水素調達、30年に商用化 豪やブルネイから年30万トン

経済
環境エネ・素材
2020/10/14 19:30
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水素の安定調達に向けた国際的な供給網の構築が進む。経済産業省はオーストラリアやブルネイとの生産や輸送に関する実証事業を経て、2030年ごろに年30万トンの輸入量を確保し、商用化できるようにすることを目指す。次世代のエネルギーとして期待が高まる水素の安定調達やコスト削減に向け、化石燃料を輸出してきた資源国と連携する。

水素エネルギーの普及には調達コストの低下が欠かせない

14日にオンラインで開催した国際会議「水素閣僚会議」で梶山弘志経産相が水素社会の実現に向けた日本の取り組みとして説明した。取り組みの柱となるのが海外の資源国との連携だ。豊富に存在する未利用の化石燃料を水素製造に活用できれば、水素エネルギー普及の課題となっているコストの改善につながる。

豪州での実証事業では低品質な石炭である「褐炭」を利用する。輸送が難しいことから利用先が限られ、調達コストも低く、水素製造は有望な活用先だ。二酸化炭素(CO2)の回収・貯留技術と組み合わせてCO2の排出を抑制する。

川崎重工業が製造した世界初の液化水素運搬船が21年2~3月にも日本に水素を運ぶ予定だ。

ブルネイでは19年に天然ガスを活用する水素化プラントが完成し、既に日本に向けて輸送を始めている。

政府は30年ごろに水素の調達コストを1N立方メートル(ノルマルリューベ=標準状態での気体の体積)あたり30円とすることを目指している。将来的には20円程度まで下げることを目標とする。環境への負荷を減らせる点も加味すれば、液化天然ガス(LNG)などと比べても競争力があると言える水準に持っていきたい考えだ。

30年ごろの調達目標とする30万トンの水素は、発電能力100万キロワットの発電所をほぼ1年間稼働させることができるとみられる。原子力発電所1基分に相当する。政府は将来的にはLNG火力と同等のコスト競争力の実現を目指しており、そのために必要となる水素調達量は年間500万~1000万トン程度を見込む。

水素は海外から調達すると同時に国内での製造も拡大する。福島県では今年、世界最大級の水素エネルギーの製造拠点を稼働させた。同施設では太陽光発電設備で発電した電気を使って水を分解し、水素を製造する。1日に燃料電池車560台分を満タンにできる量を製造できるという。

水素を巡る動きは世界中で活発になっている。経産省によるとこれまで日本を含めて豪州やドイツ、フランスなど10以上の国・地域が水素戦略やロードマップを策定。英国やポーランドなどが検討中という。燃料電池車の19年の販売台数は前年の2倍以上になった。欧州では燃料電池列車の導入の動きも進んでいる。

背景にあるのが世界的な潮流となった脱炭素の動きだ。国際的な気候変動対策の枠組みであるパリ協定では、21世紀後半に世界全体でCO2排出と吸収が差し引きゼロになる「カーボンニュートラル」を目指す方針が掲げられている。

達成には既存の技術を前提とした対策だけでは不足で「従来の取り組みとは非連続なイノベーションが必須」(経産省幹部)とされる。利用時にCO2を排出しない水素はその切り札として大きな期待がかかる。

豪州やブルネイは石炭や石油の輸出が経済を支えてきた。脱炭素の潮流に対応することを迫られており、日本は水素という新たなエネルギー分野で手を組む。

国際エネルギー機関(IEA)も水素の重要性を強く認識する。21年からは世界の水素関連の取り組み動向を水素閣僚会議の場で定期的に報告する予定だ。IEAの長期エネルギー見通しの中では水素の導入にも触れられており、注目は高まっている。

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