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アゼルバイジャンとアルメニア「停戦順守」再確認 和平協議に高い壁

「領土保全」か「民族自決か」

【モスクワ=石川陽平】アゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が独立を求める民族紛争で、両国外相は12日、それぞれ「停戦合意」を順守すると表明した。10日の停戦発効後も交戦が続くが、緊張緩和へ外交努力を続ける。ただアゼルバイジャンは「領土保全」を、アルメニアは「民族自決」を主張し、原則論で対立する。和平達成へのハードルは高いままだ。

アゼルバイジャンでも紛争再燃で愛国心が高まる(12日、ギャンジャで国旗を持って紛争の犠牲者の葬儀に参列した人々)=ロイター

両国外相が停戦順守を表明する前の11日にはアゼルバイジャン第2の都市ギャンジャが砲撃され、10人が死亡した。アルメニア側も12日、91人の新たな死亡者の名簿を発表した。互いに相手を「停戦違反だ」と非難していた。

アゼルバイジャン・ナゴルノカラバフ、アルメニア

10日の停戦合意は状況次第で崩壊するリスクを抱える危うい内容だ。捕虜交換など「人道目的」での暫定措置の性格が強い。次の段階として中長期の停戦をめざすが、平和的解決に向けた実質的協議の進展も不可欠で、難易度ははるかに高い。

両者はまず、解決に向けた原則的立場で鋭く対立する。アゼルバイジャンは「領土保全・主権尊重」を訴え、「全占領地の返還」とアルメニア軍の撤退を条件に挙げる。一方、アルメニアのパシニャン首相は11日、ナゴルノカラバフの住民の「民族自決の権利」を認めるよう訴えた。

アルメニア側には、軍を撤退させれば、アルメニア住民が追放され、民族虐殺が起こりかねないとの懸念がある。愛国心の象徴でもあるナゴルノカラバフを失えば、国民の強い批判を受けるのは確実で、パシニャン氏は「ナゴルノカラバフ独立の承認も辞さない」と強硬な姿勢だ。

これに対しアゼルバイジャンは、トルコの支援を受けた軍事攻勢に自信を深めており、停戦合意は「平和的解決への最後の可能性だ」(外務省)と圧力をかける。紛争解決を仲介する欧州安保協力機構(OSCE)ミンスクグループ共同議長の米仏ロがアルメニア寄りだとの不満もあり、和平プロセスへの「兄弟国」トルコの参加も求める。

過去四半世紀あまり、紛争を巡り4つの国連決議や停戦合意の議定書などが採択されてきた。2007年には、ミンスクグループが紛争解決へのたたき台として「マドリード原則」を提示した。だが、領土回復と民族自決が併記されるなど双方に不満の残る内容で、結局は和平の進展につながらなかった。

多くの対立点を抱えるアゼルバイジャンとアルメニアが今後、紛争解決への糸口を見つけられるか疑問視する声が多い。和平協議が前進しなければ、停戦も崩れ、戦闘が再び激しくなる恐れがある。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は10日、ロシアのテレビで「最後までやる。止まることはない」と強調した。

ナゴルノカラバフが位置するカフカス地方はロシア南西部からイランやトルコとの国境まで広がり、50以上とされる民族が入り組んで暮らす「民族紛争の火薬庫」だ。南オセチアなど未解決の紛争地域もある。ウクライナ東部紛争も近い。今回の「武力での現状変更」の試みがどう決着するかは、地域の安定にも影響する。

紛争は1988年にアルメニア系住民が多数派を占めるナゴルノカラバフを巡って始まった。94年の停戦後も軍事衝突が相次ぎ、今年9月27日に再び大規模な戦闘となった。アルメニアが実効支配するナゴルノカラバフと周辺の奪回を狙うアゼルバイジャン軍が攻勢をかけ、死者は公表数だけで600人を超えた。

紛争が94年以降で最悪の事態となる中、ロシアが仲介に乗り出し、欧米も強い停戦圧力をかけた。10日未明、アゼルバイジャンとアルメニアの両外相は同日正午に捕虜交換など人道的目的の停戦を始めることで合意した。

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