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現代自動車、新トップでCASE挽回 20年ぶり交代

現代自動車と起亜自動車は双子の本社ビルを構える(ソウル市瑞草区)

【ソウル=細川幸太郎】韓国の現代自動車は14日、経営トップの会長職に創業家3代目の鄭義宣(チョン・ウィソン、49)氏が就任したと発表した。トップ交代は20年ぶりで、父親の鄭夢九(チョン・モング、82)氏からバトンを受けた。自動車産業が大きな転換点を迎える今、40代会長の指揮の下、出遅れた次世代自動車への対応を急ぐ。

病気療養中の夢九氏はかねて長男である義宣氏に会長職を譲る意向を示していた。2018年9月に「首席副会長」というポストを新設して経営を託しており、今回、名実ともにグループ経営を禅譲することになった。

この2年間の現代自の経営を総括すると、「従来路線の修正」だった。

現代自は夢九氏の強烈なリーダーシップのもと2000年代に拡大路線をひた走った。競合の売れ筋モデルをいち早く模倣して拡販する「ファストフォロワー戦略」で米欧市場で躍進。「日本車キラー」と恐れられ、10年代には自動車世界5位グループに躍り出た。

ただ、素早くコピーすれば成長できた時代は終わり、長いトップダウン経営で現場発の創意工夫も乏しくなっていた。義宣氏は「強力なリーダーに一糸乱れず従うのではなく、社員の創造的なアイデアを育む」と話し、人事評価や組織のあり方を抜本的に見直した。

義宣氏は「急速な変化に対応するために外部の技術を幅広く受け入れる」と明言し、過度な自前主義にもメスを入れた。首席副会長就任後はコネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化を総称する「CASE」対応の遅れを取り戻すように関連分野で矢継ぎ早に提携案件をまとめてきた。

自動運転では米自動車部品大手アプティブ(旧デルファイ・オートモーティブ)との合弁会社に20億ドル(約2100億円)を出資。シェアリングでは東南アジアのグラブや米ウーバーテクノロジーズと提携した。電気自動車(EV)では、英アライバルや米カヌーといったスタートアップとも共同開発を進める。

義宣氏は先進技術への種まきだけでなく、首席副会長就任前から現代自と傘下の起亜自動車のデザイン改革を主導。フォルクスワーゲン(VW)やBMWからデザイナーをスカウトして新車開発の責任者に据えて、高級車「ジェネシス」や多目的スポーツ車(SUV)強化策を打ち出した。

結果的に米国中心に新車販売が上向き、19年12月期には7期ぶりの増益を達成した。新型コロナウイルスで自動車需要が落ち込む中でも、現代自の減少幅は相対的に小さい。9月の世界販売台数は8カ月ぶりにプラスに転じ、コロナ以前の水準に回復した。特にSUV人気の高い韓国や米国市場で好調だった。

ただ、足元では急激な変化の綻びもみえる。戦略EVと位置付ける「コナ・エレクトリック」のバッテリー火災が国内外で多数発生した。韓国の国土交通省は2万5000台規模のリコールを発表しており、全社を挙げてのEVシフトの減速は避けられない。

自動車産業が直面する大変革期を生き残るために、トップダウンと自前主義の修正を宣言した鄭義宣・新会長。それは同時に韓国財閥の強みのスピードを殺すことにもなりかねない。ボトムアップとスピードという二律背反を両立させる経営手腕が求められている。

世襲経営、最後の世代に


 【ソウル=鈴木壮太郎】現代自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)氏が会長に就任したことで、韓国の大手財閥は名実ともに創業3~4世の時代になった。だが、世襲経営はいまの現役世代が最後との見方が支配的だ。オーナー一族が中核企業の株式を握り、グループを支配する手法を続けるには規模が大きくなりすぎたからだ。
 サムスンや現代自など大手財閥は、日本による植民地支配からの解放前後に創業者が立ち上げ、2世がグローバル企業に育てた。現代自は先代の鄭夢九(チョン・モング)氏が会長就任から20年でグループの資産規模を7倍近くに増やした。
 だが、グループが巨大化したことで世襲にかかるコストも跳ね上がった。世襲に必要な資金を捻出するため、財閥はあらゆる手段を総動員した。
 鄭義宣氏は会長に就任したが、グループを支配するのに必要な株式取得は道半ばだ。自身が出資する子会社にグループの物流を集中させて企業価値を高めた後に上場させ、その株の売却益でグループ中核企業の株を買い増すスキームを進めたが、2006年に不正資金疑惑が発覚し頓挫した。
 韓国財閥の不正資金疑惑の多くは世襲に関連しており、社会が財閥に向けるまなざしは厳しい。文在寅(ムン・ジェイン)政権は財閥改革を抱え、経営の監視を強化する法改正を推進する。
 世襲がもはや限界なのは、当の本人が痛感している。サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は5月、「子どもたちに会社の経営権を譲らない」と宣言した。韓国財閥は専門経営者による経営体制への移行を真剣に模索すべき時期を迎えた。

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