/

米ロ、新START延長急ぐ 大統領選前の決着狙う

【ワシントン=中村亮、モスクワ=小川知世】トランプ米政権が核軍縮の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)を巡るロシアとの延長交渉を急いでいる。3週間後に迫った大統領選前の決着を目指し、外交の成果とする思惑がある。ロシアは交渉進展を否定し、揺さぶりをかけている。

軍縮を巡る米ロの攻防が激しい(写真は2019年のG20大阪サミット)=ロイター

新STARTは戦略核弾頭に加え、戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配備数を制限する。2021年2月に期限切れを迎え、失効すれば米ロの核軍縮の枠組みが約50年ぶりに消滅する。

米国は延長条件として、将来の核軍縮条約の土台となる「政治的合意」を結ぶよう求めている。具体的には新STARTが対象としない短・中距離の核戦力を制限対象に加え、核査察の強化を盛るべきだと主張する。これに対し、ロシア側は無条件の延長を求めている。

米国務省のマーシャル・ビリングスリー大統領特使(軍備管理担当)は13日、米シンクタンクでの講演で「両国政府の最高レベルでの原則合意がある」とした。トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が政治的合意の大枠に同意したと示唆し、詳細を詰めていると説明した。

交渉では、オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)とロシアのパトルシェフ安全保障会議書記が2日にスイスで会談した。ビリングスリー氏によると、その後にロシアの要請を受けて同氏はアジア歴訪を途中で切り上げて5日にフィンランドでの交渉に急きょ臨んだ。交渉後に「重大な進展があった」とツイッターに投稿した。

トランプ政権が前のめりになるのは、大統領再選に向けて外交政策の成果を得るためだ。かねてオバマ前政権が米ロ関係を悪化させたと批判し、プーチン氏との良好な関係を探ってきた経緯がある。核軍縮で成果を出せれば自らの方針の正当性を証明できる。核軍縮の「政治的合意」は法的拘束力を伴わない公算が大きく、米ロ双方にとって受け入れやすいとの読みがある。

米国は交渉進展に向けて譲歩を重ねている。ビリングスリー氏は講演で、ロシアに核戦力増強の「凍結」を求めていると明かした。米国は短・中距離の核戦力の保有数に関し、ロシアが圧倒的に多いと見ており、同戦力の射程に入る欧州諸国にとって大きな脅威だ。削減ではなく現状維持を認める凍結であれば、ロシアは欧州への抑止力を温存できるため米国との合意をしやすくなる。

中国の核軍縮参加も棚上げした。ビリングスリー氏は「ロシアとの合意は中国にも適用できる形式であるべきだ」と語り、中国の参加は将来的な目標だとの立場を改めて示した。中国は米ロに核戦力で劣るとして軍縮交渉への参加を拒否してきた。米国はロシアとの軍縮合意を突破口に中国にも将来的に軍縮を迫る方針に転じた。

ロシアは核協議の進展を否定している。ロシア通信によると、ラブロフ外相は14日、新START延長の「展望は見えない」と発言した。合意が近いという印象を与える米高官の発言について「不誠実だ」と非難した。リャプコフ外務次官も米大統領選前の合意は困難だと述べた。

プーチン氏は7日、米大統領選の民主党候補であるバイデン前副大統領について、新START延長に前向きな点を挙げ「重大な要素だ」と述べた。プーチン氏は「バイデン新政権」との軍縮交渉を視野に入れていることもちらつかせ、条件付きでの軍縮合意を迫るトランプ政権をけん制する狙いがありそうだ。

ロシアの軍事専門家フェリゲンガウエル氏はトランプ政権と軍縮で合意すれば「米ロが対中国で足並みをそろえたと受け止められる懸念がある」と指摘する。バイデン氏の勝利が有力視される限りは、前提条件なしでの単純延長以外にロシアが応じるメリットは小さいとの見方を示した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン