プロテインもおいしく摂取が当たり前 ヒット食品予想
2020年下期食品ブレイク予測(4)

「糖質オフ」や「低糖質ダイエット」などストイックに「取らない」引き算思考から、「オン」する発想で栄養素を積極的に取得する足し算思考へ――。しっかりとボディーメークをして健康を保持するため、たんぱく質を進んで摂取する「プロテインブーム」の流れが、コロナ禍の影響で加速している。
筋力低下を不安に感じている生活者は多く、少しでも体づくりに役立てるため、プロテインを積極的に取ろうという機運が芽生えている。2020年下半期は、こうした需要に応える新タイプのプロテイン製品が人気を呼びそうだ。関連して免疫力に効果があるとされる納豆や、豊富な栄養の代替ミルクにも注目が集まるとみられる。
おいしさを徹底追求、飲みやすいプロテイン飲料

トレーニングやダイエットにこれまで関心が無かったライト層をターゲットにしたプロテイン入り飲料が「PROTEIN10 BANANA&MILK」と「PROTEIN10 CAFE LATTE」(共に雪印メグミルク)だ。プロテイン飲料では、高たんぱくを売りにした明治の「ザバス ミルクプロテイン」がここ数年ヒット。この流れを受けて、雪印メグミルクも初めて家庭向けに参入した格好だ。
先行製品との違いは、乳飲料を普段飲む一般ユーザーでも違和感無く飲めるおいしさにあるという。「従来のプロテイン飲料は、すぐそれと分かる独特のにおいや味わいがあり、不満に思う層が少なからずあった。そこで、おいしくすることを徹底的に追求した」(雪印メグミルク)
1本当たりに含まれるプロテイン量は10グラム。成人が1日に必要なたんぱく質は体重1キロ当たり0.8グラムとされ、例えば50キロなら40グラムとなる。1本飲めば、1日分の4分の1を1度に摂取できることになる。同社では、これまでプロテインに興味はあっても手を伸ばしてこなかったライト層がこの商品を朝食や昼食で楽しむと期待を寄せる。

スープで手軽にたんぱく質7.6グラムをチャージ

一方、運動に取り組む層を狙ったのが「きちんとチキン 参鶏湯風スープ」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)。カップのインスタントスープは春雨スープなど「カロリーオフ系」が多い中、あえてたんぱく質を積極的に取ることをうたう戦略商品だ。
適度な大きさにカットして加熱・乾燥させた鶏の胸肉具材をたっぷりと入れ、鶏ガラのうまみ、ショウガ、ガーリック、コショウで味付けした。1食でたんぱく質を7.6グラム摂取でき、100キロカロリーを切る低カロリー。鶏の具材は独自技術で中に小さな空洞を作り、湯戻りしやすいように工夫。湯を注いでかき回してから、僅か1分で食べられることも、多忙なときに重宝する点だ。

実はこれから訪れる秋冬シーズンは、ここ数年暖冬の影響でカップインスタントスープの売り上げが落ちることがあったという。たんぱく質を1つできちんと7.6グラム摂取できる本製品なら、暖冬でも逆境を跳ね返して十分な売り上げを狙えると踏んでいる。
スライス化で広がる用途、ハムと同じ使い方ができる

プロテインブームのけん引役となったサラダチキンにも、健康を意識し始めたライト層を狙い撃ちにする加工肉がスーパーなど売り場に並び始めている。「プラスタンパク サラダチキンスライス」(日本ハム)がそれ。見た目はスライスハムそのものだが、実はハム製造のノウハウを生かして成形した鶏の胸肉をスライスした、今まであまり見られなかった製品だ。
これまでのサラダチキンは料理に使うためにはカットするなど一手間が必要だった。始めからスライスしてある本製品なら、ハムの代わりにサンドイッチに挟むなどしやすい。プロテインを縁遠い存在だと思っていた主婦層やシニア層まで裾野を一気に広げる起爆剤になるかもしれない。

コンビニでヒットした商品をスーパーに広く展開

サラダチキンを使って即席の参鶏湯ができる。17年に若い世代向けにコンビニ限定で発売しヒット。その後、コロナ禍で調査した結果、主婦の個食利用なども多いことが判明し、今回は販路をスーパーに広げ、再ヒットを狙う。

納豆の常識を破るタレ、焼き肉味、ショウガ焼き味

免疫力を高める食材として注目され、20年2月以降、前年比約110%で推移する納豆市場。近年、タレで差別化する商品が多い中、ミツカンが出したのが焼き肉味、ショウガ焼き味のタレを使った2品。

日本人になじみ深いナッツ原料の代替牛乳

豆乳に加えて、アーモンドミルクなど代替乳が近年市場を広げている。そうした中、新たな選択肢としてキッコーマンはマカダミアナッツが原料の植物性ミルクを投入する。原料は日本人にとってマカダミアチョコでなじみ深い。高級なイメージもある。ビタミンEと食物繊維が取れるのも優位点。
(ライター 高橋学)
[日経トレンディ2020年11月号の記事を再構成]
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