日野、トヨタと燃料電池トラック ニコラの隙突くか

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2020/10/16 2:00
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日野自動車はトヨタ自動車と燃料電池トラックの開発に乗りだした

日野自動車はトヨタ自動車と燃料電池トラックの開発に乗りだした

日経ビジネス電子版

日野自動車の米国事業を担う米国日野販売と米国日野製造は10月5日(米国時間)、北米でのトラック開発のロードマップ「プロジェクトZ」を発表した。トヨタ自動車と燃料電池車(FCV)の大型トラックを共同で開発し、2021年前半をめどに試作車両を開発する。

プロジェクトZでは小型トラックから大型トラックまで排出ガスをゼロにする取り組みで、FCVのほか電気自動車(EV)のトラックなどの開発・設計も行う。米国日野販売のシニア・バイス・プレジデントのグレン・エリス氏は「ゼロエミッションの技術は急速なスピードで進んでおり、様々な企業との協力関係が欠かせない」とし、「トヨタとの協業の成果をゲームチェンジャーとしていきたい」という。

プロジェクトZはトヨタ以外の企業との取り組みも進んでいる。スタートアップ企業のSEAエレクトリックのモーターを搭載した小型EVトラックなどを公開した。米国日野はプロジェクトZで手掛けた車両のうち、いずれかを2024年をめどに量産化したい考えだ。

北米で盛り上がるFCVの市場。背景にあるのが州政府による規制だ。カリフォルニア州は9月、ガソリンエンジンを動力とする乗用車とトラックの販売を35年より禁止する方針を打ち出した。EVはもちろん、FCVにとっても追い風となるのは間違いない。バッテリーの能力と航続距離に限界があるため、長距離輸送においてEVは課題が残るが、トラックを含めFCVは「軽油を入れる感覚で短時間で燃料補給できるのが特徴」(日野自動車)だからだ。

富士経済によれば、30年度にはFCVシステムの世界市場は17年度比28倍の約4兆9275億円に到達する見通し。ドイツが「国家水素戦略」を打ち出すなど、水素を活用するFCV市場は官による後押しで成長市場となりつつある。独ダイムラートラックも燃料電池トラックを20年代後半に量産する計画を掲げる。

■ニコラの株価は5割下落

燃料電池トラックを巡っては、市場に冷や水を浴びせる事態も起きている。スタートアップの米ニコラの存在だ。「トラック界のテスラ」ともてはやされたニコラは米ゼネラル・モーターズ(GM)と9月に資本業務提携を結び、GMが二コラ株を11%取得することになっていた。だが、米調査会社がニコラの技術に疑義があると発表。創業者で元会長のトレバー・ミルトン氏の不祥事も重なり、10月12日時点でニコラの株価は提携発表後と比べて約5割下落した。GMも提携見直しの検討に乗り出した。

ニコラの創業者で会長だったトレバー・ミルトン氏は相次ぐ不祥事により辞任した

ニコラの創業者で会長だったトレバー・ミルトン氏は相次ぐ不祥事により辞任した

水素を使った燃料電池は確かにクリーンで騒音もなく、発電効率はEVよりも高いとされる。量産段階にないニコラの株式時価総額が約3兆円に高騰し、一時は米フォード・モーターや欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)を上回ったのも、そうした技術が実用段階に入ることへの期待があったためだろう。

ただ、FCVでも水素を補給するインフラ整備のほか、水素燃料のコストが高いといった課題は残っている。燃料電池トラックの開発に関わるトヨタの北米事業体であるトヨタ・モーター・ノース・アメリカの横尾将士シニア・エグゼクティブ・エンジニアは「(燃料電池車の未来が来ると)自分たちが思っていても、市場にとって十分とは言えない」とイベントで述べた。

日野とトヨタはプロジェクトZに関わる車種の量産を24年までに始めるとしたが、燃料電池トラックの量産化の時期は明確にしておらず、市場動向と商品投入のタイミングを見極める必要があるとの考えを示している。スタートアップや欧米勢が攻めに転じるなか、大きく膨らんだFCVへの期待を実現できるプレーヤーとしてうまく立ち回れるか。技術力はもちろん、市場の声とのバランスが必要になりそうだ。

(日経ビジネス 大西綾)

[日経ビジネス電子版 2020年10月13日の記事を再構成]

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