アメリカザリガニ「特定外来」見送り、効果に疑問の声

環境省は11月2日から外来ザリガニを「特定外来生物」に指定し、新たな飼育や販売を原則禁じる。ただ、すでに広く生息するアメリカザリガニは「指定により川や池に大量に捨てられ、混乱を招く」恐れがあるとして対象外になった。希少な在来種の保護策として専門家からは効果に疑問の声が上がる。
外来ザリガニは、水生昆虫の捕食や、水草の切断などにより、在来種を激減させている。感染症を媒介するともされる。今回の指定は外来4種のザリガニで中でもマーブル模様が特徴の「ミステリークレイフィッシュ」は雌だけで繁殖することが可能で、爆発的に増える懸念もある。
近年ペットとして流通し、環境省は2016~19年2月中旬、インターネット上で1400件超の取引を確認した。飼育放棄とみられる水辺での目撃例も出ている。
一方、飼育例の多いアメリカザリガニは指定されなかった。環境省の検討会では「放置すれば負の影響が広がる」との規制論も出た。指定した場合、飼育に許可手続きが必要になり、かえって大量放棄につながる恐れがあると結論付けられた。
アメリカザリガニは食用ウシガエルの餌として1920年代に米国から持ち込まれた個体が逃げて各地の池や沼、水田などに広がった。雑食性で真っ赤な体に大きなハサミを持ち、体長が十数センチに上るものも多い。駆除には相当の年月や労力を要するという。

「在来種の保全を脅かす『本丸』を、なぜ放置するのか」と憤るのは、神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部治紀主任学芸員。アメリカザリガニが増え続け、ゲンゴロウや、主に北海道や東北地方の一部を生息域としてきたニホンザリガニなど、希少な在来種が駆逐されてきたとし「取り返しがつかないことになる。指定に移行期間を設けるなど工夫の余地があるはずだ」と強調する。
環境省は今後、同様に広く生息する外来種ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)を含め、規制のあり方を検討する方針だが、具体的な議論にいつ入るかは未定だ。
「ザリガニと身近な水辺を考える会」(札幌市)の田中一典会長は、アメリカザリガニが既に「市民権」を得ていると危ぶむ。「安易に学校の教材に使われ、持ち帰った子どもが悪気なく野に放つ例も少なくない。外来種が生態系に与える悪影響をきちんと教えることが重要だ」と指摘した。〔共同〕