トランプ氏の支持固め政策、中南米を翻弄
米大統領選 揺れる世界(5)

米大統領選
ルポ迫真
2020/10/17 7:21
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会見するトランプ米大統領(右)とメキシコのロペスオブラドール大統領(7月8日、ホワイトハウス)=ロイター

会見するトランプ米大統領(右)とメキシコのロペスオブラドール大統領(7月8日、ホワイトハウス)=ロイター

「指をくわえて見過ごせない」。中米から米を目指すキャラバンと呼ばれる千人以上の移民集団がホンジュラスからグアテマラに入り、メキシコに向かおうとしていた2日、メキシコ大統領のロペスオブラドールは移民を強くけん制した。

2018年の就任当初、ロペスオブラドールは移民の受け入れ姿勢を見せていたが、米大統領のトランプが一変させた。「不法移民を止めなければ、メキシコからの全輸入品に関税をかける」。キャラバンが相次いだ19年、トランプは徹底した脅しで対策をメキシコに迫った。

トランプ政権下で、隣接する中南米は大統領再選を狙う米国内の支持固め政策に翻弄されてきた。代表格がメキシコだ。国境近辺での壁建設では「費用を払わせる」と言われ、経済成長を支えた北米自由貿易協定(NAFTA)も「雇用が奪われた」としてメキシコ側に不利な内容を含む新協定に代わった。

それでもロペスオブラドールは反発しない。輸出の8割は米向けで経済は米に依存する。トランプの機嫌次第で危機に直面する。「メキシコ人はレイプ犯だ」と言い放ったトランプに7月の米訪問でも「アミーゴ(友人)」と笑顔で呼びかけた。

「トランプ氏再選を望む」。過激な言動などから「熱帯のトランプ」と呼ばれるブラジル大統領のボルソナロは公言する。ブラジルは歴史的に外交面で米国と距離を保ってきた。ボルソナロは親米を公言し、距離を縮めようとしてきた。

しかしトランプは冷めた姿勢だ。ブラジルへの訪問はもちろん発言すらほとんどない。8月末には国内鉄鋼業での支持基盤固めに、ブラジル産鉄鋼の輸入制限も始めた。距離はむしろ広がっているようにもみえる。

反トランプを明確にする国もある。フロリダ州の中南米系の支持獲得を狙った制裁の的になっているキューバとベネズエラだ。「米政府は自分たちの命令に従わない国を犯罪者扱いするのをやめよ」。9月の国連総会でベネズエラ大統領のマドゥロはトランプ批判を展開した。

前米大統領オバマはキューバと国交を回復するなど、中南米への政策路線はトランプとは大きく異なっていた。両国とも政権交代を期待するが、米による中南米外交が大転換するかどうかは見通せない。

(敬称略)

石川陽平、岐部秀光、石川潤、恩地洋介、宮本英威、羽田野主が担当しました。

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