中銀デジタル通貨、中国の突出を警戒 G7がけん制

2020/10/14 5:00
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G7は透明性確保を求める声明を出した(13日、財務相・中銀総裁会議にオンライン参加した麻生財務相と黒田総裁)

G7は透明性確保を求める声明を出した(13日、財務相・中銀総裁会議にオンライン参加した麻生財務相と黒田総裁)

中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)を巡り、日米欧が中国の突出ぶりに警戒を強めている。主要7カ国(G7)は13日夜の財務相・中央銀行総裁会議でまとめた共同声明で、発行の条件として透明性や法の支配などを挙げた。デジタル人民元の準備を急ぐ中国をけん制した形だが、どこまでブレーキをかけられるかは不透明だ。

「透明性や法の支配、健全な経済ガバナンスへのコミットメント(関与)が重要という認識を示した。これは中国も含めた(CBDC)導入の動きを念頭に置いたものだ」。13日の会議後の記者会見で、麻生太郎財務相は明言した。「『中国さん、あんた透明性は大丈夫?』という話だ」

黒田東彦日銀総裁も会見で「G7以外の国もCBDCを発行するならば透明性などを備えた形で発行する必要がある」と強調した。「そうでないと国際金融システムに影響が出かねず、問題が生じると注意喚起した」

中国への懸念を強くにじませる発言が相次いだ背景には、デジタル人民元が実用化に近づいているとの認識がある。

広東省深圳市では12日、市内在住の中国人5万人が参加するデジタル人民元の大規模な実証実験が始まった。1人200元(約3100円)ずつ配り、スーパーや飲食店など約3400の実店舗での買い物に使えるようにした。実用化に向けた課題を調べつつ、2022年の北京冬季五輪までに発行する計画だ。

日米欧はデジタル人民元が中国国内での利用にとどまらず、貿易決済などを通じて世界的に普及し、存在感を高めることを警戒している。相対的に基軸通貨のドルの地位が低下すれば、米国が敵対国にドル取引を禁じるといった金融制裁の効力も弱まりかねない。

先行するデジタル人民元が特許の取得などで技術面の国際標準を握るような事態も想定される。その場合、各国がCBDCを発行する際の足かせとなる恐れがある。

先進国もここにきてCBDC発行を見据えた取り組みを加速している。日米欧の主要7中銀と国際決済銀行(BIS)は9日公表した報告書で、実際に発行する場合の基本原則を示した。物価や金融システムの安定を損なわないことや、現金など他の通貨と共存することなどを掲げた。

まず理念や原則を確認し、いよいよ実証実験に踏み出す。こうした丁寧なプロセスを踏む日銀や欧州中央銀行(ECB)と中国との差は大きい。

日銀は実証実験を3段階に分けている。来春にも発行・流通などの基本機能を閉じたシステム内で検証する第1段階を始める。先行する中国は消費者や企業も参加する「パイロット実験」を重ねている。日銀の区分では最終の第3段階にあたる。

CBDCが実現した場合の経済への影響を慎重に見極めようとする先進国は一足飛びにはいかない。利用者保護など、あらかじめ検討すべき課題も多い。

日米欧が声高に原則論を強調するのは、中国が一気に実用化に踏み切ることへの不安が拭いきれないからでもある。現実には中国が参加していないG7の声明の影響力は見通せない。日米欧中がそろう20カ国・地域(G20)の場などを通じて、CBDCの普遍的な枠組みの共有を促せるかが今後の焦点になる。

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