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広がるオンライン入試 不正防止にAI活用システムも

来年は無事に入試を実施できるか(19年1月の大学入試センター試験、東京都文京区の東京大学)

新型コロナウイルスは大学入試に影響を及ぼしています。来春入学の入試は大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストが始まる「改革元年」です。試験内容の変更に加え、「第2日程」を設けるといった対応を迫られています。また、一部の大学はオンラインでの入試も導入しますが、不正行為の防止が課題となっています。

文部科学省は昨年、英語の民間検定試験や記述式問題の共通テストへの導入を見送り、受験生を混乱させる場面がありました。共通テストでは思考力や判断力、表現力を問い、日常生活の場面設定を重視した問題を作成する方針を示しています。

大学側はコロナの感染拡大を懸念しています。共通テストで複数の日程を設けるのは、長期休校による学習の遅れ、受験日にコロナに感染した受験生への配慮からです。各大学の個別試験でも多くの大学が追試験を予定しています。ただ、この時期に感染の波が来れば入試自体を実施できなくなる、と心配する声も聞かれます。

コロナ禍に対応し、オンライン入試を計画する大学も出てきました。大正大学は11月の「学校推薦型選抜入試」をオンラインでも実施します。受験生は会場での試験のほか、オンライン試験も選べます。

同大学は、教育サービス事業を展開する「EduLab(エデュラボ)」(東京・渋谷)が提供する、人工知能(AI)によるオンライン試験監督システムを活用します。受験生の試験中の様子やパソコン画面の動画を録画し、AIでチェックします。不審な動きを検知したら、同社の担当者が確認する仕組みで、現時点で大学など約10団体が同社のシステムを導入する予定です。

同社はスマートフォンやタブレット端末を使って監視する技術を開発するほか、オンライン試験のデータを蓄積しながらAIの監視機能の精度を向上させる計画です。松本健成執行役員は「都市と地方に住む人の公平性の観点から、オンライン試験の導入は以前から議論になっていた。2022年の入試に向けてオンライン対応を検討中の大学も多く、オンライン入試が活発になる」と予想します。

不正行為を防ぐためには、現状では会場に受験生を集める入試に勝る選抜方法はないとの見方が大勢です。長年、京都大学経済学部で入試改革を担当してきた依田高典教授は「IT(情報技術)がさらに向上すると、不正行為をしやすくなる面もある。その場合には、高校時代の成績を厳正に評価する全く新しい選抜の仕組みを導入するなど、入試制度を根底から見直す必要がある」とみています。

依田高典・京都大学教授「大学入試のあり方自体を考える時期」

新型コロナウイルスの感染拡大で、大学入試を取り巻く環境が大きく変わっています。大学側はどう対応すべきでしょうか。京都大学の依田高典教授に聞きました。

――コロナ対策で、多くの大学が複数の入試日程を設ける予定です。

依田高典・京都大学教授

「各大学は今年の入試を会場で実施しましたが、感染者が出たという話は聞きません。大声で会話するわけではない大学入試で、感染が広がるリスクは小さいのではないでしょうか。それよりも、入試の季節に全国で感染者が増え、入試自体を実施できなくなる事態を心配しています」

――大学にできる対策はありますか。

「入試シーズンの1~2月は感染症が流行しやすいとされています。大雪が降りやすい時期でもあり、入試の時期としてふさわしくありません。来春には間に合いませんが、コロナ禍のなかで議論になった、大学の秋入学を検討すべきです。秋入学なら入試を4~5月に実施すればよく、感染や天候リスクが小さくなります。高校生としては、入試勉強のために、高3の学事を犠牲にする必要もなくなります」

――オンライン入試を導入する大学が出てきています。

「京大では数年前に、入試会場でスマートフォンを使った不正行為が問題になりましたが、IT(情報技術)が発達すると、受験生がかけている眼鏡に遠隔地から情報を送るといった不正も可能になるといわれています。会場の試験も決して万全ではありません。オンライン入試では、さらにチェックが難しくなります。その場合は何を参照してもよいことを前提にした入試にせざるを得ず、選抜の基準が緩くなる可能性があります」

――日本の大学入試は変革を迫られているのでしょうか。

「ITの発達で、いずれ明治以来の紙と鉛筆の大学入試が通用しなくなる時が来るでしょう。推薦入試や総合型選抜(従来のAO入試)も広がっていますが、優秀な学生を選抜するという観点からみると、学業評価の点で必ずしもうまく機能していません。もう少し標準化されたシステムを使って、高校生活全般の達成度を評価する仕組みが求められています」

――世界の大学入試で参考になる事例はありますか。

「長年、京大経済学部で帰国子女の入試も見てきましたが、米国の共通試験はやさしすぎ、英国の共通試験は専門的すぎます。世界共通の大学入学資格を提供するプログラムである『国際バカロレア』が、高校生の学業評価としてはバランスが良いように思います。日本にとっても参考事例になるでしょう」

――今春から、大学でオンライン授業を導入する動きが加速しました。入試への影響はありますか。

「大学に定員があるのは、教室や施設を利用できる人数に制限があり、教員の人数にも限りがあるためですが、オンライン授業が主流になると、その前提が崩れます。実験の施設を使う理科系では施設の制約が残りますが、文科系は特に存在意義が問われるでしょう。感染リスクが高い大教室で一方向の講義をするだけの大学は、生き残れなくなります。ゼミナールや論文指導といった少人数の指導に注力し、付加価値の高い教育を目指すしかありません」

(編集委員 前田裕之)

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