タイ集会禁止、王室批判に強硬策 反体制派は16日もデモ

2020/10/15 21:00 (2020/10/16 5:29更新)
保存
共有
印刷
その他

【バンコク=村松洋兵】タイ政府は15日、首都バンコクで非常事態宣言に基づく集会禁止を打ち出し、反体制運動の指導者らを逮捕した。学生を中心とするデモ隊が政権退陣だけでなく、「聖域」とされてきた王室の改革も求めるなか強硬手段に出た。王室は絶対的な権威を持つが、新型コロナウイルスによる経済低迷を受けて若者らの不満が噴き出している。

学生らは14日、バンコクの王宮近くの民主記念塔から約2キロメートル離れた首相府までデモ行進した。首相府前の道路を占拠し、軍政の流れをくむプラユット政権の退陣や、軍政下で定めた憲法の改正、王室改革を訴えた。地元メディアによると約1万人が参加した。

夜通しで集会が続くなか、プラユット首相は15日早朝にバンコクで5人以上の集会を禁じる緊急措置を発表した。これを受け警察がデモ隊の排除に動き、学生指導者ら約20人を逮捕した。反体制運動グループは15日夜、16日もバンコクで集会を開く計画を明らかにした。集会禁止のなかでも街頭での抗議活動を続ける構えだ。

タイでは7月以降に反体制デモが活発になったが、政府は集会を認めてきた。今回、強硬手段に出たのは王室改革を求める行動が一線を越えたと判断したからだ。

普段はドイツに滞在することが多いとされるワチラロンコン国王が帰国しており、治安当局は厳戒態勢を敷いていた。だが、14日にスティダー王妃らを乗せた車列が集会会場近くを通ると、デモ隊は反体制運動を象徴する3本指を掲げて取り囲み、通行を妨げた。王室への不敬罪があるタイでは異例の事態だ。

プラユット氏は集会禁止の発表に際し「国家の安全に影響を及ぼす暴力だ」との声明を出した。

王室は尊敬の対象で、国民が王室のあり方を議論するのはタブーとされてきた。しかし、反体制運動の中心である若者はインターネットで情報を収集し、SNS(交流サイト)で意見交換するのが当たり前の世代だ。

当初は政権退陣を主に主張していたデモ隊からも、8月以降に一部参加者から王室改革を求める声が上がり始めた。最長禁錮15年を科す不敬罪が言論弾圧に用いられていると考えるためだ。

デモ隊の主要グループの一つは、王室の政治関与をなくすことや、財産管理の見直しなどを求めている。過去に繰り返されてきたクーデターを王室が事後承認してきたことを問題視している。コロナの影響で国民生活が疲弊するなか、タイ王室が世界有数の資産を持つことも不満の背景にある。

タイは主要産業の観光と輸出が打撃を受け、20年の実質国内総生産(GDP)はアジア通貨危機時の98年(前年比7.6%減)を超すマイナス成長になる可能性がある。世界銀行は1日あたり5.5ドル(約580円)未満で生活する貧困層がタイで4~6月期に前期比で倍増し、国民の1割強に当たる970万人に達したと推計する。

政府はバンコクで集会を禁じたが、学生らは無視して15日も同日夜にかけて中心部でデモを強行し、数千人が集まった。

タマサート大のアピチャート准教授は「学生らは香港のように抗議活動を続け、国際社会に政府が国を統治できていないと訴えるだろう」と指摘する。

王室改革が幅広い支持を集めるかは不透明だ。中高年や地方を中心に王室の信奉者はなお多い。熱烈な王室支持者が団体を創設し、反体制運動を強く批判している。王室改革を巡り国民間の対立が深まる懸念がある。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]