銀行に入団し、1部に昇格した94年は得点王に輝いた。2000年の廃部後は2年間のデンマークでのプレーを挟み、02年にソニーセミコンダクタ九州(現ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)に加入。結婚と出産を経て、競技に復帰した09年度には自身初の優勝を経験した。

16年、長らくハンドボールの灯が消えていた関西に待望の新チーム、大阪ラヴィッツが発足。大阪府豊中市出身の田中は運命に導かれるように、大和銀行時代以来となる地元大阪でプレーすることを選んだ。獲得したタイトルは最優秀選手賞が3度。得点王4度とベストセブン11度はいずれも日本リーグ記録だ。

通算1600得点達成のセレモニーで娘の美優さん(左)と撮影に応じる田中

通算1600得点達成のセレモニーで娘の美優さん(左)と撮影に応じる田中

11日の試合後に行われた、1600得点達成を祝うセレモニーでサプライズがあった。花束のプレゼンターを務めたのは小学6年のまな娘、美優さん。粋な計らいを予想だにしていなかったという田中は「うれしいですよね。やっぱり(現役を続けるには)娘の理解が必要なので。さみしい思いをしているところもあると思う」。

親子水入らずの時間を削って競技に取り組むことへの複雑な思いを語った田中。一方で記念撮影で美優さんが浮かべた満面の笑みは、偉大な母を持つ誇らしさにあふれているようだった。

■結婚・出産後もプレー続ける先例に

子を授かった後も引退に傾かなかったのは、競技に対する情熱に加えてハンドボール界発展への思いが強かったから。才能ある選手が、結婚などの転機を経ても長くプレーできる土壌ができあがれば「女子の世界はもっと面白くなっていくと思う」と話す。

そんな田中の働きかけでキャリアが延びたのが大阪の後輩の35歳、藤井紫緒だ。田中と同じく日本代表でも活躍してきた藤井は15年に一旦現役を引退、母校の大阪・宣真高の監督に就いた。その後、ラヴィッツが大阪府代表として国体に出る際に賛助出場したのは「田中さんが声を掛けてくれた」から。これを機にハンドボールへの情熱が再燃し、やがて現役復帰と正式入団を決めた。

藤井は田中からの誘いをきっかけに現役復帰を決めた

藤井は田中からの誘いをきっかけに現役復帰を決めた

今月3日、愛知・知立市福祉体育館でのHC名古屋戦で田中以来史上2人目の通算900得点を達成した。厳しいマークから前半に右太ももを痛めたが、足を引きずりながら後半も出場。左腕からロングシュートを決めたあたりは「日本女子最高のロングシューター」の面目躍如といえた。

藤井の快挙達成の感想も感謝の思いで満ちていた。「皆さんが回してくれたボールを決めたという意味で、みんなで取った得点だと思っている。みんなで喜びたい」

2人のレジェンドを擁する大阪は昨季が最下位、今季も1勝4敗と苦戦が続いている。強豪のオムロン時代と同じくエースとして活躍する藤井は「どこからでも点が取れるようになれば相手はディフェンスで迷い出す」と若手の奮起を促す。

選手兼チームディレクターの田中も思いは同じで「早く日本一を目指せるチームになりたい。そこに行くために、若い選手には自分の背中を見てほしいし、連れていってあげたいと日々思っている」。2人とも、個人記録よりチームの進撃が脚光を浴びる日が訪れることを心から願っている。

(合六謙二)

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