iPhone12、5Gミリ波は米国のみ 最大毎秒4ギガ

米アップルは13日(現地時間)、オンライン発表会を開催し、次世代通信規格「5G」に対応した「iPhone 12」4機種を発表した。発表会では高速通信可能な5G対応の意義を強調したほか、最新プロセッサーである「A14 Bionic(バイオニック)」や新たな無線給電機能、強固なカバーガラス、カメラ機能、12 Proシリーズに搭載した高性能センサーのLiDAR(ライダー)などをアピールした。
米ベライゾン、2億人以上をカバー予定
5Gのうち、28ギガヘルツ帯や39ギガヘルツ帯といったミリ波帯に対応する地域は当初は米国のみ。発表会では、ミリ波帯の5Gの普及促進に注力している米ベライゾン・コミュニケーションズ最高経営責任者(CEO)のハンス・ベストベリ氏が登場。iPhoneの5G対応を契機に、5Gのカバー地域を拡大していくことを強調した。
まずは、スタジアムやイベント会場、空港、大学、公園といった数多くの人が集う場所を強化する。2020年内にフィラデルフィアやサンフランシスコなどの60の新しい都市に拡大するという。いずれ全米に展開し、1800以上の都市や町で、2億人以上をカバーする予定とした。

アップルによれば5G対応によって、下りのデータ伝送速度は、理想的な環境下で3.5ギガビット毎秒、ミリ波帯の利用で4ギガビット毎秒超に達するという。通常の環境下でも最大1ギガビット毎秒になるという。上りは理想的な環境下で最大200メガビット毎秒超とする。消費電力を削減するために、5Gの速度が不要な場合は自動的に4G(LTE)の通信に切り替える機能を導入した。
5Gのキラーアプリの1つとしてアップルが紹介したのがゲームである。発表会では、人気ゲームシリーズ「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」を手掛ける米ライアットゲームズとの連携を発表。モバイル向け「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」をiPhone向けに積極的に展開していく。5Gの通信とプロセッサーのA14 Bionicによって、コンソール(ゲーム機)並みのゲームをプレイできることを強調した。

磁石で位置合わせする「MagSafe」
A14 Bionicは、先行して搭載したiPad Airと同じ5ナノ(ナノは10億分の1)メートル世代の製造プロセスで作製された。トランジスタ数は118億個で、従来のA13 Bionicに比べて約4割増だという。6つのCPU(中央演算処理装置)コアと4つのGPU(画像処理半導体)コアを搭載。深層学習の推論処理を担う「Neural Engine(ニューラルエンジン)」のコア数は16と従来の2倍にした。これにより、機械学習モデルの処理速度が80%向上したという。
iPhone 12シリーズでは、無線給電機能を大きく改善した。給電能力を最大15ワットに高めたほか、無線給電の充電器との位置合わせを容易にする「MagSafe(マグセーフ)」に対応した。無線給電用のコイルの周囲にリング型の磁石アレーを配置している。
MagSafeはアクセサリーの着脱にも利用する。MagSafe対応の自社の充電器も開発した。iPhoneと腕時計型端末「Apple Watch」を同時に充電可能。折り畳める構造で、持ち運びやすくした。なお、iPhone 12シリーズは、従来のQi(チー)対応の無線充電器でも充電可能である。


ディスプレー周りも改善した。例えば、ベゼル(外枠部)を狭めた。これにより、iPhone 12の小型・軽量化につなげた。同じ6.1型ディスプレーを備えるiPhone 11に比べて、厚さを11%、体積を15%、重さを16%削減したという。
カバーガラスを強化。米コーニングと協力し、「Ceramic Shield(セラミックシールド)」と呼ぶ新たなカバーガラスを開発し、iPhone 12シリーズに搭載した。従来よりも強固になり、耐落下性能は4倍になったという。
新たな手ぶれ補正や大型センサー搭載
発表会の中で説明に多くの時間を割いたのがカメラ機能である。iPhone 12シリーズのうち、最もカメラ機能を充実させたのが12 Pro Maxだ。
12 Pro Maxは背面に超広角と広角、望遠の3つのカメラを搭載。いずれも画素数は約1200万。広角カメラには、イメージセンサーを上下左右(X軸方向とY軸方向)にシフトさせる手ぶれ補正機能を備えた。
さらにイメージセンサーを大型化。広角カメラに搭載した同センサーの大きさは従来比で47%大きい。画素サイズは1.7マイクロメートルである。この大型化によって、暗がりでの撮影性能が87%向上したとする。

12 Proシリーズは、iPhoneとして初めてLiDARを搭載した。先行して搭載したiPad Proと同様に、周囲の3次元(3D)空間の認識や拡張現実(AR)に利用する。加えて、カメラでも利用。暗所でのオートフォーカスに利用すると、高速にピントを合わせられるという。このLiDARによって、夜景モードでのポートレート撮影に対応した。
(日経BPシリコンバレー支局 根津禎)
[日経クロステック 2020年10月14日掲載]