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活動再開は大成功 サッカー日本に「代表の精神」浸透

サッカージャーナリスト 大住良之

オランダで国際親善試合を行った日本代表の活動再開は大成功だったといえる=ロイター

オランダのユトレヒトを舞台に、9日のカメルーン戦、13日のコートジボワール戦の2試合を戦ったサッカー日本代表の「活動再開」は大成功だったと思う。

試合結果は1勝1分け。カメルーンと0-0で引き分けた後、後半追加タイムのDF植田直通の劇的なヘディングゴールでコートジボワールを相手に1-0の勝利を収めた。2試合を通じて失点0。守備は非常に良かった。しかしその一方、攻撃面ではコンビネーションやタイミングのずれも目立ち、2年前に「森保ジャパン」がスタートしたときのようなダイナミックな突破はほとんど見られなかった。

対戦相手となった両チームは、日本と同様、全員が欧州のクラブでプレーしている選手。ほぼ時差がなく、移動距離も短かったことから、過去日本で親善試合を戦ったどのアフリカチームよりもコンディションが良かった。加えて、ともに欧州人の監督の下、非常に規律のとれた真摯なチームになっており、90分間手を抜くことのないプレスと球際の強さで日本を苦しめた。国際サッカー連盟(FIFA)ランキングに関係なく、相手のレベルがとても高かったことは、今回の「成功」の大きな要因だった。

吉田(右)と冨安の両CBの安定度は傑出していた=ロイター

この2チームを相手に180分間を無失点で抑えた日本の守備は際だっていた。なかでも吉田麻也と冨安健洋の両CBの安定度は傑出していた。ともに1対1で圧倒的な強さを見せるとともに、相手の攻撃を読む鋭さにより、相手にボールを支配される時間帯にもほとんど決定的なピンチを招くことがなかった。GKは初戦が権田修一、第2戦がシュミット・ダニエルだったが、2人とも大きな見せ場がなかったことが守備の安定を物語っている。

ただ、吉田と冨安2人だけで守ったわけではない。守備への切り替え、ボールへの詰め、球際の厳しさといった個々の要素とともに、少人数のグループ、そしてチームとして、守る組織が崩れず、吉田と冨安が登場する段階では相手はかなりいっぱいいっぱいだった。

実質的に11カ月ぶりの活動で攻撃面が少しぎくしゃくしたのは仕方がない。しかし第1戦で出た「守備から攻撃への切り替え時の精度」という課題は、わずか数日間の練習で、しかも第1戦とはまったく入れ替えた攻撃陣で、第2戦では著しく改善されていた。

注目された19歳の久保建英はやや消化不良。交代出場した第1戦は出場時間が短く、先発出場した第2戦では、相手が3-4-3というシステムを敷いていたこともあり、自陣に戻って守備に回る時間が長かったのが残念だった。

伊東は一気に攻撃のエース格になった=ロイター

一方、一気に「攻撃のエース」格になったのが伊東純也だ。右サイドで見せる圧倒的なスピードという持ち味だけでなく、所属のゲンク(ベルギー)で大活躍するなかで判断が非常に良くなり、彼が突破して右から入れるクロスはいまや日本代表の主要な武器だ。

攻守を通じて、森保一監督が求めた「チーム一丸、最後まであきらめずに戦う」というテーマは、しっかりと達成されていたと思う。これこそこの2試合の最大のポイントだった。「日本代表の試合を通じて日本の人びとに勇気を届けたい」という全選手の気持ちが、ひしひしと伝わってきた。今回の活動を通じて、今後の日本代表の重要な「ベース」となる精神がチームに深く浸透したと私には思えたが、そのとおりなら、今回の最大の収穫といえるだろう。

森保監督も手腕のさえを見せた。第1戦ではハーフタイムに4バックから3バックに変更して劣勢をひっくり返し、第2戦では南野拓実の投入で流れを引き寄せ、88分に投入した植田が決勝点を決めるなど、采配も見事だった。だがそれ以上に、数日間で課題を改善し、しかもオランダにきた23選手のうち20人にプレー機会を与えることもできたことは大きい。

森保監督(右)の手腕もさえた=ゲッティ共同

10月と11月に予定されていたワールドカップ予選の延期が決まったのが8月12日。それから短期間のうちに困難で複雑な交渉と手配を完了し、カメルーン、コートジボワールという強豪との親善試合を実現した日本サッカー協会の努力は称賛に値する。11月17日にはオーストリアでメキシコという願ってもない強豪と対戦することも発表されたが、欧州で新型コロナウイルス感染が再燃するなか、10月以上の困難を伴うかもしれない。しかしぜひとも再び実りある日本代表活動ができるよう、奮闘を期待したい。

大成功だった「日本代表活動再開」。しかしコートジボワール戦後、主将の吉田はこんな話をした。

「非常にポジティブな日本代表活動だった。しかし遠足ではないが、それぞれのクラブに戻るまでが代表活動。帰ってまたPCR検査を受け、そこで『ポジティブ(陽性)』になったら、今回の活動がポジティブとはいえない。気を抜かずに移動し、最後まで衛生に気をつけたい」

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